【結果】「遊園地」しばり

1.迷子見つからない遊園地に夕立 2・2・0
作者:京介
◎はたらきねこ、元気な人 ○十月知人、白熊左愉
・特選。「見つからない」のは迷子でなくその保護者であると読みました。迷子のアナウンスが繰り返される。しかし「もとき(あるいは、「まさと」)」のお母さんもお父さんも現れることはない。捨てられたのかもしれない。不安に追い打ちをかけるように夕立がくる。気の毒である。(はたらきねこ)
・有りがちな風景だと思うんですけど、とにかく視点が面白いです。「夕立」で終わってる辺りきっと当事者ではなく、園内アナウンスで知らされるその他大勢の一人なんでしょう。句に詠むくらいには気に留めていて、雨に心を奪われるくらいには他人事。淡々とした描写ですが、人間味が溢れていて良かったです。(元気な人)
・焦る状況ですよね。「遊園地に」はなくてもよかったかも。(十月知人)
・特選と迷いました。迷子見つからない上に、夕立・・。追い討ちをかけられるような不安が表現されているなあと思いました。(白熊左愉)

2.風船の行方見つめて泣けもせず 1・5・0
作者:八王子
◎白熊左愉 ○8ビッ人、しみずわかな、mekeke、はたらきねこ、元気な人
・これは幼い日に誰もが経験した想いではないでしょうか。私もその「泣けもせず」を思い出しました。(白熊左愉)
・一晩でしぼんでしまうと判っていても、子どもにとっては風船は宝物。見えなくなるまで目で追い続けたあとに、思いだしたように泣く子が目に浮かぶようです。(8ビッ人)
・吸い込まれるように昇ってゆく風船に自分も吸い込まれるほど見とれるのだと思います。二度と手に戻らないと気付くのは次の瞬間。(しみずわかな)
・ただただ手を離れてしまった風船を見つめることしか出来ない、涙は出なかったけど、心に小さな傷がついたように感じました。この感じだと、仮に新しいのを貰っても、手放した風船が心に引っかかってしまって前のようには喜べないのかな。(mekeke)
・正選。今まさに失われていくものを呆然と、あるいは無感動に見送っているのですね。人生とは失うことの繰り返しだということを少年は知るのであった。(はたらきねこ)
・泣けもしないんですよね。間違いなく悲しいんですけど。泣けもしない。まるで意思を持ったように離れていく姿に打つ手もなく圧倒的な絶望を感じ、悲哀に囚われる暇もなく無くなる。「泣けもしない」で決まりました。(元気な人)

3.アルプスの少女回転ブランコに挑戦
作者:桃子

4.あの駅で降りてみる追憶の遊園地 0・2・1
作者:こみおく
○タケウマ、小笠原玉虫 ●十月知人
・思い出は思い出のままがよいかと♪(タケウマ)
・大人になって訪れる思い出の遊園地は、記憶よりも狭く小さく感じて「あれ…?」ってなりますよね。上質のセンチメンタリズム。大好きな句です。(小笠原玉虫)
・遊園地は思い出の場所というだけでは、安易すぎます。(十月知人)

5.ジェットコースターは乗らない祖母の遺言なんだ 1・2・0
作者:フロヤマ
◎桃子 ○木曜何某、タケウマ
・単なるジェットコースターに乗らないための言い訳には感じません。祖母にかわいがられていた、また孫も祖母のことが大好きだったのだろうなあということが伝わってきます。句のインパクトも強くて良いです。(桃子)
・遺言と言われたら、もう何も言えませんものね。お祖母さんは乗ったことがあるのでしょうか。(木曜何某)
・それでは仕方ないね…(タケウマ)

6.ガタピシのコースターで味わう二度の恐怖
作者:8ビッ人

7.日に焼けたステージにヒーローだけ新しい 3・6・0
作者:木曜何某
◎こみおく、圓哉、うぐいす ○ロケッ子、トモマリ、しみずわかな、フロヤマ、京介、八王子
・大人になって感じる遊園地のせつなさがよく出ていて好きです。(こみおく)
・「遊園地」というお題が難しいです。類想句が多いなか視点がなつかしい感じ。ちょっとうらぶれたところがなつかしさを思い出させるのかな。(圓哉)
・なんだかすごく物悲しい。地方の小さな遊園地。ショーを見ている子供たちは、中には夢中になってる子もいるんだけど、ちょっと冷めた目で見てたりして。連れてきた親のほうが「ほらっ、かっこいいね!ね!ね!」って必死だったりして。この遊園地がいつまでもありますように。(うぐいす)
・ああ、そんな発想しちゃうのかぁーと感動しました。古い遊園地や、田舎の遊園地なんかには現役アイドルは絶対に来ないけれど、ヒーローはちゃんと最新の格好いいのがやってくる。ヒーロー、いいな。(ロケッ子)
・時代が更新されていく感じが好きです(トモマリ)
・なるほどなあ、と、その視点に思わずにんまりしてしまう作品でした。(しみずわかな)
ノスタルジアさえ感じさせる句です。(フロヤマ)
・ヒーローショーがない日のステージが寂しそう(京介)
・ディズニーランドなどではない地方のさびれた遊園地にもショーは開かれる。古ぼけたステージに今はやりのヒーローは似つかわしくない、そんな切なさ、やるせなさ。(八王子)

8.愛された記憶のままに木馬が廻る 0・4・0
作者:はたらきねこ
○トモマリ、しみずわかな、うぐいす、八王子
・詩的な表現が素敵です(トモマリ)
・メリーゴーランドが遊園地の花形だったのはいつ頃までだったのでしょうか。
その時代を記憶したまま今も廻る彼らは、だからどこか陰を感じさせるのかもしれません。(しみずわかな)
・やっぱり遊園地って子供のものなのかなあ。大人になってから行くと、どことなく切ない。思い出があればなおさら。(うぐいす)
・木馬が廻るように時は流れ、あの時あれほど愛されていると感じたことも今はただの思い出になってしまった。そして記憶だけは今もまわり続けている。(八王子)

9.荷物番してピエロと待ってる 1・7・0
作者:小笠原玉虫
◎京介 ○十月知人、白熊左愉、トモマリ、圓哉、木曜何某、mekeke、元気な人
・家族か友達たちと遊園地へ来たが、この句の主人公は自分が苦手なアトラクションは荷物番として待つ。ひとりで待つところにピエロがきて付き合ってくれているのだろうか。ピエロが楽しませてくれてたら良い光景。(京介)
・ピエロはあれやこれやたいへんなお仕事。哀愁漂う アングルです。(十月知人)
・ちょっと面倒な役割の「荷物番」を、ピエロと待ってる、のがユーモラスで楽しい(白熊左愉)
・ピエロとの間に流れる微妙な空気(トモマリ)
・ピエロと待つと言う面白さ。待つのはしんどいですね。(圓哉)
・ピエロも何かを待っているのかな、と勘ぐりました。ピエロが良いですね。しゃべりかけても返してくれないし、遊園地という現実から少し離れたものの象徴としてすごく良いと思います。(木曜何某)
・お互いの労を心の中でねぎらう姿が浮かびました。遊園地のあの賑わいの中にいるだけでも結構疲れますよね。(mekeke)
・滑稽ですね。顔を色にしたピエロにすら仲間意識を持たずにはいられない。ただそうしたところであなたはひとりだし、ピエロもひとり。そして誰も彼も。(元気な人)

10.ハロウィンに呼ばれて来たの海の風 0・1・0
作者:圓哉
○八王子
・海の風がハロウィンって気もするけれど、楽しいんだからいいじゃない、海の風もお祭りが好きなんだ。(八王子)

11.僕のためじゃないポニーテールが宙に舞う 1・5・0
作者:ロケッ子
◎8ビッ人 ○桃子、圓哉、mekeke、タケウマ、うぐいす
・少年の日の片思いを連想させる、甘酸っぱい素敵な句ですね。(8ビッ人)
・クラス会等で遊園地に来たのでしょうか。恋人と一緒に乗り物に乗っているポニーテールの女の子を、遠くから眺めているのを想像しました。自分のものにはなれないって、わかっているのにそれでも好き。切ないです。それにしても遊園地にポニーテール!良いですね!(桃子)
・ポニーテールは私の好きな髪型、「僕のためじゃない」と言い切るからか、ちょっとせつないねぇ。
・小さな娘とそのボーイフレンドを連れて遊園地にやってきたお父さんの気持ちに重ねて読みました。それまで「僕のため」と思っていたのは僕だけだったのかもよ、とか意地の悪いことも考えました。(mekeke)
・うつくしくもかなしい♪(タケウマ)
・修学旅行で遊園地に行ったのを思い出しました。こういうときってカップルができちゃうんですよね。あの子の笑顔もポニーテールも今はアイツのもの。ちぇ。(うぐいす)

12.一生は夢の中の遊園地 0・1・0
作者:白熊左愉
○ロケッ子
・そういうものなのかもしれないなぁ、と強く共感しました。具体的にひとつずつ言葉をおって考えていくと、「ん? どういうこと?」なんて思ったりもしますが、ばしっと言いきってもらうと「うん、そうだ!」と納得。夢の中で走ると、変に足が重くてなかなか前へ進まない感じがしますが、夢の中の遊園地っていったいどんな感じなんでしょうね。楽しい? ふわふわ? いいイメージであることを願います。(ロケッ子)

13.人妻をのせて木馬のまわりだす 2・6・0
作者:タケウマ
◎十月知人、小笠原玉虫 ○桃子、こみおく、圓哉、元気な人、うぐいす、京介
・感傷的ではなく、気だるい雰囲気が好きです。(十月知人)
・いいいですね。不道徳感が非常にぐっときます。不倫カップルが遊園地で遊んでるイメージ。男の方は乗らずに、無邪気に楽しんでる人妻を見てるんでしょう。スッゲなまめかしい。大好きです。遊園地句の中で間違いなくダントツの出来。こういう発想が出来ることが羨ましくて仕方ないです。(小笠原玉虫)
・ごめんなさい…。なんてエロいんだろう。575のリズムで読むとなおさら。人妻って言ってもいろいろあるし、きっと人妻が回転木馬に乗っているところを見ても何も感じないのだけど、文字にすると一気に見方が変わってきますよね。これぞ俳句のおもしろさだと思います。(桃子)
・お母さんは人妻。あたりまえだけどなにか風情がある。(こみおく)
・人妻は怖い!遊園地の人妻はもっと怖い。(圓哉)
・なんでしょうこの只ならぬ不穏な雰囲気は。ただ誰かの嫁がメリーゴーラウンドに乗っているだけの風景なのに。言葉の魔力を痛感しました。しかしいつから「人妻」ってこんな官能な意味合いを含む言葉になってしまったのか。え?(元気な人)
・不倫旅行かなあ。女のわがままで遊園地に来たんでしょうね。人妻と木馬の取り合わせ、ちょっと卑猥です。(うぐいす)
・妻になってもまだ童心を忘れていない可愛い女の子のような笑顔。いいですね。(京介)

14.ネズミ率いる動物園かな 0・0・2
作者:しみずわかな
●圓哉、八王子
・周りにも時々「ネ○○ーランド」とか言う人にぶち当たるけど、許せません!いい悪いではなく、こういう揶揄の仕方は嫌いだ!(はい、感情むき出しですいませんでした)(圓哉)
・ネズミが率いるというのが分からない。ディズニーランドなら動物園じゃないし。(八王子)

15.見えるだけの観覧車見えた 1・2・0
作者:元気な人
◎木曜何某 ○こみおく、はたらきねこ
・そう言われると、見えるだけのものだらけかもしれませんね。見えるだけのタワー、見えるだけのドーム、見えるだけのホテル。(木曜何某)
・そこにいつも遊園地はある。でも見えるだけ。(こみおく)
・正選。ちょうど対になっている観覧車句を両方とってしまう。18「ようやくの観覧車から雨を見ている」が乗っているのに対して、こちらは乗らずに見ている。いや、乗ることができないのだ。それは見ていることしかできない憧れの対象であり、観覧車の象徴するものは、恋人や友人、家族といったあたたかな人間関係である。目を逸らしたくとも巨大な観覧車は嫌でも目に入ってくる。そのたびに孤独を突きつけられるのである。(はたらきねこ)

16.手を離した風船は赤だったんだパパ 3・1・0
作者:うぐいす
◎ロケッ子、フロヤマ、八王子 ○桃子
・なーんーだーこーれー。心にひっかかって仕方がない。絶対にこれ、口に出した言葉じゃない。子どもが小さな心の中でだけ生みだした言葉。別の色の風船を持ってきたパパに対する言葉なのか、はたまた、今は手ぶらだけど本当に自分は風船を持っていたという事実を伝えたいのか。なんかもうどういうことなのかわからないけど、す、す、好きです!(ロケッ子)
・代わりにもらったのは違う色だったのでしょう。大人には分からない子供ならではのこだわりですね。(フロヤマ)
・少女は風船が好き。でも長く持ち続けるのは子供には辛い。あっと思ったら風船は手を離れ空に昇って行った。抜けるような青空にくっきりを浮かぶ風船の赤が目に焼き付いている。悲しみを超えて。(八王子)
・赤い風船を手離してしまったこと、パパが買ってきた風船が違う色だったこと。きっと良い思い出になるはず。遊園地の風船って、なぜか特別。まだ乗れる乗り物が少ないであろう小さな子どもには、大切な宝物なんだろうな。(桃子)

17.遊園地跡だだだだだっと土筆など 4・3・0
作者:十月知人
◎トモマリ、しみずわかな、mekeke、タケウマ ○フロヤマ、京介、小笠原玉虫
・丈高い草の様子や草いきれまで想像されました(トモマリ)
・だだだだだっ、の語感が楽しいです。現実的には少しイメージし難い情景だけに、童話的な面白さも感じました。(しみずわかな)
・「だだだだだっと」というちょっと言いにくい表現が面白いなと思いました。
遊園地が無くなって更地になって寂しさもあるけれど、山菜やいろんな植物が生えてくるなら個人的にはこれはこれで嬉しいな、なんて思いました。(mekeke)
・「だだだだだっと」がいいですね。リズミカルで土筆などの生命力を感じます♪ そうそう「土筆など」もステキです。いろいろ生えているんでしょうけど、「など」でくくった大雑把さがいかにも跡地らしい。無駄なく的確でスゴイです。(タケウマ)
・広い敷地。「だだだだだっと」が効果的です。(フロヤマ)
・廃園になってから時間が経っているのがわかる。「だ」の連続が荒れた感じを巧く出せてると思います。(京介)
・もう遊園地ないんですね。そこがまず斬新だなと思って、でもだだだだだっだし一面の土筆だしでさみしくない。いいですね。こういう視点を持ちたいものだなと思います。こういうのに比べると、オレってなんて凡庸なんだものの見方が!と、頭を掻き毟りたくなります。(小笠原玉虫)

18.ようやくの観覧車から雨を見ている 0・9・0
作者:トモマリ
○ロケッ子、十月知人、白熊左愉、8ビッ人、こみおく、木曜何某、フロヤマ、はたらきねこ、小笠原玉虫
・「ようやく」が効いていますね。なんであれ、「ようやく」出会えたものは特別なものであってほしい。雨が、その人にとって良いことなのか悪いことなのかは、この句においてはどっちでもいいなぁ、と思います。(ロケッ子)
・観覧車は人気アトラクション。乗ることに意義がある? それとも、観覧車があまり好きじゃない?(十月知人)
・情景が浮かぶ句。ひと息ついた感じがします。(白熊左愉)
・行列で聞きたくもない他人の会話を聞かされ散々待たされた挙句に、乗り込んだ観覧車が雨だったら、会話も弾まず時が止まったように感じられるでしょうね。(8ビッ人)
・簡潔なことばのなかに背景がよく見える句。(こみおく)
・無念ですね。ようやくなのに。(木曜何某)
・晴れていれば、さぞかし見晴らしが良かったことでしょう。残念です。(フロヤマ)
・正選。ちょうど対になっている観覧車句を両方とってしまう。15「見えるだけの観覧車見えた」が乗らずに見ているのに対し、こちらは乗って見下ろしている。並んでやっと乗れたのだろうか。雨は並んでいるときから降っていたのだろうか。それとも乗ってから降り出したのだろうか。雨を避けるために乗ったのであれば、観覧車への期待は特になかったのだろう。乗ってから降り出したのであれば、期待した景色が見えず残念に思ったのであろう。いずれにせよ、乗ってしまえば観覧車なんてこの程度のものである。この句では孤独はない。しかし孤独でないということにも慣れてしまえば倦んでいくものなのだろうか。(はたらきねこ)
・いいですね。やっとゆっくり話せそうなシチュエーション。大事なこと言うなら今だ、頑張れ…!でも雨を静かに見ているだけで満たされてしまって何も言えず。逆に倦怠感溢れる感じでも素敵。遊園地にまで来ても穏やかに流れる倦怠感も、悪くないものです。物語性がありますね。好きです。(小笠原玉虫)

19.ただ着ぐるみがこわくってカップも馬ももういらない 0・1・1
作者:mekeke
○8ビッ人 ●木曜何某
・子どもの頃の自分も着ぐるみがキライでした。自分が着ぐるみを着てしまえば、案外怖くないのかも。(8ビッ人)
・「着ぐるみがこわい」ということを、もう一歩踏み込めば面白いかなと思いました。「カップと馬」という表現も少し違和感があります。お馬さんとかの方が小さい子の感じがあっていいかなと思います。(木曜何某)