【結果】雑詠

1.パレットからこぼれるほど白をくれた 4・8・0
作者:木曜何某
◎白熊左愉、圓哉、はたらきねこ、小笠原玉虫 ○ロケッ子、十月知人、8ビッ人、フロヤマ、しみずわかな、桃子、元気な人、京介
・なんか心惹かれました。綺麗だなあ。(白熊左愉)
・明るい季節の雰囲気が句からよく出ていて、とっても好感が持てる。お題にぴったり。(圓哉)
・特選。これは本当に幸せな句ですね。写生会だろうか。ちょっと好きな女の子に、足りなくなった絵具をもらいに行ったんだろう。「パレットからこぼれるほど」が非常に効果的な表現になっている。こぼれるのは絵具だけでなく互いの笑顔でもあるのだろう。青春の日々を思い出しました。胸キュン句ですね。(はたらきねこ)
・若々しく、瑞々しいイメージにやられました。好きな子に「ねぇ白ちょうだい」って言ったらぶちゅーと異様にたくさんくれちゃって、何だよー(笑)みたいな感じかな。あったなぁそういう日々…と、眩しく目を細めました。白の絵具、出し過ぎると鳥のフンみたいだよなと思ってたことまで生々しく思い出しました。いいです、大変好きです。(小笠原玉虫)
・間違いなく愛されている。最大級の愛情表現だ。(ロケッ子)
・そんなに白もらってどうするの!っておこられそう。ユーモラスですね。(十月知人)
・図工の時間に、先生の目を盗んで白い絵の具の貸し借りがなされていたことを思いだします。気になる子には、つい多めにあげちゃいますものね。(8ビッ人)
・句意は図れませんが何となく好きな句です。(フロヤマ)
・実体験として記憶にあるので選ばせて頂きました。そんなに要らなかったのです、でも何も言えないで、ただ溢れる白を見つめている。。(しみずわかな)
・子どもの頃、白い絵の具が切れて友達に「貸して」って言ったら「やだ」って言われたことがあります。絵の具の白って、すぐになくなりますよね。そんな貴重な白を、こぼれるほどくれた優しさ。幸せな気持ちにさせられる句です。(桃子)
・白の絵の具って他の色より長かったり二本あったりして、でもすぐ無くなっちゃうんですよね。それを分けてくれる子がクラスに一人は居て、心の中で敬いつつどこか訝しんだりもしてました。そんな風景が蘇って、でもはみ出して欲しくはないですね。(元気な人)
・白をあげたほうも「あげ過ぎた」と思っているかも。(京介)

2.出しっぱの風鈴と鳴く秋の虫 0・2・1
作者:小笠原玉虫
○8ビッ人、こみおく ●桃子
・どちらも競いあうように、秋の夜長をりんりんと良い音色を響かせあうのでしょう。(8ビッ人)
・季節の移ろいを感じます。自由律なら「出しっぱ」より「出しっぱなし」のほうが個人的には好きですが、定型と考えると、収まりのいい句だと思いました。(こみおく)
・秋の虫の音と、風鈴の音。美しくておもしろいなあと思いましたが、季語が重なっているのが気になりました。自由律の句会では、そんなに気にすることはないのかもしれませんが、十七文字なのでなおのこと。「出しっぱの風鈴」だけで、充分、秋ということが伝わってくるので、下五を変えるか、「出しっぱの風鈴と鳴く虫」と定型を無視してしまったほうが良いかもしれません。(桃子)

3.南の島の美しい魚を甘く煮ている 3・3・0
作者:こみおく
◎トモマリ、うぐいす、元気な人 ○桃子、タケウマ、小笠原玉虫
・うまくいえないのですが、生き物を殺して食べる、しかもその生き物を美しいと感じている、という状態をとても冷静に見つめる視線にぞくぞくしました(トモマリ)
・鑑賞するための魚じゃなかったの? これ食べられるの? てゆっか食べちゃうの? えーかわいそうー…あ、おいしい。という旅先での一コマですね。「南」「美しい」「甘く」ときて「煮ている」で落とす感じがいいですね。(うぐいす)
・郷に入っては郷に従え、とは言うけれど、中々理解し難い事柄は多いですよね。ただ、甘く煮ている人がその魚を美しいと思っているか否かで、この句の真意は変わってくると思います。その辺りの価値観を考えるとより一層面白いです。(元気な人)
・沖縄に行ったときの、赤や青の美しい魚を思い出しました。見ているだけで幸せな気持ちになれるのに、美味しくいただける幸せ。いいなあ、南の島に行きたい。(桃子)
・きっとおいしくないんだよね。(タケウマ)
・これは絶対いい女。お魚を甘く上手に煮ることの出来るほっそり美人の奥さんが浮かびました。愛する夫に甘い煮つけを出してメロメロにさせておきながら、昼間に恋人にもちゃっかり会ってるような、悪い、いい女。そんなイメージ。大好きな句です。(小笠原玉虫)

4.入れ歯飛び出てなお笑っている 1・3・0
作者:京介
◎8ビッ人 ○mekeke、タケウマ、元気な人
・なれるものなら、私もこういうおばあさんになりたい。(8ビッ人)
・この場合、止まるどころか余計に笑っちゃいますね。申し訳ないと思いつつも、笑いが出てしまいそうです。(mekeke)
・その話聞きたい♪(タケウマ)
・入れ歯をする人って豪快な人が多いんですかね。実際に目の当たりにしたことはないんですが、パッと風景が浮かびます。僕は入れ歯をして笑えるかなぁ(元気な人)

5.異星人来るなら鈴虫の鳴く夜 0・5・0
作者:タケウマ
○ロケッ子、トモマリ、桃子、うぐいす、八王子
・自分の星に帰った異星人が地球を思い出すたび、あの優しい鳴き声がもれなくついてくる。地球っていいところだったよって思ってほしい。オケラの鳴く夜もおすすめ。(ロケッ子)
・やさしい地球人(トモマリ)
・静かな秋の夜、何かが起こりそうな気がしますよね。月も綺麗だし。(桃子)
・異星人が「来そうな」ではなく「来るなら」ということは、異星人が来ることが前提としてあるということなのかしら。鈴虫のあの声は、宇宙と交信しているのかな。(うぐいす)
・もしエイリアンが音に反応して現れるとするならばそれは空が澄んで鈴虫が鳴く秋の夜だろう。異星人と鈴虫の取り合わせが妙。(八王子)

6.ぷしゅっ、ぐびっと、夏終る  0・3・0
作者:八王子
○フロヤマ、こみおく、はたらきねこ
・潔い感じでイイです。(フロヤマ)
・テンポもよいし、潔くて爽快。(こみおく)
・正選。簡潔な夏であった。ビールとともに飲み下してしまえば、猛暑もいつのまにか終わっている。リズムがいいですね。(はたらきねこ)

7.イヤホン外して音のある世界 3・4・0
作者:元気な人
◎ロケッ子、しみずわかな、mekeke ○白熊左愉、トモマリ、圓哉、うぐいす
・おもしろい。逆だけど逆じゃない。居心地がいいのはどちらの世界?(ロケッ子)
・画が綺麗だと思いました。聴く世界の扉であるイヤホンを抜けて聞く世界に入るのも面白いです。どちらがリアルなのだろう。(しみずわかな)
・この句を読んで、イヤホンを装着することは現実逃避でもあるなぁ、と感じました。自分の世界に入ってしまって外の生の世界と線を引くような感じ。退屈に感じるかも知れないけれどたまには外して歩いてみるかな、と思いました。(mekeke)
・イヤホンして音楽聴いていたのではないのかな?はずして「音のある」世界?ってことは雑音ってことなのかなあ?逆説的な、魅力を感じた句。(白熊左愉)
・実感としてすごく伝わりました(トモマリ)
・音は騒音ですかね、それとも現実に戻る手続きかな、、、(圓哉)
・イヤホンをはずした瞬間の「こっちの世界に戻ってきた」感じがよくわかります。生々しい、生きている、音。(うぐいす)

8.君の隣で雷まだ遠い 3・4・0
作者:うぐいす
◎フロヤマ、木曜何某、八王子 ○こみおく、元気な人、京介、小笠原玉虫
・雷が近づいてくるのを待っているような。二人の距離もさらに近づくのでしょうね。(フロヤマ)
・隣で光ってから「1、2、3」と数えているのが良いですね。たぶん、心の中で。(木曜何某)
・二人の世界に浸れば雷も怖くない。その充実感を雷はまだ遠いという言葉に込めた。(八王子)
・なんかエロい。雷ちかくに来たらどうなるんだろう。(こみおく)
・片思いの男の子が男を見せ付けるためにアクシデントを期待して歩いている風景を想起しました。肝試しやお化け屋敷よりも嫌味が無く、自然ではあるけれどその分思い通りにはいかない。いつもは忌み嫌う雷を求めている利己的な人間味に、星三つです。(元気な人)
・いつか雷に撃たれるように感じた。この"君"が不倫相手に思える。(京介)
・いいですね。恋人と静かに寝そべって、遠い雷を聞いている。恋人と寝てる時以上に雷が嬉しい時ってそうあるもんじゃないですよね(←ほかのシチュエーションでは雷苦手すぎるボク)これは行為のあとって感じがする。終わってぼんやりして、雷まだ来ないねみたいな。静かだけど色っぽい。非常に好きな句です。(小笠原玉虫)

9.隣人に似た子あやして面接の朝 1・2・1
作者:ロケッ子
◎京介 ○トモマリ、はたらきねこ ●うぐいす
・いろんなドラマが想像できる濃厚な句ですね。この句の主人公は男で妻がいて子がいる。しかしその子は自分の子ではなく隣人の子なのではないかと疑いながらもあやし、家族を養うための仕事の面接に行く。はぁぁ。(京介)
・ドラマを感じます(トモマリ)
・正選。面接という非日常への挑戦の朝に、連綿と続く日常に出会う。「隣人に似た子」が、隣人の子供なのか、それとも途上で出会った他人のそら似なのかはわからないが、その日常が、非日常へ立ち向かう勇気をくれたのだろう。(はたらきねこ)
・うーん、状況が読めません。「隣人に似た子」は、不貞の子、ということなのかしら。それとも単純に隣人に似ている子に出会っただけなのかしら。いずれにしても「面接の朝」との取り合わせがよくわかりません。(うぐいす)

10.最後の一つ割りに割って小さな一口 0・4・0
作者:mekeke
○ロケッ子、しみずわかな、はたらきねこ、京介
・食べ物に限らず、他のことでもこういう感覚ってあると思う。自分の手元を離れる何かを愛しむ気持ち、二度と会えない誰かと別れがたい気持ち、そういう感情っていいものだなぁとかなり妄想させてもらいました。(ロケッ子)
・かわいらしい、です。割りに割って、と重ねているところが。その無邪気な心と、それに素直に従う行動が。かわいらしい、です。(しみずわかな)
・正選。チョコレートだろうか。小さな子供たちが仲良く分け合って食べる様子が微笑ましい限りです。しかし、もしかするとこれは遭難して飢餓状況にあり、最後の食料を分け合っているのだとしたら……。そうなるとこれはNG句ですね、タケウマさん!かなしい!かなしい!(はたらきねこ)
・食べ終えたくないほどすごく美味しいものをチビチビ食べていったのでしょうか。最後の一口は最後の最後。(京介)

11.死んだ人の話しながら煎餅をくだいている 2・5・0
作者:トモマリ
◎十月知人、桃子 ○白熊左愉、圓哉、木曜何某、mekeke、小笠原玉虫
・淡々と死をとらえていますね。煎餅も効いています。(十月知人)
・なんてことないよくある風景なのですが、それが良いです。例えばイタリアンとか、スイーツとかだったら、また意味が違っていた。煎餅だから良いのです。時々、思い出してくれる人がいる…亡くなった方にとって幸せなことだと思います。(桃子)
・煎餅を食べているとか、噛んでいるとかではなく、「くだいている」という言葉を使ったところがいいです。(白熊左愉)
・死も日常ですね。(圓哉)
・お盆でしょうか。なんかいいので選ばせていただきました。(木曜何某)
・「死んだ人の話」という部分に気怠い空気を感じて、いいなと思いました。それほど親しくなかった故人なのかな、と感じました。何があるわけでもないけど話のついでで出てきたような感じを受けました。(mekeke)
・最後まで雑詠特選どっちにするか迷いました。写生句ですね。でも、言葉にならない思いが伝わってきます。煎餅を割りながら食べる、そんな日常の中で亡くなった人の話がふっと出る。人生て感じします。いまわたしが詠みたい句はまさにこのような句なのです。憧れを覚えます。好き。(小笠原玉虫)

12.とりあえず立て掛けておく蠅叩 2・5・0
作者:十月知人
◎こみおく、タケウマ ○白熊左愉、フロヤマ、木曜何某、mekeke、八王子
・蝿叩って風情がありますね〜。とりあえず立て掛けているところに生活感を感じます。(こみおく)
・そうなんですよね。買ったからすぐ使うものではないんですよね。緊張と弛緩というかハレとケというかメリハリというか、蠅叩の本意が表されていると思いました。(タケウマ)
・とりあえず立て掛けておいてしまいますね、なんかの役に立つかもしれないと(笑)(白熊左愉)
・秋とはいえ、まだ蠅叩きの出番はあるでしょう。「とりあえず」がイイです。(フロヤマ)
・倒すつもりも、勇気もないけど、入ってきたら殺すぞというアピールだけはする。一応。(木曜何某)
・一旦休戦するも「次出てきたら確実に仕留めるからな」という雰囲気が感じられて面白いなと思いました。(mekeke)
・昔は沢山いた蠅も近頃はそれほど見かけなくなった。しかし、現れるとウルサイ。だから蠅叩は手元に置いておくのだ。とりあえずが効いている。(八王子)

13.寝汗かく子の頭あおいでやる汗 0・1・0
作者:フロヤマ
○8ビッ人
・眠りに落ちる直前に一番汗っかきな子ども。寝冷えしないようにと、エアコンを緩くしてうちわで扇いでくれる優しい母さんの手。お母さんだって暑かろうに、愛のなせる業!(8ビッ人)

14.納豆こぼれそうキムチも入れよう 0・1・0
作者:桃子
○タケウマ
・え? こぼれちゃっていいの?(タケウマ)

15.数打って当てない能力 0・2・2
作者:しみずわかな
○十月知人、圓哉 ●こみおく、mekeke
・これもひとつの才能では?なんて思いました。(十月知人)
・こういう人は貴重、だから惹かれたのかな。(圓哉)
・おもしろい句!だけど、何度も読んでたらだんだん悲しくなってきたから逆選!(こみおく)
・私の読解能力の問題もあるとは思うのですが、この句が表現としてどう広がるのかがよく分かりませんでした。たとえば○×式テストで0点とる技術のことかなと思いましたが、そこから何かが広がる感じがしなくて、種にもなる一句というよりも、もうこれが成長した姿ですという一句なのかなと感じました。と考えるとこれはこれでいいのかなとも思ったり。とにかく何かモワッと心に引っかかるもののある一句でした。(mekeke)

16.盆踊り娘の背中眺めつつ 0・3・0
作者:白熊左愉
○しみずわかな、木曜何某、八王子
・心境が滲むような作品だと思いました。滲み見えるようなのだけれども、あんまりにも混沌としているので言葉を掛けることができないような。(しみずわかな)
・提灯のあかりにぼんやり照らされている浴衣を見ている感じがいい。(木曜何某)
・娘の成長をそっと見守る、父親にはこれしかできない。だから正面からでなく後ろ姿を眺めるのがふさわしい。ずいぶん大きくなったな、彼氏はできたかな?などど呟きながら。盆踊りの輪は時の流れも感じさせる。(八王子)

17.大人になっても寝ぐずの君にライナスの毛布 0・0・1
作者:8ビッ人
●小笠原玉虫
・ちょっと世界観がスウィートすぎるかなと思ってとらせて頂きました。俳句というよりもポエムのようだなと。好きか嫌いかで言えばかなり好き。なので、このままスウィートで出すよりも、もうひとひねりして、俳句的「ぽつん感」を出すと、超カッチョイイ自由律に大化けするんじゃないかなと思います。ライナスの毛布も思い切って言い換えるといいかもしれません。大人になっても寝ぐずって非常に可愛い。この可愛さに、俳句的さみしさがかぶさってるようなのを見たいなと思いました。(小笠原玉虫)

18.虫の音や縄文の香りも闇に消え
作者:圓哉

19.なにもかも足りないけれど金あるから買うわ明日買う 0・2・5
作者:はたらきねこ
○十月知人、うぐいす ●ロケッ子、白熊左愉、トモマリ、フロヤマ、元気な人
・明日買うイコール買わないですかね。笑えました。(十月知人)
・金があってなんでも買えるけどなにか足りない。なにもかも足りない。満たされない。虚しいですね。あ、でも「金あるから」って一度言ってみたいな。(うぐいす)
・おもしろくってなんだかツボにきてしまったのですが、いや、これをスルーしたらダメだろうって、私の中のかわいい人が言うので逆選に。この句はこれで完成していて、言葉を減らすことも増やすこともできない。でも、五七で始まっているせいか、これはちょっと思い切って短歌で仕上げたほうが、おもしろさがより大きくなるような気がするなぁ。「なにもかも足りないけれど金があるだから買うんだ明日買うんだ」…って、おもしろさが減ってしまった!(ロケッ子)
・意味がわからなかったです。(白熊左愉)
・伝えたいことが何なのか、よくわからなかったです(トモマリ)
・上句がだらだらしていて勿体ないと思いました。下句は面白いです。(フロヤマ)
・冗長の割に風景や意図が読み取れず苦しい。着眼点という先天的なセンスはとてもあると思うので、表現次第で特選にもなり得ると思います。もう少し具体性を持たせ、且つ限定的であると良いと思います。(元気な人)