【結果】指定語「爪」

※次のような並びで掲載しています。
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 句  獲得点 特選数・正選数・逆選数
 作者
 ◎特選に選んだ人 ○正選に選んだ人 ●逆選に選んだ人
 選評

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1.泣きたくないので爪を切っている 2・4・0
作者:トモマリ(@t0m0_mar1)
◎ロケッ子、白熊左愉 ○桃子、はたらきねこ、八王子、小笠原玉虫
・「泣きたくないので」という部分に、強い意志のようなものを感じました。これが「泣かないように」や「涙をこぼさないように」だと、また違ったイメージの句になったのでしょうね。足を含めても、爪は二十箇所。それをすべて切り終える頃には、他に気を紛らわすことが見つかっているとよいなぁと心から願います。(ロケッ子)
・なんかしていないと泣いてしまいそうな気持ちを爪を切る動作で紛らわす切なさが伝わります(白熊左愉)
・そうか、泣きたくないときは爪を切ればいいんだな。少しむっつりとした表情で爪を切っている姿が目に浮かびました。(桃子)
・正選。うつむいていられる行為ですからね。爪を切るのが主体として見ても客体として見ても、よく発見したなあと思います。(はたらきねこ)
・爪切りに力を籠めなければ爪は切れない。力を入れている間は涙は流れない。手と足の20本の爪を切れ終わるまでにこの悲しみが癒えて欲しい、と爪を切っている。(八王子)
・分かる。一見関係ないような行動して涙こらえる。あるある。そうやってこらえた涙がまたひとつ作者の中に物語を残していくのでしょう。心から応援したくなる句。辛い思いは芸の肥やしになる。負けんな!(小笠原玉虫)

2.爪弾かれてのこる月
作者:はたらきねこ(@hatarakineko_)

3.爪先で爪先触っている湿った夜 1・3・0
作者:うぐいす(@uguisu_asobo08)
◎十月知人 ○ロケッ子、タケウマ、小笠原玉虫
・「爪を切る」に近い表現を使っていない点と、男女の生暖かさが伝わる所。(十月知人)
・情愛の生々しさがどの句よりもストレートに伝わってきました。もし、どちらも自分の爪先だったとしたら、とっても平和。(ロケッ子)
・エッチ♪(タケウマ)
・いいですね。もじもじくんな感じ。こういうもじっとしたやるせない気持ちになるものですよね、湿気の多い夜。スゴく伝わってきます。好きな句です。(小笠原玉虫)

4.「ちょっと貸して」と爪でネジをゆるめた 0・2・0
作者;木曜何某(@thurstar)
○十月知人、mekeke
・ナンセンスさが、いいですね。(十月知人)
・「ちょっと貸して」という言葉と、その仲が良かろうが悪かろうが、そんな言葉が出る距離感に何だか惹かれるものがありました。おもちゃの電池を交換している姿とか、目覚まし時計の電池を交換している姿とか、何気ない生活の一コマが見えてそこもいいなと感じました。(mekeke)

5.隠した鷹の爪かじり涙目 0・2・0
作者:しみずわかな(@tear_dream)
○トモマリ、木曜何某
・「鷹の爪」が何の比喩なのか、と考えると楽しくなります(トモマリ)
・実力はあるのに、見せる機会に恵まれず、家に帰って1人泣く。からいですね。(木曜何某)

6.月明かり爪先立ちして見たい女人(ひと) 1・1・0
作者:圓哉(@ennyahaiku)
◎小笠原玉虫 ○桃子
・大変いいです。「爪」から連想させるもの・シチュエーションの中でも「爪先立ち」っていいなと思いました。で、月明かりの下で何とかして見たいいい女。想像力を掻き立てられます。尊敬する俳句の先輩がいつも言ってる「当たり前過ぎない、奇を衒ってもいない」ってまさにこういう句のことだなとすとんと腑に落ちました。初見一発で特選にとらせていただきました。Excellent!(小笠原玉虫)
・露天風呂を思い浮かべました。壁一枚で仕切られた奥から聞こえる女の声。月は、女を美しく照らしているのだろう…。そわそわした気持ちが伝わってくる句です。(桃子)

7.足の爪がこんなにも遠いとは 3・7・1
作者:8ビッ人(@8bit_woman)
◎こみおく、うぐいす、京介 ○十月知人、白熊左愉、圓哉、フロヤマ、しみずわかな、木曜何某、元気な人 ●タケウマ
・きっと、妊婦さんになって初めて、お腹がでているお父さんの苦労がわかったのでしょう。「お父さん、足の爪切るときこんなに苦労してたんだね」(こみおく)
・自分で足の爪を切ろうとしているのに、体が固くて手が届かない、という状況だと読みました。昔はこんなことなかったのに…とか、だれか切ってくれる人がいてくれたら…という嘆息が聞こえそうです。「が」と「とは」を削って言い切ってしまってもいいかなと思いました。(うぐいす)
・腰が曲がらない、膝が曲げられない状態なのか。
普段なら容易く出来ることができない辛さがわかります。(京介)
・分かります、この感覚。(十月知人)
・私も同様に感じたことがありますので、共感。(白熊左愉)
・この感覚はよくわかるんだけど、もう一ひねりほしいところ、でもどう言いかえるのかは浮かびません。(圓哉)
・子供の頃は楽に切れたのに、といったところでしょうか。視点が面白いです。(フロヤマ)
・あるときふっと気付くのでしょう。(しみずわかな)
・自分の身体なのに、遠いところが多すぎる。お酢を飲んで、軟らかくなりましょう。(木曜何某)
・足の爪って手ほど頻繁に切らない分、その都度窮屈さを忘れては思い出しますよね。着眼点は足に終始しているのですが、句の余韻が身体一杯に広がって、うんと背伸びしたくなります。(元気な人)
・まずはストレッチからはじめましょう♪(タケウマ)

8.今夜抱かれる爪を切る 2・3・1
作者:京介(@princekyo)
◎フロヤマ、八王子 ○こみおく、タケウマ、小笠原玉虫 ●はたらきねこ
・爪を切る行為に激情を忍ばせる。何とも艶かしい句です。(フロヤマ)
・愛される喜びと深く愛されて爪を立てても相手の背中を傷つけまいとする女性の優しさと愛情の深さが素直に表現されている。(八王子)
・抱かれるんだったら切らないで伸ばしておきたいところですが、周到に準備している感じがいいですね。(こみおく)
・エッチ♪エッチ♪(タケウマ)
・わたし、実はこちらの句と似た感じの今回出しちゃったんですが、こっちのがうめぇじゃねぇか、クッソ!と地団太踏みました。いいです。色っぽいし、好き。ちょうど言いたかったことをもっと上手に言っていただけた快感がある。(小笠原玉虫)
・逆選。用意周到な受け身さが生々しすぎて美しくない。「今夜かもしれない爪を切る」ぐらいにしてくれたら可愛かった。(はたらきねこ)

9.明日はデート爪をまるめておく
作者:小笠原玉虫(@OGA0531)

10.船長は鉤爪はずす残暑かな 1・6・0
作者:十月知人(@totsukitotsuki)
◎木曜何某 ○圓哉、フロヤマ、しみずわかな、こみおく、はたらきねこ、うぐいす
・やっぱり暑いと鬱陶しくなるのでしょうか。ガコッと横において、団扇をあおいでいるのが目に浮かびます。(木曜何某)
・今年の夏は暑うございました。「船長も」ではありきたりかな。(圓哉)
・確かにアレは重そうで、暑そう。夏の間は気合い入れていたが、そろそろ疲れたのか。視点が素晴らしいです。(フロヤマ)
・秋めいた空は、人を旅立たせる作用があると思います。一つところに留まれない質の人は特に強く感じるのでしょうね。(しみずわかな)
・暑いからね。しかしはずしたらどうなってるんだろう。(こみおく)
・正選。義手ではなかった。手あったのかよフック。蒸れるからはずしているのだろう。キャラクターを守るのも大変ですね。(はたらきねこ)
・はずせるものはすべてはずしてさっぱりしたい!そんな今年の夏でした。さ、船長を襲うなら今ですよ。(うぐいす)

11.君に手紙を書こう爪を切る 2・2・0
作者:こみおく(@ayukoyama)
◎mekeke、元気な人 ○白熊左愉、タケウマ
・勝手にこれは夜の出来ごとであると想像していました。この人は結局爪を切って、手紙は書かずに寝てしまいそうだなと感じました。爪を切ったらそこで何かが満たされて、というか気持ちが「手紙を書こう」と思っていた時よりも新しいものになってしまって、まあ今日は書かなくてもいいかとなりそうな気がしました。爪を切るのも小さなリセットだなと感じました。(mekeke)
・数句あった「爪を切る」系の中でも前後のバランスが良く心に残りました。特に「手紙を書こう」で留めた表現が秀逸だったと思います。とても平衡感覚に長けている方なんだろうなと思います。(元気な人)
・手紙を書く決意と爪を切る。という言葉の組み合わせが清清しいです。(白熊左愉)
・一見エッチじゃないけど、実はエッチだと思う♪(タケウマ)

12.夏の終わりの爪先立ちのキス 0・1・0
作者:フロヤマ(@furoyama_shobo)
○8ビッ人
・身長差のあるカップルに憧れます。何故だか学生服を着た二人を連想させます。(8ビッ人)

13.爪短く切り素直さ戻る 1・7・0
作者:白熊左愉(@sayumemi)
◎しみずわかな ○8ビッ人、mekeke、木曜何某、こみおく、元気な人、京介、八王子
・句自体が素直な印象を持ちました。爪を伸ばしているときは何か背伸びをして頑張っていることが多いような気がする。(しみずわかな)
・爪の長さと純朴さは、比例しているのかもしれませんね。(8ビッ人)
・背伸びして爪を伸ばしてみたりあれこれやってみたものの、その背伸びに疲れて結局もとの長さに切った思春期の女の子を思いました。切ってガッカリ、ではなくて、切った本人もどこかホッとしたような、やれやれなれないことはするもんじゃないわねみたいな感じ。(という表現は思春期っぽくないかもしれませんが)本来の自分が何なのかよく分からなかったけどこういうことか、と気付くような。(mekeke)
・思春期の終わりのような句でしょうか。この句好きです。(木曜何某)
・ツケマもとって素直さ戻る。(こみおく)
・爪に左右される芯の揺らぎに可笑しみを感じるのですが、バカには出来ないんですよね。人間てやっぱりそんなに強いもんじゃない。ユーモアに任せて戯けてみせていますが、だとしてもやはり「素直」と真っ直ぐ言えるのは何よりも素直な証拠ではないでしょうか。(元気な人)
・親の言うことを聴かず爪を長く伸ばしていた娘、それが爪を切ることで素直さが戻ったと思う親が思い浮かびました。(京介)
・反抗してばかりいた娘がしおらしくなった。見ると爪が短く切られていた。付け爪をして真っ赤にマニキュアしていた娘が。そして一言、お父さん色々ゴメンナサイ!(八王子)

14.深爪をなめて花野は雨模様 2・5・0
作者:タケウマ(@take575)
◎圓哉、はたらきねこ ○ロケッ子、十月知人、mekeke、元気な人、うぐいす
・深爪と花野の意外性のある取り合わせに感心しました。綺麗でなんか色っぽい感じ、屈折した心情のようにも感じる、素敵な句です。(圓哉)
・特選。なにもかもうまくいかない。しかしいつか爪は伸びるし、雨は上がるだろう。「今」をやり過ごし、明日を待つしなやかさが「なめて」という表現に集約されている。(はたらきねこ)
・何やら美しい句。切りすぎて爪を舐めつつ、男(勝手に男性を想像したけれども)は今から何をしようとしているのか。(ロケッ子)
・深爪はつい舐めちゃいますよね。(十月知人)
・爪を噛んでいる姿、何かままならぬことや気がかりなことがあるのかなと考えました。外も雨模様ですし。気持ちと風景のつながりがいいなと感じました。(mekeke)
・「爪をなめて」で僕は猫を想起しました。深爪ってことは飼い猫なのでしょうか。折角爪を短くした翌日の外は生憎の雨。新しい靴を買った翌日に雨が降ったような遣る瀬無さを感じましたが、人間のそれとはきっと違うのでしょう。(元気な人)
・何か物思いにふけっているのでしょう。深爪の痛みって、後悔の胸の痛みに似てシクシクじわじわと後を引く。少しロマンチックに溺れる感じが、雨の花野と合っていると思います。(うぐいす)

15.確かめた愛も爪の汚れ 0・3・0
作者:元気な人(@no_fineman)
○トモマリ、桃子、京介
・私のような若造にはわからない「大人の愛」を想像しました(トモマリ)
・愛を確かめる前の句はいくつかありましたが、この句は愛を確かめた後の句。汚れさえも愛おしい。すっきりと、まとまっていて良いです。(桃子)
・愛情表現で引っ掻くタイプなのか。背中に痛そうな爪あとも見えてきます。(京介)

16.柘榴落ちて深夜に爪を研ぐ女 1・5・0
作者:八王子(@jrc0024)
◎桃子 ○ロケッ子、トモマリ、しみずわかな、はたらきねこ、京介
・ぞくぞくする句。復讐するための準備だろうか。「柘榴」という単語のチョイスが素晴らしいです。(桃子)
・「柘榴」も「爪」も女の象徴のような気が。柘榴が落ちるというのは、何かが終わってしまったことの暗喩なのではないだろうか。いよいよ動き出してしまう女の句。怖さと妖艶さと潔さ。(ロケッ子)
・息の詰まるような静寂が想像されて好きです(トモマリ)
・夏を満喫しまくっても尚、物足りず、もう一遊びしてこようかな‥といった風情でしょうか。若くて魅力的で貪欲、真っ盛りの命。(しみずわかな)
・正選。柘榴の象徴するものを考えると、爪を研ぐ行為に女の業が感じられて怖い。情念句ですね。好きです。(はたらきねこ)
・柘榴は鬼子母神に供える果実。ヨーロッパだと冥界の実。これから爪で人が殺められそうな怖さがあります。(京介)

17.猫のひげ爪弾けばドのシャープ 2・2・0
作者:ロケッ子(@5_rockets)
◎8ビッ人、トモマリ ○フロヤマ、うぐいす
・猫が素直にヒゲを貸してくれるとは思えないからこそ、ユーモラスな句に感じられました。ですが、ドのシャープを鍵盤で確認してみると、不安定な印象の音なので、他にも受け止め方がありそうですね。(8ビッ人)
・短編小説を読んでいる気分になりました。(トモマリ)
・メルヘンな句。シャープというのが何かイイです。(フロヤマ)
・ファンタジーですね。このあと怒った猫にひっかかれるに違いありません。猫は黒猫であってほしい。それと、月夜であってほしい。ベタだけど。(うぐいす)

18.無粋者の憎たらしくも美しい爪 0・3・0
作者:mekeke(@mekekeke)
○白熊左愉、8ビッ人、八王子
・ギャップにやられます(笑)(白熊左愉)
・一昔前の私には耳が痛い句。(8ビッ人)
・人の気持ちもちっともわからない無粋な男。でも何故かとてもきれいな爪をしている。その爪で項に触れて欲しいと密かに願っているのに。(八王子)

19.全裸になって私の足の爪を切りなさい 1・1・3
作者:桃子(@Maomonta)
◎タケウマ ○圓哉 ●8ビッ人、しみずわかな、京介
・はい、ご主人様♪(タケウマ)
・「足の指をなめなさい」だともう女王様、少しH度が希薄になった気がする。(圓哉)
・なにやら性的なものを感じますが、万人に理解できるものとは少し遠い気がします。私にとって足の爪は非衛生なものなので、フェティッシュなものとして、とらえることができませんでした。(8ビッ人)
・あくまでも個人的にですが、寄り添って魅力を汲み取ろうという気持ちになり難かった作品でした。(しみずわかな)
・女王様の命令そのまんますぎるように思います(京介)