【結果】雑詠

すみません〜! 制限字数にひっかかったので、過去記事編集で「雑詠」の選評を載せます。


1. 富士額のわたしの富士を見にきて 3 0・3
作者:うらら花
○Umbert Dolby、ねぢこ、橙
・額の富士を前面に押し出した真っ向勝負。好感。(Umbert Dolby
・最近の子は富士額恥ずかしいから剃刀で剃り落とすらしいです。娘が言ってました。けどこの子はそんな小さな小さな富士額を自慢に思っていて、見に来てと言う。いじらしいです。「旅」で詠んでいたら間違い無く特選でした。(ねぢこ)
・私に会いにきて欲しいのに素直じゃない…富士山ではないけれど、作者も富士額で家でも富士が見えるよ、というのがなんだかいじらしいと思いました。私も富士額です。(橙)

2. 王子様さるすべりにのぼる 2 0・2
作者:もも
○Umbert Dolby、可児
・へんな王子様。(Umbert Dolby
・殿下、危のうございます。お止めなさいませ!(可児)

3. 洒落た料理褒める戸にカレーの匂いする 3 0・3
作者:元気な人
○みずいろばーど、天坂寝覚、ちよ
・日々、慎ましく生活している女性の、精一杯おしゃれした姿が愛おしいです。(みずいろばーど)
・この句のカレーには逆らえない。(天坂寝覚)
・カレーの匂い。3500円のではなく、普通の家庭の匂い、母の匂い。その匂いと洒落た料理を出す店とを隔てる戸、なのか。洒落た料理を出す家としての戸なのか。どちらにしても面白い。(ちよ)

4. 台風予報と犬の寝言聞く日曜の午後だ 5 1・3
作者:玉虫
◎さはらこあめ ○もも、うらら花、天坂寝覚
・犬が寝ていると言うことは、その人物の居る場所には台風は来ない。災害の前は動物は落ち着かなくなるから。平和な時間なのだろう。しかし予報を聞くというところが、他人事ではないという気持ちが伝わってくる。上手い。(さはらこあめ)
・のんびりとした時の流れを感じられる句。台風の日は、散歩にいけなくて、犬も暇そうにしています。(もも)
・日曜日の午後はのどか…そんな風景がうかんできます。(うらら花)
・ただでさえ気怠い日曜の午後がさらに気怠い。それにしても犬って寝言を言うのか。(天坂寝覚)

5. ビンゴだが黙っていよう 13 1・11
作者:木曜星の人
◎京介 ○畦道、Umbert Dolby、mekeke、田中並、mojolovich、ロケッ子、タケウマ、ニレ、白川玄齋、元気な人、ちよ
・商品が気に入らないからスルーなのか、出る杭は打たれる空気なのか。(京介)
・なんというストイックさ。渋い、渋すぎる!(畦道)
・奥ゆかしい。(Umbert Dolby
・司会者が「ビンゴになりましたら大きな声で「ビンゴー!」といってその場に立って下さい」と言ったあの日からずっとビンゴと言えぬままです。(mekeke)
・面白い。多分そうしなければならない立場にいるか、雰囲気なのだろう。(田中並)
・「なぜなんだ!」あるいは「恥かしがりか!」という突っ込みがいくつも浮かんで楽しいです。(mojolovich)
・目立ちたくないのかな。どうか隣に、おせっかいの人がいて、「ちょっと、あなたビンゴだわよ! はーい、はーい! ビンゴの人いまーす!」とかって勝手に言ってくれますように。必要以上に注目を集めますように。(ロケッ子)
・うん、そういうときってありますよね♪(タケウマ)
・あぁ、ビンゴになっちゃったよ、でもこのノリの中には入っていきたくねぇなぁ…。なんて思いつつお酒をちびりとやってパーティーを眺めている私を夢想。積極的に拒絶するわけではないけれど、なんとなく今のままで眺めていて充分にそれで良い、という気持ち。なんか、好きです。この句。ただコミカルなだけじゃないところが特に。(ニレ)
・状況として時おりあります。(白川玄齋)
・こういう人いるんでしょうね。今行くのは早すぎて目立ってしまうから、もう少し頃合いを見て名乗りでるんでしょうか。自己主張の強くない利他的な方みたいですが、でもちゃっかりビンゴカードを捲ってるのでとても人間的で愛らしいですね(元気な人)
・思わず、くすっ(-^艸^-)ってしてしまいました。平坦な顔をして、あえて黙っておきたいですね。(ちよ)

6. おなら我慢してないで結婚しよう 14 2・10
作者:かもせり
◎畦道、うぐいす ○mekeke、こみおく、可児、もも、フロヤマ、タケウマ、白川玄齋、元気な人、ねぢこ、橙
・結婚当初、もうおならを我慢しなくていいと思い、空気清浄機の前で盛大にぶっ放していた。センサーのランプが、緑から赤に変わるのが面白かったからだ。しかし一週間も経つと、妻から「それはやめて」と叱られた。結婚とは、おならし放題ではないのである。(畦道)
・最高に好きですこの句!すべてを受け入れて、おならまで愛してくれる覚悟なのですね。それもどうだろう。でも私なら絶対イエスです。(うぐいす)
・結婚してもいいけれど、それと屁とはまた別問題だと言いたい…。保っていたい一線が人にはあるんだ…!(笑)(mekeke)
・プロポーズの言葉としては最悪!ですが、この人となら肩肘はらずに楽しく生活できる。2人がつくるであろう大らかで明るい家庭が予想される句です。(こみおく)
・こういうプロポーズ、いいね。(可児)
・すいません、結婚する前からおならしてます。(もも)
・特に女性は彼氏の前でおならをするのは、ひどく恥かしいことでしょう。でも結婚してしまえば、恥ずかしくなくなるものかもしれません。シニカルな視点に思わずニヤリです。(フロヤマ)
・うん、我慢しないほうがいいですよ♪(タケウマ)
・そういうことなのか…(白川玄齋)
・一世一代の台詞の前に何言ってる(考えてる)んですかね。落差がとても人間らしくて良いです。(元気な人)
・最高のプロポーズの言葉。優しいな〜と思いました。返事はもちろんおならで。そしておならに乗って新婚旅行。(そんな昔話あったな)(ねぢこ)
・好きな人のおならなら笑ってすみますよね。おならどころではなく、なんでも言い合える二人でありますように。(橙)

7. 眠る子の鼻先冷たい冬の入口 15 2・11
作者:ちよ
◎タケウマ、ねぢこ ○いつ藻、allex、mekeke、田中並、せば、うぐいす、みずいろばーど、はたらきねこ、フロヤマ、天坂寝覚、橙
・鼻先で切るんですよね? どこで切るのか迷いつつ、なんともいえない空気感にひかれました。(タケウマ)
・幼子を胸元に抱き寄せれば小さな鼻先から点のような微かな冷たさを感じる。言葉は無くても冬の訪れを語る幼子。ああ、もうすぐお前の知らない冬が来るね。情景の美しい句。迷いなく選びました。(ねぢこ)
・秋だと思っていたら、冬の気配が。ということでしょうか。愛情を感じる句ですね。(いつ藻)
・特選と悩んだた句です。お昼ねでしょうか、それとも寝かしつけた後の光景でしょうか。子供の鼻先って冷たくて少し赤らんだりして可愛いいですよね。まるで写真で見ているように光景が浮かび、良い句だと思います。(allex)
・小さな鼻先を突っついて笑うお母さんの姿が浮かびました。秋になったばかりですが、あっという間に冬になってしまいますね。私に子供はいませんが、子供がいると四季を感じる機会が増えるのでしょうか。何かいいなあ風景だなと思いました。(mekeke)
・この作者は、眠る子の鼻先に触れたのだと考えたら、愛情を感じました。(田中並)
芥川龍之介の句を思い出す。(せば)
・季節はこんなところからもやってくるのですね。かわいらしい寝顔が浮かびます。(うぐいす)
・映像が浮かぶような作品でした。すやすや眠っているけれど、その小さな鼻先が驚くほど冷たくなっている。たぶん赤みを帯びて。風邪をひかせないように注意する季節……あれこれ思い巡らす母親の表情にほっこりします。(みずいろばーど)
・子の眠りを守る親の愛情が感じられました。(はたらきねこ)
・母の愛情を溢れるやさしい句ですね。鼻を冬の入り口になぞる辺りに詩的なものを感じました。秋は何かと人恋しくなる季節です。こういう句には撃沈されます。(フロヤマ)
・冬の先触れを逃さず捉えた。『眠る子の鼻先』に冬を見つける視線が素晴らしいと思う。(天坂寝覚)
・お子さんの寝顔を眺めながらこれまでのいろんなことを思い出している作者。楽しかった四季が過ぎいつのまにかそろそろ冬、子供の健康を気遣う優しい句だと思いました。(橙)

8. 衣替えしはって社会人のつもりどすか 5 1・3
作者:Umbert Dolby
◎木曜星の人 ○うらら花、はたらきねこ、白川玄齋
・京都の人は手厳しいな。グサッときますね。すみませんでした。(木曜星の人)
・京都弁をおりこんだ作品ですが、ユニークな感じで面白いです。社会人になり急に大人びた君への忠告…みたいな。(うらら花)
・はんなりとした毒気が好きです。好きだけどつきあいたくはないなあ。洋服を着た犬猫に言っていると考えるとほほえましくもありますね。(はたらきねこ)
・就職活動になって変貌した同級生は多いです。(白川玄齋)

9. 尻がデカすぎて迷う 4 0・4
作者:mojolovich
○Umbert Dolby、allex、京介、元気な人
・了解。心ゆくまで悩んで欲しい。(Umbert Dolby
・これは電車の中の光景をイメージさせました。ひとり分のスペースが空いているのだけれども、自分のお尻が収まるのか否か迷って座ることを躊躇しているのでしょうか、面白い句です。(allex)
・お尻のサイズと相談して通れる道を探しているのか。かわいらしい。(京介)
・状況が全く掴めませんが、十中八九悪い方だと思いました。(元気な人)

10. 泣きべそかいて夕顔の花ざかり 11 3・5
作者:いつ藻
◎せば、もも、天坂寝覚 ○allex、mojolovich、うぐいす、玉虫、フロヤマ
・こんなこと言ってはなんだけど、良い景色だと思う。子供の頃を思い出した。(せば)
・夕顔の花言葉は「はかない恋」というのを思い出しました。夕顔の白い花が、優しい気持ちにさせてくれるのに、どこか切なさが残る句です。(もも)
・なんとなく調べてみたら、夕顔には「儚い恋」、「秘められた慕情」といった花言葉があるらしく、それを踏まえての句と読むと、景が質感を伴って立ち上がってきた。『泣きべそ』と言うからには恋に破れたのだろう。しかしその周りでは対照的に、夕顔が鮮やかに花開いている。その恋の儚さが念押しされているかのようで少し哀しいが、だからこそ美しいのだろう。(天坂寝覚)
・夕顔が満面の笑みで咲いている中、子供が泣きべそかいて歩いているのでしょうか。その対照的な光景が浮かんできて良い句だと思います。(allex)
・とても綺麗ですよね。泣いているのはなんとなく童女な感じ。(mojolovich)
・今日は泣いてても、明日はきっと笑顔の予感。(うぐいす)
・親に怒られた夏休みのある夕方を思い出しました。いいから早くおうちへお帰り。ご飯作ってお母さんは待ってるよ。(玉虫)
・友達とケンカでもしたのでしょうか。泣きべそかいて帰る家には、きれいな花、そして水を遣るやさしい母さん。なんて、少し想像を膨らませすぎたかもしれません。素敵な句です。(フロヤマ)

11. 十月のあなたの描く放物線 4 2・0
作者:タケウマ
◎いつ藻、可児
・どのような放物線でしょうか。コンパスで描いたようにはいかなそうな。(いつ藻)
・キャッチボールしているあなたの姿をずっと見つめていました。定型句だけどこれは良い恋愛俳句だと思いました。すてき!(可児)

12. 背中の糊は乾き私小説ようやく散りゆく 3 1・1
作者:ニレ
◎玉虫 ○田中並
・「終わる」ことの安堵感を美しい表現で伝えていると思いました。本好きにはぐっとくる直喩。文句なしの特選です。(玉虫)
・背中の糊は正直どういう状況なのか、私には分かりませんでしたが、私小説ようやく散りゆく、というところに詩を感じました。(田中並)

13. 何か良いことあるかと聞かれる恐怖 8 0・8
作者:白川玄齋
○さはらこあめ、畦道、木曜星の人、可児、うぐいす、京介、ロケッ子、みずいろばーど
・思わずあるあると言ってしまう。そうそう良いことなんてあるわきゃないし、聞く人も聞かれる人も同じ。上手いと思う。(さはらこあめ)
・こういうことを聞いてくるのはたいてい、貧乏神に疫病神、悪魔の下回り等である。そういったものに取り憑かれる恐怖を、恐怖という言葉を使わず表せたらもっと良かったと思う。(畦道)
・良いことなんかないですよ。ともいえませんし。いや、まあ。(木曜星の人)
・何も言わないでいてほしい、そっとしておいてほしいときもありますよね。(可児)
・憂鬱、を通り越して恐怖ですらある、と。こんなふうにしつこく聞いてくる人には、もしいいことがあっても教えたくないですね。(うぐいす)
・その話題の引き出しが空の状態。どよんとした空気になりそう。(京介)
・恐怖なんだなぁ。おもしろいなぁ。聞かれる立場じゃなくて、聞いてしまっていた立場の私としましては、ただただごめんなさい。(ロケッ子)
・懸命に隠しているはずが、かえってアピールする結果になってしまう可笑しさを感じました。隠すも隠さないも、『ある』からこその懸念でしょうから。(みずいろばーど)

14. 黒い雲をなめる月 5 1・3
作者:さはらこあめ
◎ニレ ○いつ藻、かもせり、玉虫
・この月は三日月でしょうか。なんかそんな気がします。今回の全ての句の中でこれがいちばん好きです。いさぎよくて、それでいて艶やかな触感まで伝わってきます。こんな一刀彫りのような句はすごく好きです。(ニレ)
・叢雲でしょうかね。黒い雲と相まって実際の光景が浮かぶようです。(いつ藻)
・満月の下部分だけ雲から顔を出してあたかも舌のように見える光景でしょうか。あいにくの天気でも少しでも月が顔を出してくれるとうれしいですね。(かもせり)
・お月様が舐められるんじゃなくて舐めるのがいいと思った。青白い美女としての月じゃなくて魔物みたいな月。いいいいです。大変好みです。(玉虫)

15. 声届かぬほど雨ずっと寄添う 3 0・3
作者:フロヤマ
○さはらこあめ、かもせり、橙
・「ほど」は無くても良い。伝わる。傘をささずにひとり雨の中に佇む絵が浮かぶ。雨が浄化してくれているようだ。(さはらこあめ)
・何もかも雨のせいにしていいと思います。(かもせり)
・土砂降りの雨が二人の会話の邪魔をするけれど、それでも寄り添っていればお互いの体温が伝わってくる。雨の冷たさ、寄り添うことの暖かさ、と温度の伝わる句でした。(橙)

16. さわらないでを醸しつつにじり寄り 1 0・1
作者:mekeke
○いつ藻
・これはにじり寄るしかないですよね。(笑)(いつ藻)

17. さよならも云わず独りで帰りきて葱を刻めりとりとめもなく 2 0・2
作者:みずいろばーど
○玉虫、ねぢこ
・短歌になっちゃってる気もしますがこの世界観が大好き。黙ってすっと帰って、帰宅後に繰り広げられるいつもの光景。こういうのに超弱いんだなぁオレっちは。(玉虫)
・辛い別れがあった。バックを置くと同時に包丁を握り、ただ葱を刻む。葱には平常があるから。けど後から後から溢れる涙が葱落ちる。(いつも某自由律会の代表に汚されている葱がこんなにも鮮やかに蘇りました。)(ねぢこ)

18. 父親のコスプレ写真が出てきた 6 0・6
作者:可児
○Umbert Dolby、こみおく、はたらきねこ、タケウマ、白川玄齋、ちよ
・父親も一個の人間であることに気づいている。悟りの一句。(Umbert Dolby
・出てきちゃったものはしかたない。(こみおく)
・故人となった父の遺品を整理していたら出てきたのですね。通夜を終え、改めてその死を受け容れようとしている家族のために、父が遺した粋なはからいだったのかもしれません。それにしてもあんなに厳格だった父がセーラーマーズだったとは。(はたらきねこ)
・それは、マズイ♪(タケウマ)
・こんな内容を投句してもよいのか…ひたすら爆笑です。(白川玄齋)
・面白いけど、いたたまれないこの感じが好きです。(ちよ)

19. きっと揺れている金木犀のした 11 1・9
作者:田中並
◎ちよ ○いつ藻、さはらこあめ、せば、もも、タケウマ、ニレ、白川玄齋、元気な人、橙
金木犀がうちの庭にあるんです。この時期溢れるこの香りから、オレンジ色の小さな花々が秋の風に揺さぶられている様子を想像して。その下で何があるのかをまた夢想する。素敵な句だなぁって。(ちよ)
金木犀の下に揺れているものとは下草でしょうか。それとも貴方の気持ちでしょうか。(いつ藻)
・匂いばかりに集中し金木犀そのものは見ず、といったところか。揺れているのはその人か金木犀か、想像をふくらませる。(さはらこあめ)
・きっと揺れているということは、そこに居ないのか?金木犀の下とは?揺れているのは作者かな。(せば)
・恋愛小説の一ページのような、とても綺麗な句ですね。(もも)
・「きっと」がうまいんだな、きっと♪(タケウマ)
・何かささやかな草花でしょうか。いせひでこさんが水彩画で描いたら素敵な一場面になるだろうなぁ、なんて感じながら句に浸らせていただきました。(ニレ)
・昔を思い出して懐かしい。(白川玄齋)
・「揺れている」が何に係るのか考えると楽しいですけど、「きっと」なので自分のことではないんでしょうね。選んでいる言葉のせいか、どこか切ないのがいいです。(元気な人)
・橙黄色の小さな花が甘い香りを漂わせている…金木犀が風と戯れているような、ふっと香って花の色がパッと映るいい句でした。(橙)

20. 母を母とは思わぬ息子でして 4 0・4
作者:せば
○畦道、こみおく、mojolovich、かもせり
・全く悪びれないのがいい。(畦道)
・そんな息子がかわいくてしょうがない母。(こみおく)
・刑事ドラマのワンシーンが出来そうで、面白いです。(mojolovich)
・一見ひどいことを言っているようですが、仲の良さが背景にあるような感じがします。(かもせり)

21. 研げば流れる米も留まる米も 3 0・3
作者:ねぢこ
○せば、ロケッ子、天坂寝覚
・何と無く比喩っぽい表現が気になった。(せば)
・流れる米と留まる米との違いは何なのだろう。ただ単に場所なのか、こちらの力の加減なのか。なんか奥深い意味が隠れているような気がして惹かれました。何も隠れていないとしても好き。(ロケッ子)
方丈記の一説がふと思い浮かんだ。無常はどこにでもあり、流し場にもあるのだなあ。(天坂寝覚)

22. 目印の鉄工所が消えた曲がれない 16 4・8
作者:ロケッ子
◎うらら花、かもせり、はたらきねこ、元気な人 ○こみおく、可児、mojolovich、せば、うぐいす、玉虫、フロヤマ、ねぢこ
・こんなことがよくありそうな感じで面白いです。目印がなくなり迷ってしまう。曲がるきっかけをなくして、遠くへそしてまた迷ってしまう。シーンが浮かびます。(うらら花)
海外移転でもしたのでしょうか。鉄工所という言葉にこれほどノスタルジーをかき立てられるとは思いませんでした。またひとつ昭和が遠くなっていく感じがします。(かもせり)
・方向音痴としてもかわいい。無くなった鉄工所に人生の悲哀もある。経験に照らせば、きっと目的地は愛する人の家なのでしょう。勇気を振り絞ってそこへ向かっている。しかしその勇気は些細なことで挫けてしまう。本当は道なんてわかっているのに。通い慣れた道なのに。目印が無くなったことを言い訳にして辿り着かないでいる。鉄工所があったころは付き合っていたのかもしれません。あれからどれだけの時が過ぎたのか。失われた鉄工所が彼女の愛を象徴しているように思えて、結局逢えずに帰るのです。(はたらきねこ)
・勝手に目印にしてたことなんてまるで意に介さずに消えてしまうのですよね。ただ消えたことに気づけるなら曲がれますよね、多分。そこが面白かった。あと鉄工所を目印にしていたのがどこか良かったです。(元気な人)
・鉄工所が閉鎖されたことにはやむをえない事情があったろう。でもがんばってほしかった。こんな理由で。(こみおく)
・昔住んでいた街を車で通りかかったら、すっかり様相が変わっていて道に迷ってしまった。ちょっと寂しいような、少し不安な光景を思い浮かべました。(可児)
・神経質か!っていう。目印の鉄工所ってなんか好きです。(mojolovich)
・時は流れて、色々変わっていくのだな。(せば)
・最近、うちの近くの病院が取り壊されて、まさにこの句の感覚です。(うぐいす)
・久しぶりで巡ってみた散歩道、いきなり更地が現れててビックリしたりしますよね。普通の場所にも刻一刻と時間は流れている。変化は止められない。いいいいです。(玉虫)
・いつも目印にしていた建物が急に消えてしまうこと。あります。行きなれた道なのに、急に知らない道のように思えたりも。町工場が次々と消えゆくこの時代。曲がれない角が増えるばかりです。哀愁の句ですね。(フロヤマ)
・当たり前にそこにあると思っていたものが、不意に無くなる虚しさ。思いがけず自分はそれに頼っていたのだと知る。(ねぢこ)

23. もう消えたアザの話まだ続くのか 6 0・6
作者:うぐいす
○畦道、木曜星の人、allex、うらら花、京介、はたらきねこ
・何度も聞いた、長い話。しかも「その話、前もしたよ」と言いづらい関係。そのもどかしさを一句に仕立てた。簡潔ながら味わい深い。(畦道)
・とくに子供のころのアザは成長につれて薄くなって、いつの間にか分からなくなってしまいますからね。体だけじゃなく。(木曜星の人)
・心の呟きですね。一旦解決したはずの話を蒸し返して、また話を始めている。「まだ...その話...」って心の中で呟いているのでしょうか、面白い句だと思います。(allex)
・くどく話をする人がいる。それを端的に表しているかなとおもいました。(うらら花)
・話に飽きたウンザリ感がわかる。(京介)
・うんざりした感じがよく出ています。結論を急ぐ男性脳と今この時を共有しようとする女性脳の違いとか言うと怒られるでしょうか。(はたらきねこ)(はたらきねこ)

24. 月は喰われたとこどもには教える 8 1・6
作者:天坂寝覚
◎田中並 ○allex、mojolovich、もも、京介、ロケッ子、はたらきねこ
・今日は名月だからと子供と外に出たら、曇り空であった。子供には月は食べられたんだよと伝えた。なんともロマンチックで、またストーリーのある句だと思いました。(田中並)
・まだ幼い子供から、月の満ち欠けについて尋ねられたのでしょうか。論理的に話してもまだ理解する筈もなく、あの漫画のように喰われたということで説明したのでしょう。懐かしく面白い句だと思います。(allex)
・見えなかったんでしょうか。月蝕でしょうか。ともかく、大人の汚い部分丸出しな感じが素敵。(mojolovich)
・今年の十五夜は、台風でした。きっと、月見団子やすすきを飾って、まあるいお月様を楽しみにしてたんでしょうね。(もも)
・こどもの「誰が食べたの?」ととんでもなく大きななにかが月を食べたことを想像するかも。こどもは恐怖を感じるのかワクワクするのか。(京介)
・面倒くさいから? それが一番わかりやすいから? 子どもをからかいたいから? 本当のところはどうでもいいと思っているから? 優しいような冷たいような、そんな句にはまってしまいました。(ロケッ子)
・親子関係かくあるべしですね。本当のことを知らせるよりも(それは科学の先生に任せて)、世界は不思議で溢れていることを教えてあげるのが子供の幸福につながるように思います。(はたらきねこ)

25. 宇宙と心中する
作者:京介

26. 部品を運ぶ私も部品となって 9 0・9
作者:畦道
○木曜星の人、可児、もも、うらら花、かもせり、ロケッ子、みずいろばーど、ニレ、ちよ
・うまいですね。(木曜星の人)
・アナタモ機械。ワタシモ機械。ようこそマシーンへ。(可児)
・あー、わかるわかる!部品という言葉が、無機質な感じがして好きです。(もも)
・人生の歯車となって働く縮図みたいなものを感じました。(うらら花)
・歯車の一でしかない自分に気づいたときの切なさ。ただ「となって」の部分が気になります。その次にある物語は何なのだろう。(かもせり)
・一瞬にして、人間が無機質化。でも、その方が仕事しやすいかもしれませんね。何も考えず、ただ淡々と部品を運ぶ。人間臭さを出すために、時々お昼ご飯のこととか考えたりもしてください。(ロケッ子)
・理屈ではなく、まず共感を覚えた作品でした。わたし達は常に、己がすべての世界と一部品に過ぎない世界とを行き来しているのだと思います。(みずいろばーど)
・けれど心の中までは部品になっちゃいない。それが大事ですよね。(ニレ)
・すべては歯車なんですよね。(ちよ)

27. 月がきれいだ土鍋に蓋がない 19 4・11
作者:こみおく
◎mekeke、mojolovich、みずいろばーど、フロヤマ ○いつ藻、さはらこあめ、田中並、うぐいす、かもせり、玉虫、京介、タケウマ、ニレ、元気な人、ねぢこ
漱石が記した愛の言葉を言う相手は私にはいない。「割れ鍋に綴じ蓋」というがそんな蓋が見当たらない。土鍋で炊いたごはんが食べたいです。ああ、でも蓋がなきゃ炊けない。アルミホイルで何とかならないものか。ああ、これも蓋か…。…蓋なくても炊けるかな。(mekeke)
・月が綺麗夜に、土鍋の蓋がなかったらどんなに絶望的だろう。耐えられない!日常の亀裂に耐えらないかもしれない!という飛躍が好きです。(mojolovich)
・粗野な感じの表現だけれど、きっと月は土鍋に張った水に映っているのだと思うのです。そうして月を愛でている心に、情をたしなむ雅を感じました。(みずいろばーど)
・月と土鍋の関連性について、想像を大いに働かせました。おそらく蓋は団子をのせるのに使っているのではないでしょうか。「アンタ! 土鍋の蓋、どこへやったのよ!」「ああ? ああ、今夜はお月見だから団子のせるのに使ったんだよ」「何、悠長なこと言ってんのよ! それじゃあ、お鍋ができないじゃないの!」「別にいいだろ? 蓋が無くたって鍋はできらあ。それより、お前もこっちきてみろよ。ホラ、きれいなお月さんだろ?」なんて、昭和の初め頃には、こんな夫婦もいたんじゃないかと思い巡らせてしましました。失礼しました。(フロヤマ)
・名月と土鍋の蓋との対比が面白いですね。土鍋に蓋をするのは素敵な伴侶といったところでしょうか。(いつ藻)
・花より団子だね。思わずくすっとする。蓋をするということは作っている段階かな?月が綺麗なのはわかるがそれより早く食べたいの、が伝わってくる。上手い表現だ。(さはらこあめ)
・欠落感が蓋と具体的に表現されている。欠落間と月はマッチングが良い。綺麗だと思いました。(田中並)
・まん丸お月様に、まん丸土鍋。蓋がないのもまた一興。何かが満たされれば何かが欠けるんだなあ。(うぐいす)
・蓋なんて何かを代用すれば良いじゃないですか。月がきれいなら。(かもせり)
・何かと足りないもののある日常でも、月はキレイだし鍋を一緒に食べる人もいる。大丈夫、やっていける。そんな気持ちになる名句。(玉虫)
・蓋がない土鍋の中には月が映っているのだろう。土鍋の中の月もきれいなのだろう。(京介)
・特選にしようか悩みました。きれいな月と蓋のない土鍋の取り合わせが秀逸。ただ、既視感がありました。どこかで拝見した気がするのですが…… 勘違いならば失礼。(タケウマ)
・これは満月でしょうか。鍋焼きうどんでも作ろうか、とふと顔を上げたら空に満月。それに対比される手元の土鍋。面白いですね。すごく好きです。(ニレ)
・月に見蕩れている場合じゃないですね。放哉の「素晴らしい乳房だ蚊がいる」を思い出しました。(元気な人)
・ジェットコースター並みの遠景から近景。女の古は三半規管が弱いので、かなりクラクラしました。ここまで飛ばされたの初めてです。(ねぢこ)

28. 何を食べても君はいない 14 4・6
作者:はたらきねこ
◎allex、こみおく、ロケッ子、橙 ○畦道、木曜星の人、うらら花、みずいろばーど、ニレ、天坂寝覚
・大切な人が本当にいないので美味しい筈の料理が美味しくないのか。それとも新しい彼女ができて作ってくれた料理に、忘れることのできない前の彼女の味を探しているのでしょうか。なんとも、その曖昧さが面白くて軽快で良い句だと思います。(allex)
・さみしい、さみしい、さみしい。大切な人がいなくなったことを受け入れられない空虚さが「何を食べても」という表現に集約されています。(こみおく)
・自分の過去の記憶がふっとよみがえって、じーんっときてしまいました。何を見ても君を思い出し、何をしていても君を思い出し。でも、いない。「食べても」をもってきたところがうまいですねぇ。(ロケッ子)
・大切な人を失くして、或いは二人は遠く離れていて、どんなに美味しいものを食べてもなんの味もしないただの変哲もない料理。大好きな人が傍に居てくれたらそれでいいのに、という気持ちが伝わってきました。(橙)
・孤独とは腹の減るものである。空しいなあ、味気ないなあと思いつつも、箸は進む。気がつくと二合は食べている。(畦道)
・そうなんです、そうなんですよね。(木曜星の人)
・せつなく、むなしい感じが伝わってきます。姿の見えない君のことを思い、砂をかむような味気ない世界観がよいです。(うらら花)
・当たり前のことだけれど、そこに疑問を抱くことにも納得してしまう不思議を感じました。同時に、共に食することが人間関係においてそれ以上の働きをする、その感覚に共感を覚えました。(みずいろばーど)
・美味しいか美味しくないか、ではなく、君が居るかどうか、ということなんですよね、家でのご飯の意味って。このことは私も今とても実感しています。(ニレ)
・「食べる」という行為は、生活に伴うあらゆる行為の中で何よりも感覚を使う。それだけ感覚をフルに使っている状態だから、『君』がいない、あるいは『君』との思い出がある食べ物を食べても何も思い出さなくなってしまったという事実を、他のいつにも増して強く感じるのだろう。そしてそれは食事の度に繰り返される。平易な言葉で簡潔に述べられているが故に、その喪失感の重さ大きさがより感じられる。(天坂寝覚)

29. 傘を差し出してくれる人の人生好きになる 6 1・4
作者:橙
◎白川玄齋 ○木曜星の人、mekeke、田中並、フロヤマ
・相手を好きになるきっかけですね。アピールの前の爽やかな一場面ですね。(白川玄齋)
・人生を好きになる。傘を差し出してくれるこの人って、どういう人生を送ってこうやさしさを私にくれているのだろう。こんな雨の中なのに。良いですね。(木曜星の人)
・単純なことで好きになってしまいます。とはいえなかなか周りで見かけることはないですが。(mekeke)
・甘い句ですが、人生そのものを好きになってくれることのきっかけが、一本の傘だったとは感慨深い。私も積極的に傘を貸したい。(田中並)
・折りたたみの傘を持ってくるのを忘れた時に限って、雨が降る。あります。そんな時に、傘を差し出してくれる人がいたら、その人はまさに救世主。心の底から感謝してしまうでしょう。もしも、それがタイプの女性なら、間違いなく恋に落ちてしまうに違いありません。胸キュンな句です。(フロヤマ)

30. くしゃみして酔い醒める 7 1・5
作者:allex
◎Umbert Dolby ○さはらこあめ、mekeke、こみおく、せば、ちよ
・大くしゃみ一発で現実に戻る。浮世の儚さよ。(Umbert Dolby
・外で寝ちゃったんだね。説明なしでも、酒呑んで悪酔いしたことが伝わる。上手い表現だが、「で?」というのが残る。(さはらこあめ)
・酔うのも一瞬、醒めるのも一瞬。さあ次ぎにいこう。(mekeke)
・朝と風邪と現実はいっぺんに訪れます。お大事に!(こみおく)
・そんなこともあろう。醒めた気分はどうだったのか気になる。(せば)
・これからの季節ありそうで。へーくしゅん…あー、ぶるぶるぶるwみたいな感じで、醒めちゃったけどしゃーないなぁて諦める。(ちよ)



(以下、元記事。)


ご参加いただきました皆様、どうもありがとうございました。1本目の句会に寄せられました全句を公開いたします。今回の参加人数は30人!! じっくり味わってじっくりお選びくださいませ。


選句・選評について

  • 選句場所

  ▼「生」→ http://ws.formzu.net/fgen/S98421567/
  ▼「旅」→ http://ws.formzu.net/fgen/S8249025/
  ▼「雑詠」→ http://ws.formzu.net/fgen/S80408589/

  • 期間

  10月3日(水)0:00〜10月7日(日)23:59

  • 選句内容

 ○それぞれのお題ごとに、「特選」1、「正選」5を選ぶ。
  (「自分の句以外」なので、各29句の中から選ぶことになります)
  選句方法の詳細は 「千本ノック」とは をご参照ください。


 ○選句の際に、選評を書き込む。
 (選句外評は、Twitter上でお願いしますー)

指定語「生」

1. 生死をぶつかけてゐる

2. 太陽に会えないまま生きる

3. とりあえず呼ばわりは罰ゲームだよラブ生中

4. 死んだ夜の生ビール美味しい

5. 生がいちばんとは言えない

6. 生乾きの匂いがしても好きだった

7. 先っちょに何か生えてきた

8. 生キャラメルの爪痕ある地下街

9. 晴天に体操服は生乾き

10. 親不孝も生きてる証と笑う人

11. 空に生ビールが浮かぶああ気持ちの良い朝だ

12. 早鐘のようにこころ打つ生

13. 台風耐えている木が生きている

14. 生まれてくる子よ腹を蹴りなさい

15. 生ひて道草の踏まれてばかり

16. 先生は知らない夢を見ている

17. 生簀の魚が会計を見ている

18. 死ぬまでもない一瞬一瞬を生きている

19. 女装趣味高じて生贄にされる

20. これで四度目の一生のお願い

21. 生がいいに決まってる

22. リアル人生ゲーム貧乏農場になまあたたかい風吹く

23. 生くか還るか夢のなか我を呼びたる声懐かしき

24. おまえのこと生ハムメロンくらい許せない

25. 赤く大きく生命と書いたビルが暮れる

26. たっぷんたっぷん生コンたっぷん

27. 知らず生えてきた親知らず生まれ生きる

28. 生々しさばかりが浮かぶ湯船だ

29. 転校生に逢いたくてセピア色の教室さがす

30. ひとりで生きてるわけじゃなかった窓の月


「旅」しばり

1. ひなびた宿のズッキーニの天ぷら

2. 新幹線に忘れたワインの見る夢

3. 湯けむり紅葉づくしの今しかない

4. よく居た広場に自機と僕の影ある

5. 思い出入れる隙間空けておく

6. フェルメールは紅葉も青だろうか

7. 遠く来た街を明日は出て行く

8. どこまでも追いかけてくる影ひとり連れて行く

9. 過ぎていくのは車窓の景色ばかり

10. あの街へは行くまい君を想い出す

11. 結局家でたべる駅弁

12. 瞼を合わせ祈る独りで旅立った臆病な君の

13. 旅立つ君の袖離せないでいる

14. 偶然を装ってふるさと

15. ただ在りし地平線と対峙して敗北を知るホモ・サピエンス

16. 落ちつきないおばあちゃんの冷凍みかん

17. 霧晴れて湖畔の傷ごころ

18. かき捨てた恥が写真で残る

19. 移動範囲方寸四方の大冒険

20. 誰が置きし自然薯やろか無人

21. 捨てる筈の思い出が鞄からはみ出している

22. 床の間を片づけてもう一人ねむる

23. かなかなを探してるんだ

24. 村ごと遠くへ転移する

25. 指令その4 新京極で木刀を買え

26. コロとふたり旅家出なんかじゃないのに

27. 子規の空はわたしの空にもある

28. 乗り物酔いの耳にバスガイドの唄

29. 国境を舐めながら来た

30. みんな疲れてバスは西行



雑詠

1. 富士額のわたしの富士を見にきて

2. 王子様さるすべりにのぼる

3. 洒落た料理褒める戸にカレーの匂いする

4. 台風予報と犬の寝言聞く日曜の午後だ

5. ビンゴだが黙っていよう

6. おなら我慢してないで結婚しよう

7. 眠る子の鼻先冷たい冬の入口

8. 衣替えしはって社会人のつもりどすか

9. 尻がデカすぎて迷う

10. 泣きべそかいて夕顔の花ざかり

11. 十月のあなたの描く放物線

12. 背中の糊は乾き私小説ようやく散りゆく

13. 何か良いことあるかと聞かれる恐怖

14. 黒い雲をなめる月

15. 声届かぬほど雨ずっと寄添う

16. さわらないでを醸しつつにじり寄り

17. さよならも云わず独りで帰りきて葱を刻めりとりとめもなく

18. 父親のコスプレ写真が出てきた

19. きっと揺れている金木犀のした

20. 母を母とは思わぬ息子でして

21. 研げば流れる米も留まる米も

22. 目印の鉄工所が消えた曲がれない

23. もう消えたアザの話まだ続くのか

24. 月は喰われたとこどもには教える

25. 宇宙と心中する

26. 部品を運ぶ私も部品となって

27. 月がきれいだ土鍋に蓋がない

28. 何を食べても君はいない

29. 傘を差し出してくれる人の人生好きになる

30. くしゃみして酔い醒める