【結果】指定語「生」

※次のような並びで掲載しています。
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 句  獲得点 特選数・正選数
 作者
 ◎特選に選んだ人 ○正選に選んだ人
 選評

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1. 生死をぶつかけてゐる 8 2・4
作者:mojolovich(@_mojolovich)
◎みずいろばーど、玉虫 ○さはらこあめ、Umbert Dolby、タケウマ、天坂寝覚
・言葉の過不足を感じませんでした。古語の魅力を感じました。『人生』という表現しきれないものを正確に言い放った印象を受けました。(みずいろばーど)
・文句なしに。勢いがある。男らしい。そして深い。(玉虫)
・「を」がぴんとこない。「に」がいいのではないか。しかし、歯を食いしばりこの世に居ようという思いが見える。(さはらこあめ)
・直球。(Umbert Dolby
・逆選があればこの句ですね。「生死」は同音異義語に掛けているのでしょう。その同音異義語も「生死」を内包しているのがミソなんだけど、一読下品だよなあと思うかどうか試されている気がします。悪い意味でやらしい句。その手にのりたくないなあと思いつつ、言っておきたくて選んじゃったねw(タケウマ)
・ぶっかける対象が何なのか、そもそも生死をぶっかけるとはどういう行為を指すのか分からない。分からないけれど「それらは皆些細なことだ」とすら思わされる力を感じた。とは言えこの句は詩性があるどころかまるっきり詩だと思ったので、正選とした。(天坂寝覚)

2. 太陽に会えないまま生きる 7 1・5
作者:橙(@x_orangegerbera)
◎かもせり ○いつ藻、さはらこあめ、mojolovich、ニレ、ねぢこ
・最初家畜の話かと思ったのですが、考えてみれば自分も晴れているにもかかわらず太陽に会わずに過ごすことだってあるし、改めて意識しないと気がつかないことだなぁと思いました。(かもせり)
・入院している方でしょうか、あるいは、叶わない望みを背負っている孤独の身を感じます。(いつ藻)
・テーマは良いがもうひとつ何かがほしい。このままだと「ああそうですか俳句」になる。それでも生きてんだってのがほしい。青空を大きくわしづかみしたくても出来ず、床に臥しながら布団を枕をわしづかむ様子が浮かぶ。(さはらこあめ)
・閉じ込められてる!ってとっさに思いました。(mojolovich)
・一般的には、比喩表現になっているほうが素晴らしくて、文字通りそのままの意味のほうが薄っぺらい、なんて評価されがちだと思うのですが、この句に関しては私は逆の印象を受けました。人生を照らす太陽のような存在に自分は出逢えない、という意味ならば薄っぺらく、そうでなくただ文字通り空の太陽を目にしない生活、という意味ならば素晴らしい、という感じです。あくまで自分の印象です。その方がもっと背景やらその奥の意味合いを様々に想像できるからです。なので私はそのまま「太陽を目にしない生活」という意味の句だと受け取って、あぁ、素晴らしいなぁ、と感慨に浸っているのです。(ニレ)
・素直に切なかった。それでも生きて欲しいと思う。「会えなくても」と強めでもいいかな?と思ったが、やっぱり嘘臭くなる。「会えないまま」がこの方のリアルな気持ちだろう。(ねぢこ)

3. とりあえず呼ばわりは罰ゲームだよラブ生中
作者:玉虫(@OGA0531)

4. 死んだ夜の生ビール美味しい 8 1・6
作者:元気な人(@no_fineman)
◎天坂寝覚 ○田中並、mojolovich、うぐいす、かもせり、ロケッ子、橙
・状況の詳細は分からないが、人の業(のようなもの)がなんの衒いもなく出た句だと思う。(天坂寝覚)
・死んだ夜の、から一転して、明るく、生ビール美味しいに着地する。そのさっぱりとした、あっけらかんとした楽観こそが生ビールであると思いました。(田中並)
・「死んだ夜」ってかっこいいですし。それはどんな夜なのだろう?って色々想像しちゃいました。(mojolovich)
・死んでなお生ビールを飲んでいるのか?と初めは思いましたが、ふと、お葬式のあと亡くなった人を偲びながら飲んでいるのかな、とイメージしました。(うぐいす)
・死んだように疲れた夜という意味かもしれませんが、誰かが死んだ夜という解釈で読みました。知人が亡くなったという報に接し悔しくて飲んだビールが、これまた悔しいほどに美味かったという経験を思い出しました。(かもせり)
・誰かのお通夜かなんかで飲んでるのではなく、何となく自分が死んだ夜っぽい雰囲気がムンムン。仕事の後のビールっぽく、人生を終えた後の冷たい生ビール。あー、さぞかしおいしいだろうなぁ。来世に酒が残らないようほどほどに。(ロケッ子)
・これまでの自分をリセットして新たな気持ちで生きていくことを決意した夜のビール、美味しそうです。(橙)

5. 生がいちばんとは言えない 2 0・2
作者:mekeke(@mekekeke)
○さはらこあめ、可児
・もうひとつ何かがほしい。このままだと「ああそうですか俳句」だ。しかし、言おうとしていることは、思わずしみじみ共感を得る。(さはらこあめ)
・ラガーの苦さが欲しくなる夜もあるんですよね。(可児)

6. 生乾きの匂いがしても好きだった 7 0・7
作者:田中並(@tanaka_nami)
○いつ藻、さはらこあめ、畦道、フロヤマ、ロケッ子、はたらきねこ、ニレ
・恋をすると欠点までよく思える。過去形になっているので、現在を想像する楽しみがありますね。(いつ藻)
・もうひとつ何かがほしい。なるほどってやつが。大切な人が使っていた「物」に対してか、あるいは、その人自身かどちらだろう。「好き」といっている人物が、生乾きのものをぎゅっと抱き締めた憂い顔が浮かぶ。(さはらこあめ)
・欠点も好ましく思えるなら、その気持ちは本物。しかし……『だった』と過去形なのがこの句の肝だ。(畦道)
・あばたも笑窪、恋は盲目という言葉もありますね。恋している時の気持ちをよく表わしており、さらには「匂い」という単語が、何だか懐かしい気持ちにさせてくれます。(フロヤマ)
・生乾きの匂いがしても好きだったなんて、これはもうよっぽど惚れこんでいたのですねぇ。嫌いになれたらどんなにラクだったか、といったような気持ちもぼんやり。(ロケッ子)
・過去形なので、今はきっと許せないのでしょう。幼い恋は盲目。年経た恋は不純。加齢臭や生乾きの臭いがしても好きでいられる。それは若さの特権です。命短し恋せよ乙女。(はたらきねこ)
・そうだよなぁ…、と自分の思い出と照らし合わせながら句を反芻することしばし。私の場合はまたちょっと違っていて、生乾きよりももっとヘヴィーで生々しい記憶なのですが、それでもやっぱり「好きだった」の方が強いのです。「好き」は強いなぁ、と改めて気づかされた句でした。(ニレ)

7. 先っちょに何か生えてきた 13 2・9
作者:可児(@kanimaster)
◎Umbert Dolby、タケウマ ○こみおく、もも、畦道、うぐいす、うらら花、京介、ロケッ子、ちよ、ねぢこ
・「何か」とは何か?「先っちょ」とは何の先か?気にならずにはおれない。こみ上げる面白さがある。(Umbert Dolby
・やっぱり、不思議な句にひかれるんですよね。なにが生えてきたのか、なんの先っちょなのか、考えたってわかんないけど、それこれ想像するのが楽しいよね。ボクの妄想は、頭の先っちょに花とかが生えるといいかなと。パンジーとかね♪(タケウマ)
・やられた!という感じです。「しかも先っちょに!」としか言いようがありません。(こみおく)
・意味深すぎる。好きです。(もも)
・とにかく病院へ!(畦道)
・何が?そしてどこに?何もわからないけど、笑えました。毛にしろ歯にしろ、「生える」って、どこかしら滑稽ですね。(うぐいす)
・何に生えてるのかわからないけど得体の知れない奇妙な感じが伝わってきて興味をそそられます。(うらら花)
・なんやねん? なんの先っちょやねん?!なにに何が生えてきてんねん! ツッコミがいがあります。(京介)
・「先っちょ」の「ちょ」がすべてを許すに値する可愛さを醸し出していますねぇ。いや、別に許せない部分は何もないのだけれども。これが「ぽ」だったら、どうだろう。「先っぽに何か生えてきた」 …… うん、やっぱり「ちょ」がいい。(ロケッ子)
・どこへ!?なにが!?想像すればするほど楽しい。にんまりしながら。先っぽではなく、先っちょってのがまたいいなぁ。(ちよ)
・「先っちょ」に「何か」という曖昧な形が「生」という感じがします。改めて考えると生き物が育つ時はいつも先っちょに何か生えますね。(ねぢこ)

8. 生キャラメルの爪痕ある地下街 4 0・4
作者:かもせり(@kamoseri)
○木曜星の人、mekeke、みずいろばーど、元気な人
・地下街がもうなんとなく悲しい響きですね。地面の中に牧場の絵が描かれた生キャラメル。(木曜星の人)
・それなりに、ぬる〜くやってこれていた地下街に束の間生キャラメルの熱気が入って来て、そしてまたさーっと人波が退いた地下街は、相変わらず前と同じぬるさのはずなのに、何だか以前より寒々しく感じます。そんなことを考えました。(mekeke)
・『生(なま)』を強烈に感じました。薄暗闇に残るネイルの艶やかさ、それを見る視線の冷ややかさ。(みずいろばーど)
・地下街と聞いて僕は古びれた薄暗い通りを想像したのですが、生キャラメルの爪痕なんですよね。キャラメルではなく、生キャラメルの。生キャラメルと書かれた錆びれた看板を爪痕と言っているとも考えられますが。何れにせよ生が抜群に生きた句でした。(元気な人)

9. 晴天に体操服は生乾き 4 0・4
作者:ねぢこ(@NMM0704)
○もも、allex、みずいろばーど、ちよ
・学校で、なにか悲しいことがあったのかを思わせるような句。すっきりしない感じが良いです。(もも)
・晴天続きの中で体操服の洗濯する機会が無くて、忙しい朝に洗濯機を回してきたのでしょうか。何か懐かしさを感じる面白い句だと思います。(allex)
・幼さに近い若さ、懐かしい青春。『生乾き』の湿っぽさが『晴天』『体操服』のカラッとした爽やかさによって嫌みのないアクセントになっているように感じました。(みずいろばーど)
・そうそう。体操服って妙に厚いから。でも洗濯するにつれ段々と薄くなるんですよね。人間と同じかなぁって思ってみたり。しおしおになっても、中味は濃くなりたいものです。(ちよ)

10. 親不孝も生きてる証と笑う人 8 0・8
作者:ロケッ子(@5_rockets)
○こみおく、mekeke、可児、うぐいす、玉虫、京介、はたらきねこ、ちよ
・どんな子どもでも、元気で生きているだけで親孝行。不孝を自覚しながらも上手に生きることができないその人が、笑っているところがとてもいいです。(こみおく)
・親からすると元気に生まれて、生きてるだけでとりあえず孝行してると言えるのかなぁと思いました。どうなんだろう。親に聞いてみるか、いやいやそんな。だからって何してもいい訳じゃないですけど、この人がどれだけのことを経験し考えこう笑ったのか気になるところです。こういうことをさらっと言っちゃう人って何か惹かれます。(mekeke)
・親不孝を笑って許されるのは、親の特権です。(可児)
・母がよく言う「何をしてても、あんたらが生きてればいい」という言葉を思い出しました。(うぐいす)
・親って有難いですね…そう、生きてるだけでいいんですよ。(玉虫)
・ホントは親孝行してやりたいのかもしれない切ない。(京介)
・親は死ぬまで親。「誰か言はん寸草の心 三春の暉りに報い得んと(遊子吟 孟郊)」親の愛情を思えば、孝の気持などわずかばかりのものなのでしょう。(はたらきねこ)
・そんな人が嫌いで好きです。(ちよ)

11. 空に生ビールが浮かぶああ気持ちの良い朝だ 1 0・1
作者:もも(@Maomonta)
○白川玄齋
・生ビールがもう一つの句より美味しそうだ。(白川玄齋)

12. 早鐘のようにこころ打つ生 1 0・1
作者:うらら花(@nonoka57)
○フロヤマ
・心臓が高鳴る時と言えば、運動の後や恐怖を覚えた時。そして、やはり恋している時。この句の場合はどれなのでしょうか。「こころ」とひらがな表記とあることから、恋の瞬間であると私は解釈しました。いずれにせよ「生きている」という確かな実感と、その中に喜びさえも感じさせます。(フロヤマ)

13. 台風耐えている木が生きている 6 1・4
作者:せば(@BkltTd)
◎田中並 ○こみおく、畦道、かもせり、元気な人
・常々、木の生命に懐疑的だった筆者が、暴風にさらされ耐えている木に、はっとその生命を感じ取った、その一瞬の切り取り方が良いと思いました。(田中並)
・台風と「戦う」のではなく「耐えている」としたころに、黙ってそこに立っている木の生き方に寄り添う作者の気持ちが現れています。高田松原の奇跡の一本松を思い出しました。(こみおく)
・厳しい自然のなかにこそ、生の実感はある。(畦道)
・以前、自宅の前にあった大木が台風で倒れたことがありました。倒れた木を見て「生きていたんだなぁ」としみじみ思ったことを思い出しました。(かもせり)
・死を以って生を実感するってのはよくあることですよね。病気の時ほど普通を痛感したり。これもそんな感じなんだと思いますが、「台風耐えている」をもう少し遠い表現にしてもよかったかななんてと思います。(元気な人)

14. 生まれてくる子よ腹を蹴りなさい 18 3・12
作者:フロヤマ(@furoyama)
◎こみおく、せば、ロケッ子 ○いつ藻、もも、Umbert Dolby、田中並、みずいろばーど、うぐいす、京介、白川玄齋、元気な人、ねぢこ、天坂寝覚、橙
・元気に生まれて、元気に生きなさい。命令形の母の言葉に、とても強い「生の力」と「つながり」を感じます。(こみおく)
・これから生まれてくる命には敵わない。(せば)
・目にした瞬間、ゾクっときました。生まれる前から生きている。でも、生まれてこなければ生きられない。生きるために生まれる。力強くもあり優しくもあり、好きな句。胎動が唯一の通信手段だった日を懐かしく思い出しもして。(ロケッ子)
・命を身ごもった者の素直な気持ちがありのままで良いと思いました。(いつ藻)
・いろいろ考えてみましたが、この句は男性目線なのかもしれない。父親になることをなかなか実感できず、期待と不安でいっぱいの句なのかもしれません。(もも)
・剛速球。(Umbert Dolby
インパクトに圧倒された。特選にしても良かったのですが、この女性特有の共感に、私が男性としてたじろいだ気持ちにもなり、正選とさせていただきました。(田中並)
・言葉とは逆の意味を受ける面白さ。圧倒的な上から目線の言い回しなのに、果てしない愛情を感じました。(みずいろばーど)
・母性そのものですね。命の力強さを感じました。(うぐいす)
・生まれてくる子よ腹を蹴りなさい元気な子が生まれますように。(京介)
・誕生を待ちかねている感じが良いなと思う。(白川玄齋)
・教育のはじめですね。「腹を蹴りなさい」という言い方に尽きるのかなあと。瞬発力は一番でした(元気な人)
・「わぁー、この子蹴ったわー。」で無く「蹴りなさい」と命令形なのが良い。力強い愛と美しさを感じる。(ねぢこ)
・母性と一括りにしがちなところから感情を一つ、丁寧に掬い取ったと思う。そして素晴らしいリアリティ。(天坂寝覚)
・元気な赤ちゃんが生まれますように。元気に育ってくれますように。生まれてきたらどんな名前をつけよう、どんな子供に育ってくれるだろう…未来を想像して笑顔になれる句だと思いました。(橙)

15. 生ひて道草の踏まれてばかり 6 0・6
作者:いつ藻(@nadesiko6)
○Umbert Dolby、フロヤマ、みずいろばーど、うらら花、はたらきねこ、ちよ
・打ちごろの球ではある。(Umbert Dolby
・道行く人に踏まれ続ける路傍の草に、強さ健気さを感じさせる句です。雑草ではなく道草としたところに、回り道ばかりの生き方をしている私自身に重なり合い、なんだか励まされているような気がしました。(フロヤマ)
・分かりやすい、です。句の中にスッと入り込める素直さに好感を受けました。(みずいろばーど)
・道のほとりの草は 無造作に踏まれることも多い。でもそれは、草も承知してかあることなのかもしれないですね。(うらら花)
・踏まれるために生きているわけではないし、それで価値がないわけでもない。そこに何の憐憫も、共感すら必要ではない。ただ、今ここにある草を、今ここにいる私が見ている。末期の眼が感じられる句です。(はたらきねこ)
・踏まれてばかり。生まれた意味を考えてしまう一方で、それでも生きていく。そんな粘着質な生き方をしたいな、と思いました。(ちよ)

16. 先生は知らない夢を見ている 11 0・11
作者:天坂寝覚(@sin_kaku)
○もも、木曜星の人、allex、せば、可児、フロヤマ、みずいろばーど、玉虫、はたらきねこ、ニレ、元気な人
・なんとなく理解できます。自分の将来の夢を、先生に言うのは恥ずかしかったなあ…なんて昔を思い出しました。(もも)
・先生は何でも知っているし丁寧に教えてくれるけれど、私の夢の中までは知らないだろうと。メルヘンチックですね。(木曜星の人)
・夢を見ているのは先生なのか、それとも生徒なのか、ちょっと考えさせられる面白い句だと思います。きっと、生徒には未だ分からない夢を見ているのでしょう。 それとも...。(allex)
・ちょっと淫らな想像をしてしまった…(せば)
・将来はミュージシャンになりたいなんて、先生に言えないもんな。(可児)
・「先生には言っていない夢」と初めは思いましたが、「生徒には教えられない先生の夢」とも捉えられることに気付きました。さらには後者の方で、視点が生徒目線ですと「大人への憧れ」を描いた句とも取れます。読む人によって様々に表情を変える句のように感じました。(フロヤマ)
・夢を見ているのは筆者のようで、もしかしたら先生のほうかもしれない。。どのように捉えるかによって、自分が無意識にとっているスタンスに気付ける楽しさを感じました。(みずいろばーど)
・進路指導なんてねぇ、意味ねぇですよね。本当になりたいものはどの大学行けばなれるってもんでもなし。自分にも覚えがあります。このつっぱった気持ち、いつまでも持っててほしい。(玉虫)
・学校という特殊な世界で生きている先生。その煩わしい価値観の押しつけを軽やかに受け流して生きていくしなやかさを感じました。(はたらきねこ)
・いちばん大事な夢というのは進路指導とかいう枠組みの外側にいつもあったような気がします。(ニレ)
・先生が知る由もない夢を生徒の誰かが見ている句なのか。逆に、生徒の知る由もない夢を先生が実は抱いているのか。何通りにも取れる句ですが、僕は授業中に先生の目を盗んで寝るのが得意でした。(元気な人)

17. 生簀の魚が会計を見ている 18 4・10
作者:木曜星の人(@thurstsr)
◎フロヤマ、はたらきねこ、元気な人、畦道 ○いつ藻、Umbert Dolby、allex、せば、うぐいす、京介、ロケッ子、ちよ、白川玄齋、ねぢこ
・この句は、はじめはスルーしてしたのですが、後からだいぶ想像力を掻き立てられ、結局は特選とさせていただきました。お寿司屋さんでしょうか。囚われの身である魚が会計に立つ私を見ている。お金を払うという現実的な場面でもかかわらず、その魚の目が私は気になる。物言いたげな魚の目。それでも腐った魚の目ではない。この魚はまだ生きているのだ。これは私自身ではないだろうか。社会に囚われつつも、それでもなお、もがき生き続けているのだ。いつか捌かれるその日まで。そんなことを考えながら、私は店を後にすることにした。「あ、課長。会計、終わりましたよ。次はお姉ちゃんの店、行っちゃいますか?」なんて、失礼いたしました。(フロヤマ)
・魚にとっては、一瞬にして生死が交錯する瞬間。あるいは仲間の死に対する対価を眺めているのか。そして気付く。今満腹になった自分たちにとっても実は常に死が傍にあることを。そう考えれば、我々人間だって生簀の魚と変わらない。次は誰が殺されて喰われるのか。それは魚にはわからない。もっと大きな意志によって決められるだけ。メメント・モリ。(はたらきねこ)
・好きです。自意識過剰は生き辛いですね。せきしろさんの「魚はこっちを見ていない」を思い出しました。(元気な人)
鮮魚店の一こまでしょうか。実際には当人が魚のことを哀れんでいるのでしょうね。(いつ藻)
・レジに現れた金額は、己の命の値段だ。そう思うと急に、恐ろしくなった。(畦道)
・意表をつくチェンジアップ。(Umbert Dolby
・すし屋とか海鮮料理屋なのでしょうか、会計をしてる最中に生簀の魚がその会計を済ませる一部始終を見ているのでしょう。それとも、ひとつの会計しか分からないローカル出身の上司を揶揄しているのでしょうか。そんな解釈ができて面白い句だと思います。(allex)
・よくぞ見ていた。拍手喝采です!(せば)
・魚のつぶやきが聞こえてきそう。「わしら、なんぼで食われてるんやろか・・・」(うぐいす)
・生簀仲間を食べてしまった者を敵だと思って見ているのでしょうか。ぬめっとした恐怖を感じました。(京介)
・おもしろいようで怖い句。そして、怖いけれどもおもしろい句。値段を見ているのか、払っている人間を見ているのか。魚眼レンズにうつった私、のっぺり顔になってないか心配。(ロケッ子)
・俺は食わんのかって、恨めしい眼をしているのか。食われんかったと安堵しているのか、はたまた次は俺かと怯えているのか。いろんな眼を想像しておりました。(ちよ)
・生け簀の魚はどういう気持ちで会計を見ているかが面白い。(白川玄齋)
・「ねぇ、俺の姉さんうまった?弟いくらだった?」と聞いているのだろうか。生簀の魚からの目線というのは類想が無い。(ねぢこ)

18. 死ぬまでもない一瞬一瞬を生きている 4 1・2
作者:白川玄齋(@syou_gensai)
◎ちよ ○allex、玉虫
・日常の細々とした苛立ち、積りに積もった鬱屈、叫ばずにはいられない憤り…でもまぁ、死ぬまでもないやんね。って。うんうん。時々、瞬いていようって思いました。(ちよ)
・すれすれの人生なのでしょうか。死も考えているけれど、そのすれすれを懸命に生きているのですね。「死ぬまでもない」が面白い表現だと思います。(allex)
・一瞬一瞬を重ねてやがて遠くへ。死ぬまでもない、この決意に敬意。(玉虫)

19. 女装趣味高じて生贄にされる 3 0・3
作者:京介(@princekyo)
○木曜星の人、mojolovich、かもせり
・笑ってしまいました。けど笑い事じゃないですね。男の娘やオネェ流行への風刺でもありますね。(木曜星の人)
・「高じ」すぎだろ!って突っ込みが出ました。(mojolovich)
・生贄ってなに?妙に気になる。(かもせり)

20. これで四度目の一生のお願い 5 0・5
作者:こみおく(@ayukoyama)
○mekeke、うらら花、タケウマ、白川玄齋、橙
・人間の一生は一度しかないけれど、お願いしなきゃならない状況は何度も訪れる…。お願いするごとに人生を小さくリセットしてると都合良く考えてまた新たにお願いします。お願いされる側もこの人のお願いならつい聞いちゃうんでしょうか。四度目ですし。(mekeke)
・お願いはその度に一生に一度な世界で大切なのだ。だから四回にもなってしまう、そんな気持ちがわかります。(うらら花)
・四度目がいいよね♪ 三度目まではありそうだし、五度目は多すぎ。うん、四度目がいいんだなあ♪(タケウマ)
・四度で終わらなそうですね。(白川玄齋)
・四度目でも、その時その時で一生のお願いなんです。気持ちわかります。(橙)

21. 生がいいに決まってる 5 2・1
作者:ちよ(@ChiyoMie)
◎mekeke、田中並 ○うらら花
・相反する句がある!面白い!と思わず吹き出して笑いました。そうですか。私は生椎茸よりは干し椎茸の方が好きですけれど。あ、あまり関係無いですかね。(mekeke)
・改めて言われると、胸を突くものがあります。(田中並)
・やっぱり なんでも 生がいいでしょう。
なんでも、誰でも、そう思うとおもう気持ちが、ズバリ書かれている気がします。(うらら花)

22. リアル人生ゲーム貧乏農場になまあたたかい風吹く
作者:タケウマ(@take575)

23. 生くか還るか夢のなか我を呼びたる声懐かしき 4 1・2
作者: みずいろばーど(@tear_dream)
◎いつ藻 ○allex、橙
・生と死について、現実的に感じました。(いつ藻)
・生死の境にいたのでしょうか。懐かしき家族の呼ぶ声がどちらかは分かりませんが、きっとそんな風に聞こえるのかなと想像させられる面白い句だと思います。(allex)
・生死を彷徨っている夢の中、自分を呼んでくれる声がしたら帰らなくちゃと思いますよね。還ってきてくれてよかった。(橙)

24. おまえのこと生ハムメロンくらい許せない 11 1・9
作者:うぐいす(@uguisu_asobo08)
◎うらら花 ○もも、畦道、木曜星の人、mekeke、せば、玉虫、白川玄齋、ねぢこ、橙
・生ハムとメロン、この取り合わせに腹が立っている…それ以上な感じに相手の事が許せない気持ちが伝わってきて面白いです。(うらら花)
・しょっぱい生ハムと、甘いメロンというギャップが良いのかもしれないと思ったのに、口の中に広がる残念な感じ。それが人間だと、果たしてどうなんでしょう。飾らないで、普通にしているほうが良いのかもしれませんね。(もも)
・生ハムメロンの鼻持ちならない感じ。そして実際食べてみると案外美味しい、という悔しさ。こういう人、確かにいるという気にさせる、巧みな対比だと思う。(畦道)
・嫌味な小金持ちなのでしょうか、その相手の人は。詠み手の人にもなんだか許せない気もちが湧いてきますが、面白いです。(木曜星の人)
・別にしょっちゅう食べるもんじゃないし、むしろ一生のうちで食べるかどうかも分からない生ハムメロン、そのくらい縁もないしどうでもいい存在だけどどうしても許せない、私も許せません。(mekeke)
・生ハムメロンを食べたこと無いけど、例えるものが斬新。(せば)
・くすっとした。自分は生ハムメロンも酢豚にパイナポーも好きです。(玉虫)
・メロンに何で生ハムなのか、私もわからない。(白川玄齋)
・絶妙な塩加減と甘み。美味し過ぎると許せない様に、愛おし過ぎて可愛過ぎてと許せないというのがよく伝わる。(ねぢこ)
・私も生ハムメロン許せません。余程相手を許せなかったのか、それとも…それ程気にしていないことなのかどちらだろうと思いました。(橙)

25. 赤く大きく生命と書いたビルが暮れる 18 5・8
作者:畦道(@azemichi66)
◎さはらこあめ、木曜星の人、うぐいす、ニレ、白川玄齋 ○こみおく、Umbert Dolby、田中並、せば、mojolovich、はたらきねこ、タケウマ、元気な人
・やられた、と思っちゃいました。自分の尻は自分で拭け、という言葉が浮かびました。説明しすぎず遠回しすぎず、上手い表現です。 ただひとつ、「暮れる」が気になる。放哉っぽい。(さはらこあめ)
・僕のイメージではビルが逆光になっていて、生命の文字が赤く薄暗く不気味な感じです。血液の赤。命の重圧感。そして、その生命の文字は不幸を示唆しているわけでして、でも本当は大切な人のためのもの。生きている人間の恐ろしさを感じました。(木曜星の人)
・保険会社のビルでしょうか。「生命」なんて重い言葉なのに、どこか白々しい感じがします。生命にお金が絡むことの空しさと、日の暮れる風景がマッチしていると思います。(うぐいす)
・映像が強烈に浮かびました。生命保険会社のビルでしょうか。映画のような臨場感。最高です。(ニレ)
・生命をそのまま詠じているわけではないのに、一番生命を感じた。(白川玄齋)
・保険会社の看板に他意はないが、夕暮れの中「生命」の文字が作者の目にクローズアップされてくる。見たままの風景を詠んだところが好きです。(こみおく)
・沈みゆく日本を連想させる情景が目に浮かぶ。(Umbert Dolby
・一枚の写真を見ているような気持ちになったが、生命保険の広告であることがそこはかとなく笑いを誘います。(田中並)
・生命保険のビルかな。夕暮れこの生命にあの生命を思うのも良いなあ。(せば)
・生命保険会社のビルでしょうか?景が眼の前に迫ってきます。(mojolovich)
・保険会社が儲かる仕組みがよくわかりません。斜陽の中にあるのは保険産業か、日本経済か、それとも私の生命そのものなのか。(はたらきねこ)
・なんとなく、人類の黄昏を連想しました。普通に読めば、保険会社のビルの夕景なんですけどね。「赤く大きく」が妄想を拡げてくれた気がします。(タケウマ)
・そりゃまあ暮れますよね。でも確かに暮れてほしくはないんですよね。ただまあ暮れますよね。(元気な人)

26. たっぷんたっぷん生コンたっぷん 13 3・7
作者:Umbert Dolby(@swing1702)
◎京介、ねぢこ、もも ○こみおく、可児、mojolovich、かもせり、玉虫、タケウマ、天坂寝覚
生コンクリートなのか、生こんにゃくか。おそらく前者でしょうが、リズムが良いですよね。そのうち硬く固まるコンクリートがまだ柔らかくて波打ってる感じが良い。賢い人が、わざとアホっぽく言ってるように思いました。(京介)
・業界関係者としては見過ごせません。うちの若いもん連れて「き、貴様!日本は田中角栄生コンで出来ていると知っての狼藉かあ!!」と叫んでもこの方は続けるでしょう。たっぷんたっぷんと。つまりは客観の勝利という事です。(ねぢこ)
・語感がとても良く、谷崎潤一郎の「天ぷら食いたい」や、俵万智さんの白菜の歌をほうふつとさせます。昼下がり、現場で働く人たちの健康な体とおおらかな心を感じます。(こみおく)
・すごく好きです。今度、ミキサー車を見かけたら、きっとこの句が頭に浮かびます。ただの生コンなのにこんなに面白くて、哀愁があって、エロい感じがするのは、何故でしょう。(もも)
・コンクリを打った地面には必ず犬の足跡がついてるんですよね。「たっぷんたっぷん」の繰り返しの心地よさ。リズムが良いですね。(可児)
・大量の生コンです。しかも固まってない。おそらく悪いことに使うんですよ。きっと。(mojolovich)
・どうしても目をそらすことが出来ない圧倒的な存在感。(かもせり)
・度肝を抜かれた。そうきたか!そして大笑い。いつまでも口ずさんでいたい「たっぷんたっぷん生コンたっぷん♪」(玉虫)
・これ、好きだなあ♪ (タケウマ)
・『たっぷん』というオノマトペを持ってきたのが素敵。こういうユーモアというか愛嬌というかを僕は持っていないので羨ましい。景として、「誰かを埋めるために大量の生コンを楽しそうに運んでいる図」が浮かんだけれど、それは多分僕の邪推。(天坂寝覚)

27. 知らず生えてきた親知らず生まれ生きる
作者:ニレ(@SwayNiLe)

28. 生々しさばかりが浮かぶ湯船だ 12 1・10
作者:さはらこあめ(@__koame__)
◎mojolovich ○畦道、木曜星の人、allex、mekeke、フロヤマ、うらら花、京介、ロケッ子、ニレ、天坂寝覚
・垢や汗・毛髪などの生命の残滓を生々しいと感じるのは凄いと思いました。また、別の方面に連想を伸ばすと、どことなくエロスも感じます。(mojolovich)
・年のせいなのかなんなのか、湯船になんだかよくわからないものが浮いてしまう。人間の出汁だと、私は思うようにしている。(畦道)
・最後あたりの湯船にはいろんなものが浮いてますよね。だからいつも最初に入るようにぼくはしているのですが、最近垢をとってくれるボールみたいなのを入れているので大分きれいになりました。(木曜星の人)
・ちょっと語順が変わると更に軽快な句になる良い句だと思いました。(allex)
・自宅の湯船を想像してもそれなりにえらいこっちゃなと感じましたが、大衆浴場だともうカオスですね。すっきりして出られないんじゃないかと不安になります。勝手な妄想ですみません。(mekeke)
・年を取っていくと、古い角質やら抜け毛やらと、自分が入った後の湯船が気になります。おそらくは、そういったことを詠んだ句でしょう。一日の疲れを取る癒しの場所でありながら、実は非常に生々しく現実的な場所。鋭い着眼点に脱帽です。ただ、ただ共感するばかりでした。(フロヤマ)
・そんな湯船もあっていいとおもいます。現実は厳しいから。(うらら花)
・湯船ではリラックスしたいもの。いい気分で入れてない感が良い。(京介)
・まさに、生々しい句。今日だけじゃなく、また明日も生々しさを湯船に浮かばせるのだろうな。この次、お風呂どうぞーとかって言われたらどうしよう。にっこり笑ってシャワーで済ますしかない。(ロケッ子)
・何なんでしょう、このねっとりとした魅力のある句は。湯船に満たされたお湯までも軽くとろみがついているかのようです。(ニレ)
・『生々しさ』とはまたずいぶん抽象的なと思ったが、その後に『湯船』と来たことで『生々しさ』に確かな手触りを感じた。風呂でも浴槽でもバスタブでもなく、『湯船』だからこその実感だと思う。(天坂寝覚)

29. 転校生に逢いたくてセピア色の教室さがす 3 1・1
作者:allex(@chang_65_21)
◎可児 ○ニレ
・放課後の教室にあなたの姿は見当たらなかった。卒業アルバムのセピア色の写真の中で、あなたは微笑んでいた。「セピア色の教室」という現実と非現実の間にしか存在しない世界を描いた、自由律ならではの作品。素晴らしいです。(可児)
・最初、映画『転校生』の一場面を追いかける旅行者の姿か、と思いをめぐらせてしまいましたが、あぁ、これは違うなぁ、ストレートに甘酸っぱいノスタルジーな句なのだなぁ、と思い至り、この句のことがもっともっと好きになりました。(ニレ)

30. ひとりで生きてるわけじゃなかった窓の月 10 1・8
作者:はたらきねこ(@hatarakineko_)
◎橙 ○いつ藻、さはらこあめ、田中並、せば、可児、かもせり、タケウマ、天坂寝覚
・日々孤独を感じていた作者にひとりじゃないと思わせる出来事が。窓から見える黄色い月が微笑んでくれているように思えたのでしょう。いい句だと思いました。(橙)
・うちひしがれている所に、月光に癒されてゆく。そんな光景が浮かびました。(いつ藻)
・誰かの助けを借りないといけない状態が伝わる。ただ、表現が説明的。さらりとしすぎている。句が無表情。潤んだ表現が涙一筋分ほしい。(さはらこあめ)
・これは単純に、一番共感した句であったのでとりました。(田中並)
・病室からの光景かな。上手くまとまってます。(せば)
・きっとあの人も同じ月を見てるんですよ。(可児)
・月、特に満月は自分のこころを写す鏡であるように感じます。(かもせり)
・窓の月にひかれます。ちょっと過剰かなあと思う気づきをストンと落ち着かせていますね。(タケウマ)
・恐らく『ひとり』が指すものは自分なんだろうが、誰か他の人だと考えてもみて、そうすると失恋だとかを想起した。もちろんそれは曲解で、解釈の筋道としては自分を指しているとした方が真っ当だろうけれど。(天坂寝覚)