句会2本目 全句公開

千本ノッカーの皆様、こんにちは。12月です冬です全句一覧です。2本目にご投句いただきました方々、どうもありがとうございます。おつかれさまでございました。暮れのお忙しい時期にすみません〜。選句選評までまだまだお世話になりますが、よろしくお願いいたします。

今回の句会における投句者数は、(何行にもわたって空欄にしてひっぱりたいところだけど、大人なので我慢)26名でございました! つまり、つまりつまり、逆選は……(ここをひっぱっても意味がないけど、どうしようもない大人なのでつい)無し、ということですね。ほっとした方も、残念って思われた方も、その思いを込めて選評をお書きくださいませ!


選句・選評について

  • 選句場所

  ▼「平」→   http://ws.formzu.net/fgen/S74942355/
  ▼「食べ物」→ http://ws.formzu.net/fgen/S78892235/
  ▼「雑詠」→  http://ws.formzu.net/fgen/S67734469/

  • 期間

  12月5日(水)0:00〜12月9日(日)23:59

  • 選句内容

 ○それぞれのお題ごとに、「特選」1、「正選」3を選ぶ。
  (「自分の句以外」なので、各25句の中から選ぶことになります)
  選句方法の詳細は 「千本ノック」とは をご参照ください。


 ○選句の際に、選評を書き込む。
 (選句外評は、Twitterまたは二次会場所でお願いしますー)

指定語「平」


1. 晦の蕎麦平らげて独りかな

2. きみを失った今日も平日と呼ぶのか

3. 波平の頭にも降る雪しんしん

4. 平らな黒い道を帰る

5. 水平線よ二度と立ち上がらないでくれ

6. お前んち平屋かよと笑った友達を殴る

7. 平幕が時間をつぶしている

8. ひとりでも平気といったんだから泣くな

9. 平均台から落ちたらさいしょから

10. 平穏な一日だったね月微笑

11. もうこぶ平じゃなかったチュニジアの夜

12. いまいちばん欲しいのは平らなおなか

13. ついでに願う「四海皆波平らかに」

14. 水平線知らず瀬戸内の子ら海を唄う

15. 平らげてから知らされる賞味期限

16. 平ら確かめてまた体重を測る

17. ひとり居ればよかった金平糖噛み砕く

18. 水平線も凍てつく冬だどこまでも行ける

19. 水平線が星を吐き出している

20. 平均律クラヴィーア曲集第一巻第一番ハ長調に朝から降り止まぬ
雨の匂いして

21. キキララが作ってると思ってた金平糖

22. 平和でありたい十円を募金する

23. 日本平から見る富士山の悲しい青

24. 叩くならいっそ転がせ手の平の上

25. 平気って言った途端入る平気じゃないスイッチ

26. 平日はイヤフォンの色数え透明になる私と満員電車



「食べ物」しばり


1. 多分この人別れても猫背で食べてる

2. チョコレート少し溶かして交わすキス

3. こんな格好で反逆のマヨネーズ

4. 恋の始まりはキャラメルポップコーン

5. 食べ物の恨み恐ろしい核シェルター

6. もう居ない君の席に私のごはん小盛り

7. 霜の夜や分子構文解いて居り

8. ゆで卵まるごと一個口に入れてみる

9. 殺めねば生を語らるや

10. まだ泳いでいたかったか喉の骨

11. 歯のない顔でまんじゅうくれた

12. 結局えりんぎはつかわない

13. 塩むすび作ってみたよばあちゃんと手を合わせていた

14. うたたねはデミグラスソースの二日目

15. いっぱいの死をいただいてきた体で今日も

16. ゲテモノ食いではないが上司の土産

17. カップメン作る妖精を覗く

18. 白飯一口分の今日を飲み下して眠る

19. ライスカレーの名にふさわしい気品がある

20. つつましく惣菜を買う老婆ひとり

21. 腿の間のすり鉢を叱る祖母

22. 叱られたあと泣きながら食べたおにぎり

23. 七面鳥骨までしゃぶるか敬虔な君よ

24. 耐えに耐え謀反起こした〆にパスタ

25. 君のカレーは醤油と相性がいい

26. 食べないほうの草だった茶を飲む



雑詠


1. 黄色い顔でボリュームを上げる

2. うそ吐いたけど針千本も用意できない

3. 便座のあたたかさに泣きそうになる

4. 寒い手に寒い手がぬくい

5. マスクのなかで呪文唱える

6. タラちゃんの未来想ふや柿の餡

7. 好きだった人から今年も喪中はがき

8. 同じ車が無言ですれ違う

9. 義父のデジカメに授乳する私の姿

10. 笑う鬼涙の師走火の車

11. 月光沁み出して影深く濃い

12. 歯磨き粉で描く冬空

13. 闇で触れてもわかるこのツノがきみだ

14. ふと先のことは空の青さが怖い

15. 今日ももしかしての曲がり角まがる

16. 気の利いた台詞留守にしております

17. 売らんかなの街角の疎ましさいじらしさ

18. 綿の雪も年々減っている

19. そこかしこで雪が待ちわびている

20. 父という自死の先達ある強み

21. 月ばかり明るい小銭しかない夜道だ

22. ひっそり閑のかおりをご存知?

23. 娘の一人称が「わたし」に変わった今年も暮れる

24. 蟷螂死す哀しくもない冬の庭

25. 老猫と想い出話冬こたつ

26. 欄干の靴跡に淡雪ふれて遠い目の鴉

句会2本目 開催のお知らせ

※投句フォームへのリンク貼りました。

風薫らない11月、ご機嫌いかがでございましょうか。誰もかれもが忙しくなるこの時期に、自由律俳句の句会「千本ノック」2本目開催のご案内です。年内最後の「千本ノック」、初めましての方も2回目の方も3回目の方もどうぞお気軽にご参加ください!


「千本ノック」2本目 テーマ

  1. 指定語「平」
  2. 「食べ物」しばり
  3. 雑詠(まったくもってご自由にどうぞ)

それぞれ1句ずつ、ひとり計3句です。<句の条件>

  • 5文字〜25文字程度で書かれたもの。
  • 口語・文語どちらでもOK。
  • 季語の有無問わず。


【補足説明】

  • 指定語「平」

指定語とは、句の中に必ず入れなければいけない語のことです。今回の場合は、句の中に必ず「平」という漢字を入れてください。「たい−ら」「ひら−たい」と読んでもいいし「ヘイ」「ペイ」「ベイ」「ビョウ」…と読ませてもかまいません。「○平」「平○」のように熟語の中に入っていてもかまいません。(※注 「たいら」「チヘイセン」のように平仮名・カタカナ表記は×。必ず漢字で。)
※このお題は、0本目MVP 天坂寝覚さんからいただきました!

  • 「食べ物」しばり

「しばり」とは、それに関するもの、それを想像させるもの、といった意味でとらえてください。つまり今回の場合は、「食べ物」に関する、想像させるような句をお願いします。ひとつめの指定語と違って、「平」という言葉を必ず入れなくてはいけないという意味ではありません。(もちろん、入れてもOK)
※このお題は、1本目MVP 畦道さんからいただきました!

  • 雑詠

何も指定はありません。お好きにつくってください。




スケジュール

  • 投句期間

 11月29日(木)〜12月3日(月)

  ▼投句フォーム
→  http://ws.formzu.net/fgen/S75507964/
 携帯からは→ http://ws.formzu.net/mfgen/S75507964/

  • 選句・選評期間

 12月5日(水)〜12月9日(日)

  • 結果発表

 12月12日(水)

投句・選句用フォームへのリンクは、後日貼ります。
 結果発表はこのブログでおこないます。


年末ということで皆様ご多忙でしょうから、前回よりも多少緩やかなスケジュールとなっております。選句までお付き合いいただけるようでしたら、ぜひぜひご参加ください。


選句・選評について

  • お題ごとに「特選1・正選3」を選んでください。

 (特選=最もいい! 正選=いい!)

  • 今回の参加人数が奇数だった場合、「逆選あり」にします。(投句期間終了後、どちらになるかお知らせいたします。)逆選は、お題ごとではなく全体の中から1つ選んでください。「逆選1」

逆選について

大体の句会でもそうだとは思いますが、「千本ノック」における「逆選」とは、最も劣っている句(ひー! そんなの存在しないしない!)を選ぶというのではありません。「ちょっとひとこと言わせてほしい句」を選句してください。

「ちょっとひとこと言わせてほしい」には、「この表現がひっかかった」「好きなんだけど、こういうところは直せそう」「おいおい、テーマにそれているんじゃない?」「この○○ってぇーのは認めない」など、好意的なものからそうでないものまで内容は様々だと思います。(あえて曖昧にしておこう)選句と選評はセットになっておりますので、逆選の場合は特にハリキッテお書きください!



何かわかりづらい点などありましたら、こちらでもいいしTwitterでもいいし、ご遠慮なくお尋ねください。皆様のご参加を心よりお待ちしております。

【結果】「旅」しばり

1. ひなびた宿のズッキーニの天ぷら 11 3・5
作者:こみおく
◎ニレ、元気な人、せば ○mekeke、うらら花、かもせり、タケウマ、ねぢこ
・やっぱりその場面が思い浮かぶ句というのは好きです。良いですねぇ。宿の主人の控えめな笑顔まで想像できるようです。(ニレ)
・なんですかね、いいですね。ズッキーニの天ぷらにどんな思惑を込めたのかわかりませんが、でもひなびた宿なわけですからね、やっぱりなんかちょっと思う所あるんですよね。ズッキーニのチョイスもいいです。ところでズッキーニってなんですか(元気な人)
・なんか風情がある。詩情も感じる。(せば)
・こんなところで出会うとは…少し笑ってからひとくち食べて何とも言い難い気持ちになりそうです。何だか謎の多い宿のように感じました。掛け布団にやたらフリルが多いとかそんなことなかったか確認して欲しいです。(mekeke)
・これ、わたしも食べてみたいです。そんな風に思わせる、唐突感が、よいです。(うらら花)
・良い意味での裏切り、意外性を感じます。(かもせり)
・ひなびた宿とズッキーニのミスマッチでしょうか。(タケウマ)
・ひなびた→ズッキーニかよ!ズッキーニ→天ぷらかよ!と2回返ったのが良かった。経営改革しようにも思い切りの悪い宿の主が浮かぶ。(ねぢこ)

2. 新幹線に忘れたワインの見る夢 8 1・6
作者:田中並
◎白川玄齋 ○もも、うらら花、玉虫、元気な人、せば、橙
・ワインが旅をしながら夢を見る、ロマンを感じる。(白川玄齋)
・きっと、楽しみにして買ったワインを忘れるくらい楽しい旅だったのでしょうね。どういう味だったのだろうと、家で苦笑いしながら会話する様子も想像できます。(もも)
・新幹線の網棚でしょうか、座席のうしろでしょうか。忘れられたワインはぽおっ〜とほんとに夢を見ているのかもしれませんね(うらら花)
・こういうワインはどうなっちゃうんでしょうか…!>< 切ねぇ…夢見るワイン、幸せ気分で誰か飲んだげて!!(玉虫)
・なんとまあ前向きでロマンチストな方でしょう。最早あえて忘れたんじゃないかってほどで。つくづく後悔しがちな僕もその夢がみたいです(元気な人)
・勿体ない。ワインが悲しく見える。そこにあったかも知れないドラマを勝手に想像すると面白い。(せば)
・せっかくお土産にワイン買ったのに…作者は旅を終えたけれど、置き忘れてしまったワインの旅はまだ続く。どんな景色や夢を見ているのだろう。無事に帰ってきてくれますように。ワインに旅をさせるのが素敵です。(橙)

3. 湯けむり紅葉づくしの今しかない 6 0・6
作者:いつ藻
○田中並、もも、かもせり、元気な人、ねぢこ、橙
・旅行の説得でしょうか。本屋の旅行雑誌をバンと閉じた絵が浮かんできました。(田中並)
・勢いがあって好きです。(もも)
・今しかないといいつつもどの季節でも理由は作れそうですが、でも今しかないと思ったときがその時なのでしょう。(かもせり)
・何が今しかないのか。単純に旅の決め手か。愛の告白の意を決したのか。ただどうしても「湯けむり」という言葉には「殺人事件」という言葉が似合って・・・(元気な人)
・湯けむり、紅葉でやる事と言えば殺人事件しか思い浮かばないが、何をやろうとしているのだうか。面白い。しかしタイミングの基準そこかよと突っ込みたい。(ねぢこ)
・温泉に行きたくなりました。湯けむり、紅葉狩り、本当に行くなら今ですよね。(橙)

4. よく居た広場に自機と僕の影ある 4 1・2
作者:元気な人
◎可児 ○mojolovich、ロケッ子
・プロペラ機で沙漠を超えて行くところ。男のロマンを感じさせる句ですが、感傷に陥らないぎりぎりのところで止めたのが良かったです。素晴らしい!(可児)
・自機って乗り物にしても飛行機とかそういうのを想像します。僕は戦闘マシーンが浮かびました。広場にあったらシュールだなぁと。(mojolovich)
・最初、「自機」を「自販機」だと見間違えていたのですが、その間違いに気づいてから、何だかこの句が怖くって。まざまざと情景を想像すると、本当になんか怖い。ホラー的な意味ではなく怖い。でも、怖い怖いも好きのうち。(ロケッ子)

5. 思い出入れる隙間空けておく 8 1・6
作者:ねぢこ
◎さはらこあめ ○いつ藻、allex、かもせり、ロケッ子、フロヤマ、橙
・上手い!!ぐっとくるにもかかわらず、朗詠なめらか。感動と発見がある。(さはらこあめ)
・隙間空けておくの修辞がよいですね。隙間がないと納まらないですものね。(いつ藻)
・鞄にいっぱいに詰め込んで出掛けるのではなく、お土産を入れるスペースを確保しておくでしょうか。それとも、旅行先の思い出を焼き付けることが出来るように心に少しゆとりを持って出掛けることを意味しているのでしょうか。軽快で面白い句だと思います。(allex)
・隙間を作るために何かを捨てる、捨てたい何かがあるから旅に出る。(かもせり)
・こん平師匠の鞄も、春日の腕もいつも何かのためのスペースは空いてるものね。持ってないと不安だから、といつもぱっつんぱっつんの鞄を下げている自分をちょっと反省。(ロケッ子)
・帰りの荷物はお土産で膨れ上がってしまいがち。そして家に帰れば疲れきって、旅の余韻など感じる間もなく現実に引き戻されてしまう。できれば、心の隙間に思い出をしまう余裕が欲しいものですよね。視点の鋭さが素敵です。(フロヤマ)
・出先ではいつもお土産で荷物が沢山になってしまうんです。本当に思い出を入れられる隙間を作っておかなくちゃですね。(橙)

6. フェルメールは紅葉も青だろうか 5 0・5
作者:もも
○いつ藻、田中並、ニレ、ちよ、橙
・そんな筈はないと逆に考えたときに、より赤々とした紅葉が浮かびました。(いつ藻)
・そんなことはないだろうと思わせて、もしかしたらそうかも知れないと、考えさせられる手腕に感服しました。(田中並)
フェルメール・ブルーを思うこの句を眺めながら私はモディリアーニのことをぼんやり考えていました。あの時のあの人をモディリアーニだったらどう描くのだろうか、と。フェルメールだって青だけを使っているわけではない、ということを充分知っている上でのこの句、というところが良いですよね。紅葉の風景とも実は関係なく、自分ならどうするだろうか、という決断の場面で詠んだ句のようにもとれます。(ニレ)
フェルメールブルーに染まるモミジ。秋の空にどう重なるのか。見てみたい、感じてみたいです。(ちよ)
・そんな紅葉もあっていいのかな、フェルメールの青い秋が存在してもいいのかな、青い秋の世界を想像しました。(橙)

7. 遠く来た街を明日は出て行く 10 2・6
作者:天坂寝覚
◎玉虫、橙 ○いつ藻、こみおく、もも、うぐいす、はたらきねこ、タケウマ
・この刹那感が旅の切なさ、そして良さ。本質を突いてると思いました。嗚呼旅に出てぇ!!そういう気持ちにさせて下さいました。(玉虫)
・旅の終わりはいつも寂しい気持ちになるものですよね。ずっと楽しみにしていたのに、旅が始まるとあっという間、もう少し留まりたい気持ちが伝わってくるいい句だと思いました。(橙)
・旅の終わりの哀愁を感じます。(いつ藻)
・あたりまえのことを詠んだ句なのに、どこかさみしさや運命を感じさせます。(こみおく)
・シンプルですが、楽しい旅は、あっという間に過ぎていく…そういう思いが見えてきます。(もも)
・短い旅のほうが、後ろ髪を引かれるのかもしれません。(うぐいす)
・漂泊の覚悟と孤独の悲哀がよく出ています。目的のない旅。(はたらきねこ)
・うん、旅とはそういうものかも。(タケウマ)

8. どこまでも追いかけてくる影ひとり連れて行く 7 0・7
作者:はたらきねこ
○いつ藻、さはらこあめ、allex、うらら花、フロヤマ、橙、みずいろばーど
・こういう影なら良いですね。(いつ藻)
・表現が説明的。意味が重なる言葉はひとつにまとめよう。テーマは良いと思う。感動と発見がほしい。(さはらこあめ)
・本当に独り旅なら「影ひとり連れて行く」で十分だと思いますが、本当は二人なのではないでしょうか。いつでも、何処へでも影のようについて来る彼女(彼氏)と一緒なのかと思わせる面白い句だと思います。(allex)
・旅は道連れ、さみしそうな影をつれて旅をするのも、おつなものでしょうね。(うらら花)
・それは悲しい影なのでしょうか。もしそうなら傷心旅行というものでしょう。それとも、影だけ連れての自由気ままな一人旅なのでしょうか。影の正体が気になります。意味深は感じがします。いや、あるいは私が深読みしすぎなのかもしれません。それでも惹かれる句であるということに変わりはありません。(フロヤマ)
・ひとりの旅は寂しいけれど、確かに影だけはどこにもついてきてくれる。旅の道連れが自分の影とはちょっと切ない…共感する句でした。(橙)
・振り払おうとしてもついてくる影、それが結局は最後まで自分を裏切らない友であること。孤独の中にフと浮かぶ笑みのようなj印象を受けました。(みずいろばーど)

9. 過ぎていくのは車窓の景色ばかり 2 0・2
作者:さはらこあめ
○かもせり、せば
・過ぎ去って欲しいけどいつまでも留まっている何かがあるのでしょう。それが何なのか気になります。(かもせり)
・素直に読むよりも、深読みした方がよい句。過ぎ去る景色と共に過ぎ去っているものがある。(せば)

10. あの街へは行くまい君を想い出す 2 0・2
作者:橙
○田中並、フロヤマ
・この句は単純に共感しました。付き合っていたひととそのひとの町がワンセットに思うことが度々あります。(田中並)
・その街はいつか二人で旅した場所なのでしょうか。そのときはきっと楽しい想いを共有したに違いありません。でも、いまは想い出したくない。きっと、辛い別れがあったのでしょう。切ない句です。(フロヤマ)

11. 結局家でたべる駅弁 10 1・8
作者:mekeke
◎うらら花 ○畦道、木曜星の人、Umbert Dolby、allex、可児、ニレ、白川玄齋、天坂寝覚
・なんだかありそうな話で面白い。食べようと思ったのに、タイミングが遇わず食べれなかった駅弁を、ぼそぼそ家で食べる姿がうかびます。(うらら花)
・旅に浮かれ、ふと醒める瞬間。そういえば父は出張の帰りに鱒寿司を買ってきては、よく家で食べていた。なんとなく癖で、買ってしまうのだろう。(畦道)
・新幹線降りたらもう食べるところなんてないですからね。駅弁フェアにでも行ったと思いましょう。おいしいです。(木曜星の人)
・味気なさを表現。(Umbert Dolby
・自分のことよりも子供たちの面倒で手がいっぱいで、結局お弁当を食べることが出来なかった。そんなお母さんの光景が浮かんできます。短くて軽快で面白い句だと思います。(allex)
・車内販売でたくさん買いすぎて、おなかいっぱいになっちゃったりしてね。(可児)
・「それもまた良し」という言葉が浮かびました。旅の延長戦ですね。(ニレ)
・家で食べるとかなりわびしい。(白川玄齋)
・この題の中で唯一、ちょっと笑ってしまった。(天坂寝覚)

12. 瞼を合わせ祈る独りで旅立った臆病な君の 2 1・0
作者:ニレ
◎みずいろばーど
・臆病な『君』が独りで旅に出ようと決心した背景と、祈る作者の心の内にストーリーを感じました。(みずいろばーど)

13. 旅立つ君の袖離せないでいる 4 1・2
作者:ちよ
◎フロヤマ ○allex、玉虫
・場面は駅のホームでしょうか。無言でシャツの上着の袖をつかむ彼女。発車のベルが、無言の二人を引き離す。ドアが閉まる。俯いたままの彼女。その頬に、一筋の涙が。列車はホームを出た。彼女はもう見えない。上着の袖に、彼女の温もりがまだ、残っていた。う〜ん、妄想が膨らむばかりです。胸キュンな句です。失礼しました。(フロヤマ)
・特選と悩んだ句です。軽快に表現できていて良い句だと思います。切ない光景が浮かび上がりますね。(allex)
・可愛い。そして、旅に出る側じゃなくて残る側の視線っていうのがいいなと思った。さすがです。(玉虫)

14. 偶然を装ってふるさと 17 3・11
作者:うぐいす
◎allex、mekeke、ロケッ子 ○畦道、こみおく、可児、玉虫、京介、みずいろばーど、フロヤマ、ちよ、元気な人、ねぢこ、せば
・なかなか帰れないふるさと。どのような理由かわかりませんが、親に心配かけたくなくて偶然仕事でそこまで来たからって言い訳して帰省したのでしょうか。ありがちですね。短いことばで軽快な句だと思います。(allex)
・「帰るなら連絡ぐらいしなさいよ!」て軽く叱られてもそれがまた嬉しかったりするのかな、なんて思いました。何となく家族がそわそわ数ミリ地面から浮いてまたすぐ着地していつもの実家に戻る感じを想いました。ふるさとって、土地と言うよりも馴染みの人達が集まる場所ってイメージがあります。(mekeke)
・偶然を装って帰ってきたこと、みんな気づいてるけど口には出さない。気づかれてるなって自分でもわかってるけど、そこには触れない。今度は、偶然じゃなくちゃんと帰ってきてね。(ロケッ子)
・偶然に通りかかったふりでもしないと、帰りづらいふるさと。『寅さん』の世界。(畦道)
・ふるさとのみんなはそんな装いすらも引き受けて「おかえり」と迎えてくれる。とてもあたたかい句だと思いました。(こみおく)
・途中下車か、あるいは一本乗り換えたのか。ふるさとには、なかなかふらっと立ち寄れない気がします。体言で止めたのもお見事。(可児)
・堂々と帰れない理由が何かあるのかな。それでもたまに帰りたい故郷。分かります。(玉虫)
・一旗揚げるまでは故郷に帰らないと決めていた、しかし帰りたくて偶然ということにしてしまった。そういうドラマに思えました。(京介)
・大手を振って帰れない理由があるのか、単に突っ張っているのか。それでも帰らずにはいられない、ふるさとというもの。温かな気持ちになりました。(みずいろばーど)
・何か理由が無ければ故郷に帰ることができない。別に帰るつもりもないけれど、でも一度くらいは帰ってもいいかな。なんて、揺れる心を感じてなりません。その偶然は、自分自身に対しても装わなければならないのではないでしょうか。こちらも、妄想族には堪らない句です。(フロヤマ)
・なんだか照れ臭くて理由をつけたくなるっていうの、何となくわるなぁって。(ちよ)
・シャイなのか、気を遣わせたくない人なのか、面倒くさい人なのか、そのどれもなんでしょうか。上手く言われたなって感じです。(元気な人)
・ふるさとは大手を振って帰れる場所では無いのかも知れない。けど、気になる。帰りたい。偶然を装ってたどり着きたい。(ねぢこ)
・偶然とはいい言い訳ですよね。上手く故郷で過ごせたら良いのですが。(せば)

15. ただ在りし地平線と対峙して敗北を知るホモ・サピエンス 2 0・2
作者:みずいろばーど
○mojolovich、ねぢこ
・「ブッシュマン」のラストシーンがなぜか浮かびました。コーラの瓶捨てるシーン。(mojolovich)
・どこか外国に行ったのだろうか。ただ自然の前で圧倒されている姿がホモサピエンスで伝わる。ちなみに私は出産の際、「哺乳類!哺乳類!あたし哺乳類」叫んだ。心の中で。(ねぢこ)

16. 落ちつきないおばあちゃんの冷凍みかん 9 0・9
作者:かもせり
○木曜星の人、こみおく、田中並、可児、うぐいす、玉虫、ニレ、白川玄齋、ねぢこ
・帰りに持たせてくれようとしているのか、着いて出してくれようとしているのか。何かしてくれようとするやさしさはアタフタになってしまう。良い句ですね。冷凍みかんは食べたことないですが。(木曜星の人)
・駅の売店で買い求めた冷凍みかんをせわしなく配るおばあちゃんの姿に、楽しさとあたたかさを感じます。(こみおく)
・いろいろな感慨が冷凍されて圧縮しているような気がします。(田中並)
・車中の冷凍みかんの酸っぱさが思い浮かびます。良い句ですね。(可児)
・久しぶりの旅行なのでしょうか。ちょっとはしゃいでいる、かわいらしいおばあちゃんが目に浮かびます。(うぐいす)
・いいよいいよ、みかんはあとで食べるから、しまっといてよおばあちゃん!久しぶりの旅行で舞い上がってるのかな。生きてるうちに何度でも連れて行ってあげたい可愛いおばあちゃんです。(玉虫)
・冷凍ミカンを握る不安なおばあちゃんの様子が浮かんでくる。(白川玄齋)
・お約束の冷凍みかんを買っても落ち着かないばあちゃん。孫に「いいから座れよ、ばあちゃん!」と言われている。乗車券拝見の折りにはどうなるのだろう。風呂敷の荷物を通路中並べそうである。(ねぢこ)
・なんか古い電車の中での出来事のように勝手に想像してしまいました。四人掛けの向かい合わせになった座席で、たまたま居合わせたおばあちゃんのコミカルな一場面、というイメージ。作者の意図を完全に離れたところでのこの句への好意です。それで良いと思っています。(ニレ)

17. 霧晴れて湖畔の傷ごころ 1 0・1
作者:フロヤマ
○allex
・失恋でもしたのでしょうか。傷ついた心を癒しに出掛けた旅行先で湖畔の霧が晴れてくるように、胸のつかえがとれていく光景が浮かびます。軽快で良い句だと思います。(allex)

18. かき捨てた恥が写真で残る 10 1・8
作者:ロケッ子
◎木曜星の人 ○さはらこあめ、Umbert Dolby、mekeke、うぐいす、京介、うらら花、かもせり、白川玄齋
・昔はカメラなんてなかったからよかったのですが、今はありありと残ってしまいますからね。ビデオじゃないだけまだましですか。サングラス掛けてる写真を日光で焼きたいです。(木曜星の人)
・思わずくすっとする。ただ表現がストンとしすぎていて、もうひとつ俳句的な匂いがほしい。(さはらこあめ)
・共感。(Umbert Dolby
・迂闊でしたね。残ってましたよ。うっかり人に配ったりしてませんか。非現実感覚だった自分を日を置いてから客観視する恥ずかしさったらないですね…。。(mekeke)
・蘇る、忌々しい記憶!(うぐいす)
・「旅の恥はかき捨て」旅先の開放感でやりすぎちゃった写真が目に浮かびます。焼き増してバラ撒きたい(笑)(京介)
・写真は証拠に残る。恥ずかしいことも残ってしまう。当たり前の話だけど、その時の気持ちも、フラッシュバックするでしょうね。そして、赤面ですね。(うらら花)
・確かに、昔の旅の写真は今見ると恥ずかしいものが多いような気がします。(かもせり)
・保存期間が長い方を選びました。(白川玄齋)

19. 移動範囲方寸四方の大冒険 2 0・2
作者:白川玄齋
○さはらこあめ、みずいろばーど
・少年の秘密基地が見えた。大人が素通りしそうな世界を、純真無垢な心がかっぽする絵が浮かぶ。(さはらこあめ)
・どんなに狭く短い間の出来事も、果てしない大冒険になりうるという事実。結局わたし達の旅は、己の内を探求しに出掛けるようなものなのかもしれないと思いました。(みずいろばーど)

20. 誰が置きし自然薯やろか無人 17 3・11
作者:Umbert Dolby
◎もも、かもせり、ちよ ○さはらこあめ、畦道、木曜星の人、mekeke、こみおく、ロケッ子、みずいろばーど、はたらきねこ、白川玄齋、せば、天坂寝覚
・一時間に一本くらいしか電車が来ない無人駅。この句の作者以外には、誰一人、この無人駅で電車を待っているものはいなかった…という詠み方をしました。自然薯が、周りの風景を想像させてくれます。(もも)
無人駅で自然薯と相対している旅の人。誰もいない駅舎で自然薯と待つ電車。そして自然薯との別れ。あ、別れないで連れて帰っちゃうのかも。(かもせり)
・一本道。屋根付きのバス停。ポツンとある自然薯。映画のワンシーンの様な情景がぽわりと浮かんできました。とてもすきな景色。(ちよ)
・「置きし」と「やろか」が気になる。間違いなのか、わざとなのかわからない。意図的にするにしても「ん?」と読み手に思わせないほうがいい。のどに魚の小骨がひっかかった感覚を残す。テーマはすごく良いと思う。(さはらこあめ)
・置きし、に若干の違和感。ここも口語、方言で押し切れば特選に頂いたと思う。(畦道)
・自然薯って長いですからね。背景と溶け込んで違和感がないのもいいですね。(木曜星の人)
・こういう発見が好きです(笑)無人駅は不思議がいっぱい。(mekeke)
・閑散とした無人駅。そこにぽつんと置いてあった自然薯は、地元の行商人が置き忘れらたのであろうか。旅先でふとみかけた光景に旅愁が漂います。(こみおく)
・「誰」を「た」と読んで定型にするも、「だれ」と読んで6文字にするもどちらにしても心地いい。自然薯と無人駅、あまりにもぴったりな組み合わせに文句をつけたい気も少々。(ロケッ子)
・たまに、見知らぬ地で不思議な光景に出会うことがある。意図的とも、偶然とも…重要とも悪戯とも分からない情景。いろいろ膨らませる想像が楽しいと思いました。(みずいろばーど)
・これはいいなあ。好きだなあ。「誰」をどのように解釈するか。「無人駅とは言え、周辺に住民がいて、だれかが忘れて行ったのか。いや、きっと山の妖怪だな。山童かな。木霊かな。仲よくなれそうな人間を見つけて、おみやげを持って来たんだな。でも渡せなかったんだな。わかるぞ。しくしく。」みたいなことを考えながら詠んだ句に違いない。(はたらきねこ)
・地方の無人駅の様子がよく出ている。(白川玄齋)
・地方のローカル線の駅によく見る光景。
自然薯でも何でも良いのかも知れないけど、自然薯が効いてるなあ。(せば)
・まず景が良くて、それに加えて『やろか』と方言を用いたところに点を入れたい。ただ、せっかくの方言が旧かなの『置きし』とぶつかってしまったのが惜しい。(天坂寝覚)

21. 捨てる筈の思い出が鞄からはみ出している 10 2・6
作者:allex
◎いつ藻、畦道 ○mojolovich、うぐいす、はたらきねこ、ニレ、ちよ、せば
・人生という大きな旅でしょうか。過去を捨てようとする苦悩がずしんときます。(いつ藻)
・とある観光地の土産屋が、おまけだといって孫の手をくれた。いらない、と思ったが断れなかった。孫の手は帰りの鞄からはみ出して、邪魔だった。しかし、この句のように解釈すれば、非常に美しいものとなる。見事だ。(畦道)
・きっと思い出がいっぱいなんだ。胸キュンです。(mojolovich)
・恋に破れた女性でしょうか。あふれるほどの思い出を捨てるための旅なのに、結局捨てられず・・・演歌のような世界観ですね。(うぐいす)
・同テーマの句がいくつかありますが、これが秀逸に思いました。「筈」がいいですね。
本心なのか、欺瞞なのか、広がりを感じる言葉です。(はたらきねこ)
・最初、恋人との別れの場面かな、と思ったのですが、あぁ、これは「旅しばり」だった、ということを思い出し、「旅の恥は掻き捨て」か、と思い至りました。そうです。捨てなくても良いんです。旅の最中に起きたことは全部宝物です。そのあたたかい気持ちに1票です。(ニレ)
・旅を共にした鞄って、そのまま思い出も染み付いてしまいますよね。(ちよ)
・捨てるはずの思い出って深い気がするが、案外地方の新聞紙ぐらいかもしれない。そう思うと面白い。(せば)

22. 床の間を片づけてもう一人ねむる 9 1・7
作者:木曜星の人
◎ねぢこ ○Umbert Dolby、可児、うらら花、京介、みずいろばーど、はたらきねこ、天坂寝覚
・実ははっきり句意は掴めていないのだけど何か気になって取らせて頂きました。予定外に人数が増えて床の間に寝るのか。帰宅して荷物が散乱して床の間に寝るのか。もう一人も気になる(ねぢこ)
・背に腹は代えられぬ。床の間も寝てみれば案外居心地がいい。じわじわと可笑しさの拡がる句。(Umbert Dolby
・なんか人数増えちゃって、結局雑魚寝。(可児)
・床の間を片付けてねむる そんな旅の姿が想像できます。旅行は荷物が散らかったり、人も多かったりするリアル感かな。(うらら花)
・大きな部屋で布団をいっぱい並べて眠る運動部の合宿のような光景が目に浮かびました。
他にお客さんがいなかったら廊下で眠る人もいたことでしょう。(京介)
・若者一人の貧乏暮らし、という雰囲気を受けました。休みに仲間が集まって、夜は適当に眠る。乱暴だけれどどこまでも自由を感じる作品でした。(みずいろばーど)
・帰省ですね。実家にはもう自分の寝る場所が確保されていない。ルカの福音書では放蕩息子は父に赦されるのですが。(はたらきねこ)
・個人的にツボに入った。とは言え旅と見るには難しいような気がしたので、正選とした。(天坂寝覚)

23. かなかなを探してるんだ 8 2・4
作者:せば
◎田中並、タケウマ ○さはらこあめ、Umbert Dolby、mojolovich、天坂寝覚
・旅でかなかなを探してしまうチャーミングさを買いました。本当は無目的な旅だったかも知れない。(田中並)
・一番好きな旅でした。見つかるといいいよね♪ (タケウマ)
・「かなかな」が様々な意味が含まれていてテーマも良い。もうひとつグッとくるものがほしい。このままだと「ああそうですか俳句」である。(さはらこあめ)
・年に一度、そのような気持ちになります。(Umbert Dolby
・かなかなってあまりみなくなったとは言うものの。どこまで行くねん!っていう。(mojolovich)
・夏の終わりを追っているのか、あるいは過ぎてしまった夏を追っているのか分からないが、切実な思いはひしひしと感じる。(天坂寝覚)

24. 村ごと遠くへ転移する 3 0・3
作者:可児
○いつ藻、mekeke、mojolovich
東日本大震災句でしょうか。ここでは思い切った省略をしていますね。そこが良いです。(いつ藻)
・「旅」がどれも楽しいものとは限らない。仕方なく旅立たねばならないときもある。そんな旅はいつか終わる旅だと思いたい。(mekeke)
・転移って言葉がかっこいい。SF小説の究極の短縮みたいで。(mojolovich)

25. 指令その4 新京極で木刀を買え 9 2・5
作者:タケウマ
◎こみおく、京介 ○畦道、Umbert Dolby、可児、うぐいす、白川玄齋
・若者の古都への旅行と木刀は切っても切れない関係です。数々のミッションにはしゃいでいる男子たちの光景が目に浮かんでわくわくしました。(こみおく)
・新京極で木刀を売っているのは、こんな指令があったからだったのか!(京介)
・確かに木刀を買う同級生はいたが、あれは指令だったのか。手裏剣とかもそうなのか。(畦道)
・ヤンキーか。(Umbert Dolby
・東京だったら日光で、修学旅行の男子全員木刀を買うんですよ。(可児)
・了解!!全力で任務を遂行します!!(うぐいす)
・場所は違いますが、同じ思い出があります。(白川玄齋)

26. コロとふたり旅家出なんかじゃないのに 6 0・6
作者:玉虫
○木曜星の人、もも、京介、ロケッ子、はたらきねこ、天坂寝覚
・犬でしょうか。犬が救いでもありそうですが、わびしさも犬一倍ですね。(木曜星の人)
・多分、コロはペットだと思うのですが、「ふたり」とすることで、この句の良さが出ているのだと思います。例えば「コロと一緒に旅」だとしたら、強がっている感じとか、背伸びした感じとかが見えてこなかったでしょう。(もも)
・コロは犬だろうか。飼い主とペットではなく親友といった関係に感じる。冒険がはじまりそう。(京介)
・そうそう、家出なんかじゃないよね。冒険だよね。どうか無事にお家へ帰りますように。(ロケッ子)
・幼い冒険を見守る広い度量が親には求められるのですね。私も山から帰らぬ日があったそうです。神隠しに遭い易き気質。(はたらきねこ)
・『コロ』の存在あってこその句。全体がなんとなく説明的な気もするが、それが却って『ふたり旅』をしている「私の心情」を強く伝えてきた。(天坂寝覚)

27. 子規の空はわたしの空にもある 3 0・3
作者:うらら花
○田中並、タケウマ、ニレ
・子規のない空といえば、彼はよく空を詠んでいます。彼に見栄を張っているような態度が立派であると思いました。(田中並)
・そう、ボクの空にも♪(タケウマ)
正岡子規に思いを馳せてさらに広がり行く心の空。風が吹いているような句ですね。(ニレ)

28. 乗り物酔いの耳にバスガイドの唄 5 0・5
作者:京介
○木曜星の人、こみおく、もも、ちよ、元気な人
・どうしてバスガイドという人は歌を歌いたがるんでしょう。皆さんもご一緒にとされた日にはもう。あなたはバス慣れしてるかもしれませんが、こっちはもう口も開けませんよ。(木曜星の人)
・のんきで明るいバスガイドの歌声が、ほかの生徒のはしゃぎようを連想させ、作者の孤独感をいっそう高めています。きっと目的地では酔いも治り、たのしい旅行となるはずです。(こみおく)
・乗り物酔いは、耳の奥にある三半規管が原因だと言われますね。そこにバスガイドの優しい唄声が聞こえてくると、少しは、乗り物酔いが楽になったのでしょうか。(もも)
・子供の頃いつもそうでした。変にテンションの高い声と会話を呪っていた。(ちよ)
・僕は乗り物酔いに疎いのでその気持ちを理解しきれませんが、きっと吐くほど嫌でしょうね。美人ならまだ許せそうですが、ブスバスガイドならバスガス爆発でしょうね。(元気な人)

29. 国境を舐めながら来た 3 0・3
作者:mojolovich
○畦道、タケウマ、元気な人
・具体的な情景は読み手に委ねられているが、とても拡がりのある言葉だと思う。私は(行ったことないが)アメリカとメキシコの国境を何故か思い浮かべた。(畦道)
・よくわからない。よくわからないけど、いい♪(タケウマ)
・「舐めながら」がすごく色々を想起させて面白いです。甘く見ていたのか。飴玉でも舐めてたのか。地図を持って舐めながら来たのかも。舐めるようにして、ということも。実際はわかりませんが、国境は舐めながら来るもんじゃないなと思いました。(元気な人)

30. みんな疲れてバスは西行 17 5・7
作者:畦道
◎mojolovich、うぐいす、はたらきねこ、天坂寝覚、Umbert Dolby ○mekeke、玉虫、京介、ロケッ子、タケウマ、フロヤマ、ちよ
・何度か読んでいるうちに徐々に来る感じです。バスは何人を乗せて走るんだろう・・・って。(mojolovich)
・夕暮れ、旅の終わりの気だるい感じ。西日が眩しいんだろうなと想像しました。で、たぶん家に帰ってから「やっぱり家が一番だな」なんて言うんでしょうね。(うぐいす)
・日が沈む町へバスは帰る。周囲の人はみな生活の中にいる。帰宅する人々のバスに乗り合わせた自分は、一人異物として旅人である。みんな疲れて家へ帰る。帰る家のない私はどこへ行くのか。日常の中の違和感や孤独を感じとりました。(はたらきねこ)
・遠足の帰りなのだろうか。疲れたみんなを乗せてバスが西へ行くとき、太陽もまた西へと沈み行く。あたかもバスが太陽を西へ運んでいるかのようで、その景色が誘う郷愁たるや。帰ることも旅なのだと強く思った。(天坂寝覚)
・旅行にありがちな情景をきりとっている。『西行き』がきいている。(Umbert Dolby
・行きの元気はどこへやらですね。でも帰りのバスで寝るのって何か気持ちいいですね〜。(隣にだれがいるかにもよりますが…)(mekeke)
・疲れても(´・ω・`)死ンジャダメ…!!(玉虫)
・西は極楽浄土への方向でしょうか。だとすれば、冥土への旅。(京介)
・目的地が西なのか、それとも西に帰るのか。楽しいだけが旅じゃない。(ロケッ子)
・ふむ、疲弊したものは西へいくのかもしれぬ。(タケウマ)
・もしかしたらTDLあるいはTDS帰りなのではないでしょうか。関西方面に向かう帰りの夜行バス。疲れ果てた乗客。楽しかった思いとは裏腹の、シニカルな句のように感じました。(フロヤマ)
・早朝出発して8時間。移動時間よりも短い滞在時間でまたバスに乗る。みなげんなりしながらも、西陽に向かって走るバスに揺られ、想い出を口々にうつらうつら。そんな過去の夏をありありと思いだしました。(ちよ)

【結果】指定語「生」

※次のような並びで掲載しています。
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 句  獲得点 特選数・正選数
 作者
 ◎特選に選んだ人 ○正選に選んだ人
 選評

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1. 生死をぶつかけてゐる 8 2・4
作者:mojolovich(@_mojolovich)
◎みずいろばーど、玉虫 ○さはらこあめ、Umbert Dolby、タケウマ、天坂寝覚
・言葉の過不足を感じませんでした。古語の魅力を感じました。『人生』という表現しきれないものを正確に言い放った印象を受けました。(みずいろばーど)
・文句なしに。勢いがある。男らしい。そして深い。(玉虫)
・「を」がぴんとこない。「に」がいいのではないか。しかし、歯を食いしばりこの世に居ようという思いが見える。(さはらこあめ)
・直球。(Umbert Dolby
・逆選があればこの句ですね。「生死」は同音異義語に掛けているのでしょう。その同音異義語も「生死」を内包しているのがミソなんだけど、一読下品だよなあと思うかどうか試されている気がします。悪い意味でやらしい句。その手にのりたくないなあと思いつつ、言っておきたくて選んじゃったねw(タケウマ)
・ぶっかける対象が何なのか、そもそも生死をぶっかけるとはどういう行為を指すのか分からない。分からないけれど「それらは皆些細なことだ」とすら思わされる力を感じた。とは言えこの句は詩性があるどころかまるっきり詩だと思ったので、正選とした。(天坂寝覚)

2. 太陽に会えないまま生きる 7 1・5
作者:橙(@x_orangegerbera)
◎かもせり ○いつ藻、さはらこあめ、mojolovich、ニレ、ねぢこ
・最初家畜の話かと思ったのですが、考えてみれば自分も晴れているにもかかわらず太陽に会わずに過ごすことだってあるし、改めて意識しないと気がつかないことだなぁと思いました。(かもせり)
・入院している方でしょうか、あるいは、叶わない望みを背負っている孤独の身を感じます。(いつ藻)
・テーマは良いがもうひとつ何かがほしい。このままだと「ああそうですか俳句」になる。それでも生きてんだってのがほしい。青空を大きくわしづかみしたくても出来ず、床に臥しながら布団を枕をわしづかむ様子が浮かぶ。(さはらこあめ)
・閉じ込められてる!ってとっさに思いました。(mojolovich)
・一般的には、比喩表現になっているほうが素晴らしくて、文字通りそのままの意味のほうが薄っぺらい、なんて評価されがちだと思うのですが、この句に関しては私は逆の印象を受けました。人生を照らす太陽のような存在に自分は出逢えない、という意味ならば薄っぺらく、そうでなくただ文字通り空の太陽を目にしない生活、という意味ならば素晴らしい、という感じです。あくまで自分の印象です。その方がもっと背景やらその奥の意味合いを様々に想像できるからです。なので私はそのまま「太陽を目にしない生活」という意味の句だと受け取って、あぁ、素晴らしいなぁ、と感慨に浸っているのです。(ニレ)
・素直に切なかった。それでも生きて欲しいと思う。「会えなくても」と強めでもいいかな?と思ったが、やっぱり嘘臭くなる。「会えないまま」がこの方のリアルな気持ちだろう。(ねぢこ)

3. とりあえず呼ばわりは罰ゲームだよラブ生中
作者:玉虫(@OGA0531)

4. 死んだ夜の生ビール美味しい 8 1・6
作者:元気な人(@no_fineman)
◎天坂寝覚 ○田中並、mojolovich、うぐいす、かもせり、ロケッ子、橙
・状況の詳細は分からないが、人の業(のようなもの)がなんの衒いもなく出た句だと思う。(天坂寝覚)
・死んだ夜の、から一転して、明るく、生ビール美味しいに着地する。そのさっぱりとした、あっけらかんとした楽観こそが生ビールであると思いました。(田中並)
・「死んだ夜」ってかっこいいですし。それはどんな夜なのだろう?って色々想像しちゃいました。(mojolovich)
・死んでなお生ビールを飲んでいるのか?と初めは思いましたが、ふと、お葬式のあと亡くなった人を偲びながら飲んでいるのかな、とイメージしました。(うぐいす)
・死んだように疲れた夜という意味かもしれませんが、誰かが死んだ夜という解釈で読みました。知人が亡くなったという報に接し悔しくて飲んだビールが、これまた悔しいほどに美味かったという経験を思い出しました。(かもせり)
・誰かのお通夜かなんかで飲んでるのではなく、何となく自分が死んだ夜っぽい雰囲気がムンムン。仕事の後のビールっぽく、人生を終えた後の冷たい生ビール。あー、さぞかしおいしいだろうなぁ。来世に酒が残らないようほどほどに。(ロケッ子)
・これまでの自分をリセットして新たな気持ちで生きていくことを決意した夜のビール、美味しそうです。(橙)

5. 生がいちばんとは言えない 2 0・2
作者:mekeke(@mekekeke)
○さはらこあめ、可児
・もうひとつ何かがほしい。このままだと「ああそうですか俳句」だ。しかし、言おうとしていることは、思わずしみじみ共感を得る。(さはらこあめ)
・ラガーの苦さが欲しくなる夜もあるんですよね。(可児)

6. 生乾きの匂いがしても好きだった 7 0・7
作者:田中並(@tanaka_nami)
○いつ藻、さはらこあめ、畦道、フロヤマ、ロケッ子、はたらきねこ、ニレ
・恋をすると欠点までよく思える。過去形になっているので、現在を想像する楽しみがありますね。(いつ藻)
・もうひとつ何かがほしい。なるほどってやつが。大切な人が使っていた「物」に対してか、あるいは、その人自身かどちらだろう。「好き」といっている人物が、生乾きのものをぎゅっと抱き締めた憂い顔が浮かぶ。(さはらこあめ)
・欠点も好ましく思えるなら、その気持ちは本物。しかし……『だった』と過去形なのがこの句の肝だ。(畦道)
・あばたも笑窪、恋は盲目という言葉もありますね。恋している時の気持ちをよく表わしており、さらには「匂い」という単語が、何だか懐かしい気持ちにさせてくれます。(フロヤマ)
・生乾きの匂いがしても好きだったなんて、これはもうよっぽど惚れこんでいたのですねぇ。嫌いになれたらどんなにラクだったか、といったような気持ちもぼんやり。(ロケッ子)
・過去形なので、今はきっと許せないのでしょう。幼い恋は盲目。年経た恋は不純。加齢臭や生乾きの臭いがしても好きでいられる。それは若さの特権です。命短し恋せよ乙女。(はたらきねこ)
・そうだよなぁ…、と自分の思い出と照らし合わせながら句を反芻することしばし。私の場合はまたちょっと違っていて、生乾きよりももっとヘヴィーで生々しい記憶なのですが、それでもやっぱり「好きだった」の方が強いのです。「好き」は強いなぁ、と改めて気づかされた句でした。(ニレ)

7. 先っちょに何か生えてきた 13 2・9
作者:可児(@kanimaster)
◎Umbert Dolby、タケウマ ○こみおく、もも、畦道、うぐいす、うらら花、京介、ロケッ子、ちよ、ねぢこ
・「何か」とは何か?「先っちょ」とは何の先か?気にならずにはおれない。こみ上げる面白さがある。(Umbert Dolby
・やっぱり、不思議な句にひかれるんですよね。なにが生えてきたのか、なんの先っちょなのか、考えたってわかんないけど、それこれ想像するのが楽しいよね。ボクの妄想は、頭の先っちょに花とかが生えるといいかなと。パンジーとかね♪(タケウマ)
・やられた!という感じです。「しかも先っちょに!」としか言いようがありません。(こみおく)
・意味深すぎる。好きです。(もも)
・とにかく病院へ!(畦道)
・何が?そしてどこに?何もわからないけど、笑えました。毛にしろ歯にしろ、「生える」って、どこかしら滑稽ですね。(うぐいす)
・何に生えてるのかわからないけど得体の知れない奇妙な感じが伝わってきて興味をそそられます。(うらら花)
・なんやねん? なんの先っちょやねん?!なにに何が生えてきてんねん! ツッコミがいがあります。(京介)
・「先っちょ」の「ちょ」がすべてを許すに値する可愛さを醸し出していますねぇ。いや、別に許せない部分は何もないのだけれども。これが「ぽ」だったら、どうだろう。「先っぽに何か生えてきた」 …… うん、やっぱり「ちょ」がいい。(ロケッ子)
・どこへ!?なにが!?想像すればするほど楽しい。にんまりしながら。先っぽではなく、先っちょってのがまたいいなぁ。(ちよ)
・「先っちょ」に「何か」という曖昧な形が「生」という感じがします。改めて考えると生き物が育つ時はいつも先っちょに何か生えますね。(ねぢこ)

8. 生キャラメルの爪痕ある地下街 4 0・4
作者:かもせり(@kamoseri)
○木曜星の人、mekeke、みずいろばーど、元気な人
・地下街がもうなんとなく悲しい響きですね。地面の中に牧場の絵が描かれた生キャラメル。(木曜星の人)
・それなりに、ぬる〜くやってこれていた地下街に束の間生キャラメルの熱気が入って来て、そしてまたさーっと人波が退いた地下街は、相変わらず前と同じぬるさのはずなのに、何だか以前より寒々しく感じます。そんなことを考えました。(mekeke)
・『生(なま)』を強烈に感じました。薄暗闇に残るネイルの艶やかさ、それを見る視線の冷ややかさ。(みずいろばーど)
・地下街と聞いて僕は古びれた薄暗い通りを想像したのですが、生キャラメルの爪痕なんですよね。キャラメルではなく、生キャラメルの。生キャラメルと書かれた錆びれた看板を爪痕と言っているとも考えられますが。何れにせよ生が抜群に生きた句でした。(元気な人)

9. 晴天に体操服は生乾き 4 0・4
作者:ねぢこ(@NMM0704)
○もも、allex、みずいろばーど、ちよ
・学校で、なにか悲しいことがあったのかを思わせるような句。すっきりしない感じが良いです。(もも)
・晴天続きの中で体操服の洗濯する機会が無くて、忙しい朝に洗濯機を回してきたのでしょうか。何か懐かしさを感じる面白い句だと思います。(allex)
・幼さに近い若さ、懐かしい青春。『生乾き』の湿っぽさが『晴天』『体操服』のカラッとした爽やかさによって嫌みのないアクセントになっているように感じました。(みずいろばーど)
・そうそう。体操服って妙に厚いから。でも洗濯するにつれ段々と薄くなるんですよね。人間と同じかなぁって思ってみたり。しおしおになっても、中味は濃くなりたいものです。(ちよ)

10. 親不孝も生きてる証と笑う人 8 0・8
作者:ロケッ子(@5_rockets)
○こみおく、mekeke、可児、うぐいす、玉虫、京介、はたらきねこ、ちよ
・どんな子どもでも、元気で生きているだけで親孝行。不孝を自覚しながらも上手に生きることができないその人が、笑っているところがとてもいいです。(こみおく)
・親からすると元気に生まれて、生きてるだけでとりあえず孝行してると言えるのかなぁと思いました。どうなんだろう。親に聞いてみるか、いやいやそんな。だからって何してもいい訳じゃないですけど、この人がどれだけのことを経験し考えこう笑ったのか気になるところです。こういうことをさらっと言っちゃう人って何か惹かれます。(mekeke)
・親不孝を笑って許されるのは、親の特権です。(可児)
・母がよく言う「何をしてても、あんたらが生きてればいい」という言葉を思い出しました。(うぐいす)
・親って有難いですね…そう、生きてるだけでいいんですよ。(玉虫)
・ホントは親孝行してやりたいのかもしれない切ない。(京介)
・親は死ぬまで親。「誰か言はん寸草の心 三春の暉りに報い得んと(遊子吟 孟郊)」親の愛情を思えば、孝の気持などわずかばかりのものなのでしょう。(はたらきねこ)
・そんな人が嫌いで好きです。(ちよ)

11. 空に生ビールが浮かぶああ気持ちの良い朝だ 1 0・1
作者:もも(@Maomonta)
○白川玄齋
・生ビールがもう一つの句より美味しそうだ。(白川玄齋)

12. 早鐘のようにこころ打つ生 1 0・1
作者:うらら花(@nonoka57)
○フロヤマ
・心臓が高鳴る時と言えば、運動の後や恐怖を覚えた時。そして、やはり恋している時。この句の場合はどれなのでしょうか。「こころ」とひらがな表記とあることから、恋の瞬間であると私は解釈しました。いずれにせよ「生きている」という確かな実感と、その中に喜びさえも感じさせます。(フロヤマ)

13. 台風耐えている木が生きている 6 1・4
作者:せば(@BkltTd)
◎田中並 ○こみおく、畦道、かもせり、元気な人
・常々、木の生命に懐疑的だった筆者が、暴風にさらされ耐えている木に、はっとその生命を感じ取った、その一瞬の切り取り方が良いと思いました。(田中並)
・台風と「戦う」のではなく「耐えている」としたころに、黙ってそこに立っている木の生き方に寄り添う作者の気持ちが現れています。高田松原の奇跡の一本松を思い出しました。(こみおく)
・厳しい自然のなかにこそ、生の実感はある。(畦道)
・以前、自宅の前にあった大木が台風で倒れたことがありました。倒れた木を見て「生きていたんだなぁ」としみじみ思ったことを思い出しました。(かもせり)
・死を以って生を実感するってのはよくあることですよね。病気の時ほど普通を痛感したり。これもそんな感じなんだと思いますが、「台風耐えている」をもう少し遠い表現にしてもよかったかななんてと思います。(元気な人)

14. 生まれてくる子よ腹を蹴りなさい 18 3・12
作者:フロヤマ(@furoyama)
◎こみおく、せば、ロケッ子 ○いつ藻、もも、Umbert Dolby、田中並、みずいろばーど、うぐいす、京介、白川玄齋、元気な人、ねぢこ、天坂寝覚、橙
・元気に生まれて、元気に生きなさい。命令形の母の言葉に、とても強い「生の力」と「つながり」を感じます。(こみおく)
・これから生まれてくる命には敵わない。(せば)
・目にした瞬間、ゾクっときました。生まれる前から生きている。でも、生まれてこなければ生きられない。生きるために生まれる。力強くもあり優しくもあり、好きな句。胎動が唯一の通信手段だった日を懐かしく思い出しもして。(ロケッ子)
・命を身ごもった者の素直な気持ちがありのままで良いと思いました。(いつ藻)
・いろいろ考えてみましたが、この句は男性目線なのかもしれない。父親になることをなかなか実感できず、期待と不安でいっぱいの句なのかもしれません。(もも)
・剛速球。(Umbert Dolby
インパクトに圧倒された。特選にしても良かったのですが、この女性特有の共感に、私が男性としてたじろいだ気持ちにもなり、正選とさせていただきました。(田中並)
・言葉とは逆の意味を受ける面白さ。圧倒的な上から目線の言い回しなのに、果てしない愛情を感じました。(みずいろばーど)
・母性そのものですね。命の力強さを感じました。(うぐいす)
・生まれてくる子よ腹を蹴りなさい元気な子が生まれますように。(京介)
・誕生を待ちかねている感じが良いなと思う。(白川玄齋)
・教育のはじめですね。「腹を蹴りなさい」という言い方に尽きるのかなあと。瞬発力は一番でした(元気な人)
・「わぁー、この子蹴ったわー。」で無く「蹴りなさい」と命令形なのが良い。力強い愛と美しさを感じる。(ねぢこ)
・母性と一括りにしがちなところから感情を一つ、丁寧に掬い取ったと思う。そして素晴らしいリアリティ。(天坂寝覚)
・元気な赤ちゃんが生まれますように。元気に育ってくれますように。生まれてきたらどんな名前をつけよう、どんな子供に育ってくれるだろう…未来を想像して笑顔になれる句だと思いました。(橙)

15. 生ひて道草の踏まれてばかり 6 0・6
作者:いつ藻(@nadesiko6)
○Umbert Dolby、フロヤマ、みずいろばーど、うらら花、はたらきねこ、ちよ
・打ちごろの球ではある。(Umbert Dolby
・道行く人に踏まれ続ける路傍の草に、強さ健気さを感じさせる句です。雑草ではなく道草としたところに、回り道ばかりの生き方をしている私自身に重なり合い、なんだか励まされているような気がしました。(フロヤマ)
・分かりやすい、です。句の中にスッと入り込める素直さに好感を受けました。(みずいろばーど)
・道のほとりの草は 無造作に踏まれることも多い。でもそれは、草も承知してかあることなのかもしれないですね。(うらら花)
・踏まれるために生きているわけではないし、それで価値がないわけでもない。そこに何の憐憫も、共感すら必要ではない。ただ、今ここにある草を、今ここにいる私が見ている。末期の眼が感じられる句です。(はたらきねこ)
・踏まれてばかり。生まれた意味を考えてしまう一方で、それでも生きていく。そんな粘着質な生き方をしたいな、と思いました。(ちよ)

16. 先生は知らない夢を見ている 11 0・11
作者:天坂寝覚(@sin_kaku)
○もも、木曜星の人、allex、せば、可児、フロヤマ、みずいろばーど、玉虫、はたらきねこ、ニレ、元気な人
・なんとなく理解できます。自分の将来の夢を、先生に言うのは恥ずかしかったなあ…なんて昔を思い出しました。(もも)
・先生は何でも知っているし丁寧に教えてくれるけれど、私の夢の中までは知らないだろうと。メルヘンチックですね。(木曜星の人)
・夢を見ているのは先生なのか、それとも生徒なのか、ちょっと考えさせられる面白い句だと思います。きっと、生徒には未だ分からない夢を見ているのでしょう。 それとも...。(allex)
・ちょっと淫らな想像をしてしまった…(せば)
・将来はミュージシャンになりたいなんて、先生に言えないもんな。(可児)
・「先生には言っていない夢」と初めは思いましたが、「生徒には教えられない先生の夢」とも捉えられることに気付きました。さらには後者の方で、視点が生徒目線ですと「大人への憧れ」を描いた句とも取れます。読む人によって様々に表情を変える句のように感じました。(フロヤマ)
・夢を見ているのは筆者のようで、もしかしたら先生のほうかもしれない。。どのように捉えるかによって、自分が無意識にとっているスタンスに気付ける楽しさを感じました。(みずいろばーど)
・進路指導なんてねぇ、意味ねぇですよね。本当になりたいものはどの大学行けばなれるってもんでもなし。自分にも覚えがあります。このつっぱった気持ち、いつまでも持っててほしい。(玉虫)
・学校という特殊な世界で生きている先生。その煩わしい価値観の押しつけを軽やかに受け流して生きていくしなやかさを感じました。(はたらきねこ)
・いちばん大事な夢というのは進路指導とかいう枠組みの外側にいつもあったような気がします。(ニレ)
・先生が知る由もない夢を生徒の誰かが見ている句なのか。逆に、生徒の知る由もない夢を先生が実は抱いているのか。何通りにも取れる句ですが、僕は授業中に先生の目を盗んで寝るのが得意でした。(元気な人)

17. 生簀の魚が会計を見ている 18 4・10
作者:木曜星の人(@thurstsr)
◎フロヤマ、はたらきねこ、元気な人、畦道 ○いつ藻、Umbert Dolby、allex、せば、うぐいす、京介、ロケッ子、ちよ、白川玄齋、ねぢこ
・この句は、はじめはスルーしてしたのですが、後からだいぶ想像力を掻き立てられ、結局は特選とさせていただきました。お寿司屋さんでしょうか。囚われの身である魚が会計に立つ私を見ている。お金を払うという現実的な場面でもかかわらず、その魚の目が私は気になる。物言いたげな魚の目。それでも腐った魚の目ではない。この魚はまだ生きているのだ。これは私自身ではないだろうか。社会に囚われつつも、それでもなお、もがき生き続けているのだ。いつか捌かれるその日まで。そんなことを考えながら、私は店を後にすることにした。「あ、課長。会計、終わりましたよ。次はお姉ちゃんの店、行っちゃいますか?」なんて、失礼いたしました。(フロヤマ)
・魚にとっては、一瞬にして生死が交錯する瞬間。あるいは仲間の死に対する対価を眺めているのか。そして気付く。今満腹になった自分たちにとっても実は常に死が傍にあることを。そう考えれば、我々人間だって生簀の魚と変わらない。次は誰が殺されて喰われるのか。それは魚にはわからない。もっと大きな意志によって決められるだけ。メメント・モリ。(はたらきねこ)
・好きです。自意識過剰は生き辛いですね。せきしろさんの「魚はこっちを見ていない」を思い出しました。(元気な人)
鮮魚店の一こまでしょうか。実際には当人が魚のことを哀れんでいるのでしょうね。(いつ藻)
・レジに現れた金額は、己の命の値段だ。そう思うと急に、恐ろしくなった。(畦道)
・意表をつくチェンジアップ。(Umbert Dolby
・すし屋とか海鮮料理屋なのでしょうか、会計をしてる最中に生簀の魚がその会計を済ませる一部始終を見ているのでしょう。それとも、ひとつの会計しか分からないローカル出身の上司を揶揄しているのでしょうか。そんな解釈ができて面白い句だと思います。(allex)
・よくぞ見ていた。拍手喝采です!(せば)
・魚のつぶやきが聞こえてきそう。「わしら、なんぼで食われてるんやろか・・・」(うぐいす)
・生簀仲間を食べてしまった者を敵だと思って見ているのでしょうか。ぬめっとした恐怖を感じました。(京介)
・おもしろいようで怖い句。そして、怖いけれどもおもしろい句。値段を見ているのか、払っている人間を見ているのか。魚眼レンズにうつった私、のっぺり顔になってないか心配。(ロケッ子)
・俺は食わんのかって、恨めしい眼をしているのか。食われんかったと安堵しているのか、はたまた次は俺かと怯えているのか。いろんな眼を想像しておりました。(ちよ)
・生け簀の魚はどういう気持ちで会計を見ているかが面白い。(白川玄齋)
・「ねぇ、俺の姉さんうまった?弟いくらだった?」と聞いているのだろうか。生簀の魚からの目線というのは類想が無い。(ねぢこ)

18. 死ぬまでもない一瞬一瞬を生きている 4 1・2
作者:白川玄齋(@syou_gensai)
◎ちよ ○allex、玉虫
・日常の細々とした苛立ち、積りに積もった鬱屈、叫ばずにはいられない憤り…でもまぁ、死ぬまでもないやんね。って。うんうん。時々、瞬いていようって思いました。(ちよ)
・すれすれの人生なのでしょうか。死も考えているけれど、そのすれすれを懸命に生きているのですね。「死ぬまでもない」が面白い表現だと思います。(allex)
・一瞬一瞬を重ねてやがて遠くへ。死ぬまでもない、この決意に敬意。(玉虫)

19. 女装趣味高じて生贄にされる 3 0・3
作者:京介(@princekyo)
○木曜星の人、mojolovich、かもせり
・笑ってしまいました。けど笑い事じゃないですね。男の娘やオネェ流行への風刺でもありますね。(木曜星の人)
・「高じ」すぎだろ!って突っ込みが出ました。(mojolovich)
・生贄ってなに?妙に気になる。(かもせり)

20. これで四度目の一生のお願い 5 0・5
作者:こみおく(@ayukoyama)
○mekeke、うらら花、タケウマ、白川玄齋、橙
・人間の一生は一度しかないけれど、お願いしなきゃならない状況は何度も訪れる…。お願いするごとに人生を小さくリセットしてると都合良く考えてまた新たにお願いします。お願いされる側もこの人のお願いならつい聞いちゃうんでしょうか。四度目ですし。(mekeke)
・お願いはその度に一生に一度な世界で大切なのだ。だから四回にもなってしまう、そんな気持ちがわかります。(うらら花)
・四度目がいいよね♪ 三度目まではありそうだし、五度目は多すぎ。うん、四度目がいいんだなあ♪(タケウマ)
・四度で終わらなそうですね。(白川玄齋)
・四度目でも、その時その時で一生のお願いなんです。気持ちわかります。(橙)

21. 生がいいに決まってる 5 2・1
作者:ちよ(@ChiyoMie)
◎mekeke、田中並 ○うらら花
・相反する句がある!面白い!と思わず吹き出して笑いました。そうですか。私は生椎茸よりは干し椎茸の方が好きですけれど。あ、あまり関係無いですかね。(mekeke)
・改めて言われると、胸を突くものがあります。(田中並)
・やっぱり なんでも 生がいいでしょう。
なんでも、誰でも、そう思うとおもう気持ちが、ズバリ書かれている気がします。(うらら花)

22. リアル人生ゲーム貧乏農場になまあたたかい風吹く
作者:タケウマ(@take575)

23. 生くか還るか夢のなか我を呼びたる声懐かしき 4 1・2
作者: みずいろばーど(@tear_dream)
◎いつ藻 ○allex、橙
・生と死について、現実的に感じました。(いつ藻)
・生死の境にいたのでしょうか。懐かしき家族の呼ぶ声がどちらかは分かりませんが、きっとそんな風に聞こえるのかなと想像させられる面白い句だと思います。(allex)
・生死を彷徨っている夢の中、自分を呼んでくれる声がしたら帰らなくちゃと思いますよね。還ってきてくれてよかった。(橙)

24. おまえのこと生ハムメロンくらい許せない 11 1・9
作者:うぐいす(@uguisu_asobo08)
◎うらら花 ○もも、畦道、木曜星の人、mekeke、せば、玉虫、白川玄齋、ねぢこ、橙
・生ハムとメロン、この取り合わせに腹が立っている…それ以上な感じに相手の事が許せない気持ちが伝わってきて面白いです。(うらら花)
・しょっぱい生ハムと、甘いメロンというギャップが良いのかもしれないと思ったのに、口の中に広がる残念な感じ。それが人間だと、果たしてどうなんでしょう。飾らないで、普通にしているほうが良いのかもしれませんね。(もも)
・生ハムメロンの鼻持ちならない感じ。そして実際食べてみると案外美味しい、という悔しさ。こういう人、確かにいるという気にさせる、巧みな対比だと思う。(畦道)
・嫌味な小金持ちなのでしょうか、その相手の人は。詠み手の人にもなんだか許せない気もちが湧いてきますが、面白いです。(木曜星の人)
・別にしょっちゅう食べるもんじゃないし、むしろ一生のうちで食べるかどうかも分からない生ハムメロン、そのくらい縁もないしどうでもいい存在だけどどうしても許せない、私も許せません。(mekeke)
・生ハムメロンを食べたこと無いけど、例えるものが斬新。(せば)
・くすっとした。自分は生ハムメロンも酢豚にパイナポーも好きです。(玉虫)
・メロンに何で生ハムなのか、私もわからない。(白川玄齋)
・絶妙な塩加減と甘み。美味し過ぎると許せない様に、愛おし過ぎて可愛過ぎてと許せないというのがよく伝わる。(ねぢこ)
・私も生ハムメロン許せません。余程相手を許せなかったのか、それとも…それ程気にしていないことなのかどちらだろうと思いました。(橙)

25. 赤く大きく生命と書いたビルが暮れる 18 5・8
作者:畦道(@azemichi66)
◎さはらこあめ、木曜星の人、うぐいす、ニレ、白川玄齋 ○こみおく、Umbert Dolby、田中並、せば、mojolovich、はたらきねこ、タケウマ、元気な人
・やられた、と思っちゃいました。自分の尻は自分で拭け、という言葉が浮かびました。説明しすぎず遠回しすぎず、上手い表現です。 ただひとつ、「暮れる」が気になる。放哉っぽい。(さはらこあめ)
・僕のイメージではビルが逆光になっていて、生命の文字が赤く薄暗く不気味な感じです。血液の赤。命の重圧感。そして、その生命の文字は不幸を示唆しているわけでして、でも本当は大切な人のためのもの。生きている人間の恐ろしさを感じました。(木曜星の人)
・保険会社のビルでしょうか。「生命」なんて重い言葉なのに、どこか白々しい感じがします。生命にお金が絡むことの空しさと、日の暮れる風景がマッチしていると思います。(うぐいす)
・映像が強烈に浮かびました。生命保険会社のビルでしょうか。映画のような臨場感。最高です。(ニレ)
・生命をそのまま詠じているわけではないのに、一番生命を感じた。(白川玄齋)
・保険会社の看板に他意はないが、夕暮れの中「生命」の文字が作者の目にクローズアップされてくる。見たままの風景を詠んだところが好きです。(こみおく)
・沈みゆく日本を連想させる情景が目に浮かぶ。(Umbert Dolby
・一枚の写真を見ているような気持ちになったが、生命保険の広告であることがそこはかとなく笑いを誘います。(田中並)
・生命保険のビルかな。夕暮れこの生命にあの生命を思うのも良いなあ。(せば)
・生命保険会社のビルでしょうか?景が眼の前に迫ってきます。(mojolovich)
・保険会社が儲かる仕組みがよくわかりません。斜陽の中にあるのは保険産業か、日本経済か、それとも私の生命そのものなのか。(はたらきねこ)
・なんとなく、人類の黄昏を連想しました。普通に読めば、保険会社のビルの夕景なんですけどね。「赤く大きく」が妄想を拡げてくれた気がします。(タケウマ)
・そりゃまあ暮れますよね。でも確かに暮れてほしくはないんですよね。ただまあ暮れますよね。(元気な人)

26. たっぷんたっぷん生コンたっぷん 13 3・7
作者:Umbert Dolby(@swing1702)
◎京介、ねぢこ、もも ○こみおく、可児、mojolovich、かもせり、玉虫、タケウマ、天坂寝覚
生コンクリートなのか、生こんにゃくか。おそらく前者でしょうが、リズムが良いですよね。そのうち硬く固まるコンクリートがまだ柔らかくて波打ってる感じが良い。賢い人が、わざとアホっぽく言ってるように思いました。(京介)
・業界関係者としては見過ごせません。うちの若いもん連れて「き、貴様!日本は田中角栄生コンで出来ていると知っての狼藉かあ!!」と叫んでもこの方は続けるでしょう。たっぷんたっぷんと。つまりは客観の勝利という事です。(ねぢこ)
・語感がとても良く、谷崎潤一郎の「天ぷら食いたい」や、俵万智さんの白菜の歌をほうふつとさせます。昼下がり、現場で働く人たちの健康な体とおおらかな心を感じます。(こみおく)
・すごく好きです。今度、ミキサー車を見かけたら、きっとこの句が頭に浮かびます。ただの生コンなのにこんなに面白くて、哀愁があって、エロい感じがするのは、何故でしょう。(もも)
・コンクリを打った地面には必ず犬の足跡がついてるんですよね。「たっぷんたっぷん」の繰り返しの心地よさ。リズムが良いですね。(可児)
・大量の生コンです。しかも固まってない。おそらく悪いことに使うんですよ。きっと。(mojolovich)
・どうしても目をそらすことが出来ない圧倒的な存在感。(かもせり)
・度肝を抜かれた。そうきたか!そして大笑い。いつまでも口ずさんでいたい「たっぷんたっぷん生コンたっぷん♪」(玉虫)
・これ、好きだなあ♪ (タケウマ)
・『たっぷん』というオノマトペを持ってきたのが素敵。こういうユーモアというか愛嬌というかを僕は持っていないので羨ましい。景として、「誰かを埋めるために大量の生コンを楽しそうに運んでいる図」が浮かんだけれど、それは多分僕の邪推。(天坂寝覚)

27. 知らず生えてきた親知らず生まれ生きる
作者:ニレ(@SwayNiLe)

28. 生々しさばかりが浮かぶ湯船だ 12 1・10
作者:さはらこあめ(@__koame__)
◎mojolovich ○畦道、木曜星の人、allex、mekeke、フロヤマ、うらら花、京介、ロケッ子、ニレ、天坂寝覚
・垢や汗・毛髪などの生命の残滓を生々しいと感じるのは凄いと思いました。また、別の方面に連想を伸ばすと、どことなくエロスも感じます。(mojolovich)
・年のせいなのかなんなのか、湯船になんだかよくわからないものが浮いてしまう。人間の出汁だと、私は思うようにしている。(畦道)
・最後あたりの湯船にはいろんなものが浮いてますよね。だからいつも最初に入るようにぼくはしているのですが、最近垢をとってくれるボールみたいなのを入れているので大分きれいになりました。(木曜星の人)
・ちょっと語順が変わると更に軽快な句になる良い句だと思いました。(allex)
・自宅の湯船を想像してもそれなりにえらいこっちゃなと感じましたが、大衆浴場だともうカオスですね。すっきりして出られないんじゃないかと不安になります。勝手な妄想ですみません。(mekeke)
・年を取っていくと、古い角質やら抜け毛やらと、自分が入った後の湯船が気になります。おそらくは、そういったことを詠んだ句でしょう。一日の疲れを取る癒しの場所でありながら、実は非常に生々しく現実的な場所。鋭い着眼点に脱帽です。ただ、ただ共感するばかりでした。(フロヤマ)
・そんな湯船もあっていいとおもいます。現実は厳しいから。(うらら花)
・湯船ではリラックスしたいもの。いい気分で入れてない感が良い。(京介)
・まさに、生々しい句。今日だけじゃなく、また明日も生々しさを湯船に浮かばせるのだろうな。この次、お風呂どうぞーとかって言われたらどうしよう。にっこり笑ってシャワーで済ますしかない。(ロケッ子)
・何なんでしょう、このねっとりとした魅力のある句は。湯船に満たされたお湯までも軽くとろみがついているかのようです。(ニレ)
・『生々しさ』とはまたずいぶん抽象的なと思ったが、その後に『湯船』と来たことで『生々しさ』に確かな手触りを感じた。風呂でも浴槽でもバスタブでもなく、『湯船』だからこその実感だと思う。(天坂寝覚)

29. 転校生に逢いたくてセピア色の教室さがす 3 1・1
作者:allex(@chang_65_21)
◎可児 ○ニレ
・放課後の教室にあなたの姿は見当たらなかった。卒業アルバムのセピア色の写真の中で、あなたは微笑んでいた。「セピア色の教室」という現実と非現実の間にしか存在しない世界を描いた、自由律ならではの作品。素晴らしいです。(可児)
・最初、映画『転校生』の一場面を追いかける旅行者の姿か、と思いをめぐらせてしまいましたが、あぁ、これは違うなぁ、ストレートに甘酸っぱいノスタルジーな句なのだなぁ、と思い至り、この句のことがもっともっと好きになりました。(ニレ)

30. ひとりで生きてるわけじゃなかった窓の月 10 1・8
作者:はたらきねこ(@hatarakineko_)
◎橙 ○いつ藻、さはらこあめ、田中並、せば、可児、かもせり、タケウマ、天坂寝覚
・日々孤独を感じていた作者にひとりじゃないと思わせる出来事が。窓から見える黄色い月が微笑んでくれているように思えたのでしょう。いい句だと思いました。(橙)
・うちひしがれている所に、月光に癒されてゆく。そんな光景が浮かびました。(いつ藻)
・誰かの助けを借りないといけない状態が伝わる。ただ、表現が説明的。さらりとしすぎている。句が無表情。潤んだ表現が涙一筋分ほしい。(さはらこあめ)
・これは単純に、一番共感した句であったのでとりました。(田中並)
・病室からの光景かな。上手くまとまってます。(せば)
・きっとあの人も同じ月を見てるんですよ。(可児)
・月、特に満月は自分のこころを写す鏡であるように感じます。(かもせり)
・窓の月にひかれます。ちょっと過剰かなあと思う気づきをストンと落ち着かせていますね。(タケウマ)
・恐らく『ひとり』が指すものは自分なんだろうが、誰か他の人だと考えてもみて、そうすると失恋だとかを想起した。もちろんそれは曲解で、解釈の筋道としては自分を指しているとした方が真っ当だろうけれど。(天坂寝覚)

句会1本目 結果発表

句会にご参加いただきました30人の皆さま、お待たせいたしました! 1本目の結果が出ましたので、発表させていただきます。全員の総合得点を足して630点になったということは、計算間違いはしていない、はず…。もし、おかしなところがありましたらご指摘をお願いしますねー。

選評の詳細につきましては、今回も別記事に引き続きアップしておりますので、そちらもあわせてご覧ください。

そして今回からは、結果発表後のやんややんやをするための場所を別に設けました。90句ともなると、前回のようにtwitter上に全句を流すのもためらいますので、皆さんが気兼ねなくコメントし合えるように、こちらをご用意いたしました。

 → >>>自由律俳句 句会「千本ノック」二次会<<< ←

ご投句いただきましたものを、作者名を添えて1つずつアップしております。選句外評、感想、アドバイス、ツッコミ、文句などなど、気になっている句に対して、遠慮なくコメントしてください。Twitterと違って、自分の句にコメントが入ったことを自動的にお知らせすることはできませんので、句会終了2週間程度はちょくちょくのぞいてくださると嬉しいです。(時々、「千本ノック」の方から「コメント入ってますよー」とおせっかいなお知らせをするかもしれません)


それでは、長い前置きを乗り越え、いざ結果発表!


お題それぞれの最高得点は……

まずは、3つありましたお題ごとに最高得点を獲得した句と次点の句を発表します。皆様からいただきました選句をもとに、「特選=2点、正選=1点」で計算しております。

今回は割れました! いや、割れましたというより並びました!

▼指定語「生」 最高得点句

  生まれてくる子よ腹を蹴りなさい
  
  獲得点数:18点
  作者:フロヤマ

  生簀の魚が会計を見ている
  
  獲得点数:18点
  作者:木曜星の人

  赤く大きく生命と書いたビルが暮れる
  
  獲得点数:18点
  作者:畦道

  ▽次点句

  先っちょに何か生えてきた
 
  獲得点数:13点
  作者:可児

  たっぷんたっぷん生コンたっぷん
 
  獲得点数:13点
  作者:Umbert Dolby

※トップが複数あるので「次点」というのも少しおかしいかもしれませんが、一応、今回も次点の位置にある句もご紹介しておきますね。

▼「旅」しばり 最高得点句

  偶然を装ってふるさと

  獲得点数:17点
  作者:うぐいす

  誰が置きし自然薯やろか無人

  獲得点数:17点
  作者:Umbert Dolby

  みんな疲れてバスは西行

  獲得点数:17点
  作者:畦道

  ▽次点句

  ひなびた宿のズッキーニの天ぷら

  獲得点数:11点
  作者:こみおく

▼雑詠 最高得点句

  月がきれいだ土鍋に蓋がない

  獲得点数:19点
  作者:こみおく

  ▽次点句

  目印の鉄工所が消えた曲がれない

  獲得点数:16点
  作者:ロケッ子

◎今回の句会における最高得点獲得句
  月がきれいだ土鍋に蓋がない(19点)
  作者:こみおく


終結

そんなわけで、今回の句会結果は次のようになりました。
(※MVP=総合獲得点数が最も高かった作者、ホームラン王=特選に選ばれた数が最も多い作者、ヒット王=正選に選ばれた数が最も多い作者)
 

 ▼MVP     → 畦道(44点)
  
 ▼ホームラン王  → 畦道(10個)

 ▼ヒット王    → 木曜星の人(28個)

ちなみに、総合獲得点数上位5名(神5)は、「畦道(44)、木曜星の人(40)、こみおく(35)、UmbertDolby(35)、うぐいす(34)、ロケッ子(34)」でした。あ、同率が多いので6名ですね。神6。


選ばれました皆様、おめでとうございます。そして、ご参加いただきました皆様も、ありがとうございました&おつかれさまでございました! 作者の正体、それぞれの選評を味わった後は、どうぞ二次会へお越しください。

【結果】雑詠

すみません〜! 制限字数にひっかかったので、過去記事編集で「雑詠」の選評を載せます。


1. 富士額のわたしの富士を見にきて 3 0・3
作者:うらら花
○Umbert Dolby、ねぢこ、橙
・額の富士を前面に押し出した真っ向勝負。好感。(Umbert Dolby
・最近の子は富士額恥ずかしいから剃刀で剃り落とすらしいです。娘が言ってました。けどこの子はそんな小さな小さな富士額を自慢に思っていて、見に来てと言う。いじらしいです。「旅」で詠んでいたら間違い無く特選でした。(ねぢこ)
・私に会いにきて欲しいのに素直じゃない…富士山ではないけれど、作者も富士額で家でも富士が見えるよ、というのがなんだかいじらしいと思いました。私も富士額です。(橙)

2. 王子様さるすべりにのぼる 2 0・2
作者:もも
○Umbert Dolby、可児
・へんな王子様。(Umbert Dolby
・殿下、危のうございます。お止めなさいませ!(可児)

3. 洒落た料理褒める戸にカレーの匂いする 3 0・3
作者:元気な人
○みずいろばーど、天坂寝覚、ちよ
・日々、慎ましく生活している女性の、精一杯おしゃれした姿が愛おしいです。(みずいろばーど)
・この句のカレーには逆らえない。(天坂寝覚)
・カレーの匂い。3500円のではなく、普通の家庭の匂い、母の匂い。その匂いと洒落た料理を出す店とを隔てる戸、なのか。洒落た料理を出す家としての戸なのか。どちらにしても面白い。(ちよ)

4. 台風予報と犬の寝言聞く日曜の午後だ 5 1・3
作者:玉虫
◎さはらこあめ ○もも、うらら花、天坂寝覚
・犬が寝ていると言うことは、その人物の居る場所には台風は来ない。災害の前は動物は落ち着かなくなるから。平和な時間なのだろう。しかし予報を聞くというところが、他人事ではないという気持ちが伝わってくる。上手い。(さはらこあめ)
・のんびりとした時の流れを感じられる句。台風の日は、散歩にいけなくて、犬も暇そうにしています。(もも)
・日曜日の午後はのどか…そんな風景がうかんできます。(うらら花)
・ただでさえ気怠い日曜の午後がさらに気怠い。それにしても犬って寝言を言うのか。(天坂寝覚)

5. ビンゴだが黙っていよう 13 1・11
作者:木曜星の人
◎京介 ○畦道、Umbert Dolby、mekeke、田中並、mojolovich、ロケッ子、タケウマ、ニレ、白川玄齋、元気な人、ちよ
・商品が気に入らないからスルーなのか、出る杭は打たれる空気なのか。(京介)
・なんというストイックさ。渋い、渋すぎる!(畦道)
・奥ゆかしい。(Umbert Dolby
・司会者が「ビンゴになりましたら大きな声で「ビンゴー!」といってその場に立って下さい」と言ったあの日からずっとビンゴと言えぬままです。(mekeke)
・面白い。多分そうしなければならない立場にいるか、雰囲気なのだろう。(田中並)
・「なぜなんだ!」あるいは「恥かしがりか!」という突っ込みがいくつも浮かんで楽しいです。(mojolovich)
・目立ちたくないのかな。どうか隣に、おせっかいの人がいて、「ちょっと、あなたビンゴだわよ! はーい、はーい! ビンゴの人いまーす!」とかって勝手に言ってくれますように。必要以上に注目を集めますように。(ロケッ子)
・うん、そういうときってありますよね♪(タケウマ)
・あぁ、ビンゴになっちゃったよ、でもこのノリの中には入っていきたくねぇなぁ…。なんて思いつつお酒をちびりとやってパーティーを眺めている私を夢想。積極的に拒絶するわけではないけれど、なんとなく今のままで眺めていて充分にそれで良い、という気持ち。なんか、好きです。この句。ただコミカルなだけじゃないところが特に。(ニレ)
・状況として時おりあります。(白川玄齋)
・こういう人いるんでしょうね。今行くのは早すぎて目立ってしまうから、もう少し頃合いを見て名乗りでるんでしょうか。自己主張の強くない利他的な方みたいですが、でもちゃっかりビンゴカードを捲ってるのでとても人間的で愛らしいですね(元気な人)
・思わず、くすっ(-^艸^-)ってしてしまいました。平坦な顔をして、あえて黙っておきたいですね。(ちよ)

6. おなら我慢してないで結婚しよう 14 2・10
作者:かもせり
◎畦道、うぐいす ○mekeke、こみおく、可児、もも、フロヤマ、タケウマ、白川玄齋、元気な人、ねぢこ、橙
・結婚当初、もうおならを我慢しなくていいと思い、空気清浄機の前で盛大にぶっ放していた。センサーのランプが、緑から赤に変わるのが面白かったからだ。しかし一週間も経つと、妻から「それはやめて」と叱られた。結婚とは、おならし放題ではないのである。(畦道)
・最高に好きですこの句!すべてを受け入れて、おならまで愛してくれる覚悟なのですね。それもどうだろう。でも私なら絶対イエスです。(うぐいす)
・結婚してもいいけれど、それと屁とはまた別問題だと言いたい…。保っていたい一線が人にはあるんだ…!(笑)(mekeke)
・プロポーズの言葉としては最悪!ですが、この人となら肩肘はらずに楽しく生活できる。2人がつくるであろう大らかで明るい家庭が予想される句です。(こみおく)
・こういうプロポーズ、いいね。(可児)
・すいません、結婚する前からおならしてます。(もも)
・特に女性は彼氏の前でおならをするのは、ひどく恥かしいことでしょう。でも結婚してしまえば、恥ずかしくなくなるものかもしれません。シニカルな視点に思わずニヤリです。(フロヤマ)
・うん、我慢しないほうがいいですよ♪(タケウマ)
・そういうことなのか…(白川玄齋)
・一世一代の台詞の前に何言ってる(考えてる)んですかね。落差がとても人間らしくて良いです。(元気な人)
・最高のプロポーズの言葉。優しいな〜と思いました。返事はもちろんおならで。そしておならに乗って新婚旅行。(そんな昔話あったな)(ねぢこ)
・好きな人のおならなら笑ってすみますよね。おならどころではなく、なんでも言い合える二人でありますように。(橙)

7. 眠る子の鼻先冷たい冬の入口 15 2・11
作者:ちよ
◎タケウマ、ねぢこ ○いつ藻、allex、mekeke、田中並、せば、うぐいす、みずいろばーど、はたらきねこ、フロヤマ、天坂寝覚、橙
・鼻先で切るんですよね? どこで切るのか迷いつつ、なんともいえない空気感にひかれました。(タケウマ)
・幼子を胸元に抱き寄せれば小さな鼻先から点のような微かな冷たさを感じる。言葉は無くても冬の訪れを語る幼子。ああ、もうすぐお前の知らない冬が来るね。情景の美しい句。迷いなく選びました。(ねぢこ)
・秋だと思っていたら、冬の気配が。ということでしょうか。愛情を感じる句ですね。(いつ藻)
・特選と悩んだた句です。お昼ねでしょうか、それとも寝かしつけた後の光景でしょうか。子供の鼻先って冷たくて少し赤らんだりして可愛いいですよね。まるで写真で見ているように光景が浮かび、良い句だと思います。(allex)
・小さな鼻先を突っついて笑うお母さんの姿が浮かびました。秋になったばかりですが、あっという間に冬になってしまいますね。私に子供はいませんが、子供がいると四季を感じる機会が増えるのでしょうか。何かいいなあ風景だなと思いました。(mekeke)
・この作者は、眠る子の鼻先に触れたのだと考えたら、愛情を感じました。(田中並)
芥川龍之介の句を思い出す。(せば)
・季節はこんなところからもやってくるのですね。かわいらしい寝顔が浮かびます。(うぐいす)
・映像が浮かぶような作品でした。すやすや眠っているけれど、その小さな鼻先が驚くほど冷たくなっている。たぶん赤みを帯びて。風邪をひかせないように注意する季節……あれこれ思い巡らす母親の表情にほっこりします。(みずいろばーど)
・子の眠りを守る親の愛情が感じられました。(はたらきねこ)
・母の愛情を溢れるやさしい句ですね。鼻を冬の入り口になぞる辺りに詩的なものを感じました。秋は何かと人恋しくなる季節です。こういう句には撃沈されます。(フロヤマ)
・冬の先触れを逃さず捉えた。『眠る子の鼻先』に冬を見つける視線が素晴らしいと思う。(天坂寝覚)
・お子さんの寝顔を眺めながらこれまでのいろんなことを思い出している作者。楽しかった四季が過ぎいつのまにかそろそろ冬、子供の健康を気遣う優しい句だと思いました。(橙)

8. 衣替えしはって社会人のつもりどすか 5 1・3
作者:Umbert Dolby
◎木曜星の人 ○うらら花、はたらきねこ、白川玄齋
・京都の人は手厳しいな。グサッときますね。すみませんでした。(木曜星の人)
・京都弁をおりこんだ作品ですが、ユニークな感じで面白いです。社会人になり急に大人びた君への忠告…みたいな。(うらら花)
・はんなりとした毒気が好きです。好きだけどつきあいたくはないなあ。洋服を着た犬猫に言っていると考えるとほほえましくもありますね。(はたらきねこ)
・就職活動になって変貌した同級生は多いです。(白川玄齋)

9. 尻がデカすぎて迷う 4 0・4
作者:mojolovich
○Umbert Dolby、allex、京介、元気な人
・了解。心ゆくまで悩んで欲しい。(Umbert Dolby
・これは電車の中の光景をイメージさせました。ひとり分のスペースが空いているのだけれども、自分のお尻が収まるのか否か迷って座ることを躊躇しているのでしょうか、面白い句です。(allex)
・お尻のサイズと相談して通れる道を探しているのか。かわいらしい。(京介)
・状況が全く掴めませんが、十中八九悪い方だと思いました。(元気な人)

10. 泣きべそかいて夕顔の花ざかり 11 3・5
作者:いつ藻
◎せば、もも、天坂寝覚 ○allex、mojolovich、うぐいす、玉虫、フロヤマ
・こんなこと言ってはなんだけど、良い景色だと思う。子供の頃を思い出した。(せば)
・夕顔の花言葉は「はかない恋」というのを思い出しました。夕顔の白い花が、優しい気持ちにさせてくれるのに、どこか切なさが残る句です。(もも)
・なんとなく調べてみたら、夕顔には「儚い恋」、「秘められた慕情」といった花言葉があるらしく、それを踏まえての句と読むと、景が質感を伴って立ち上がってきた。『泣きべそ』と言うからには恋に破れたのだろう。しかしその周りでは対照的に、夕顔が鮮やかに花開いている。その恋の儚さが念押しされているかのようで少し哀しいが、だからこそ美しいのだろう。(天坂寝覚)
・夕顔が満面の笑みで咲いている中、子供が泣きべそかいて歩いているのでしょうか。その対照的な光景が浮かんできて良い句だと思います。(allex)
・とても綺麗ですよね。泣いているのはなんとなく童女な感じ。(mojolovich)
・今日は泣いてても、明日はきっと笑顔の予感。(うぐいす)
・親に怒られた夏休みのある夕方を思い出しました。いいから早くおうちへお帰り。ご飯作ってお母さんは待ってるよ。(玉虫)
・友達とケンカでもしたのでしょうか。泣きべそかいて帰る家には、きれいな花、そして水を遣るやさしい母さん。なんて、少し想像を膨らませすぎたかもしれません。素敵な句です。(フロヤマ)

11. 十月のあなたの描く放物線 4 2・0
作者:タケウマ
◎いつ藻、可児
・どのような放物線でしょうか。コンパスで描いたようにはいかなそうな。(いつ藻)
・キャッチボールしているあなたの姿をずっと見つめていました。定型句だけどこれは良い恋愛俳句だと思いました。すてき!(可児)

12. 背中の糊は乾き私小説ようやく散りゆく 3 1・1
作者:ニレ
◎玉虫 ○田中並
・「終わる」ことの安堵感を美しい表現で伝えていると思いました。本好きにはぐっとくる直喩。文句なしの特選です。(玉虫)
・背中の糊は正直どういう状況なのか、私には分かりませんでしたが、私小説ようやく散りゆく、というところに詩を感じました。(田中並)

13. 何か良いことあるかと聞かれる恐怖 8 0・8
作者:白川玄齋
○さはらこあめ、畦道、木曜星の人、可児、うぐいす、京介、ロケッ子、みずいろばーど
・思わずあるあると言ってしまう。そうそう良いことなんてあるわきゃないし、聞く人も聞かれる人も同じ。上手いと思う。(さはらこあめ)
・こういうことを聞いてくるのはたいてい、貧乏神に疫病神、悪魔の下回り等である。そういったものに取り憑かれる恐怖を、恐怖という言葉を使わず表せたらもっと良かったと思う。(畦道)
・良いことなんかないですよ。ともいえませんし。いや、まあ。(木曜星の人)
・何も言わないでいてほしい、そっとしておいてほしいときもありますよね。(可児)
・憂鬱、を通り越して恐怖ですらある、と。こんなふうにしつこく聞いてくる人には、もしいいことがあっても教えたくないですね。(うぐいす)
・その話題の引き出しが空の状態。どよんとした空気になりそう。(京介)
・恐怖なんだなぁ。おもしろいなぁ。聞かれる立場じゃなくて、聞いてしまっていた立場の私としましては、ただただごめんなさい。(ロケッ子)
・懸命に隠しているはずが、かえってアピールする結果になってしまう可笑しさを感じました。隠すも隠さないも、『ある』からこその懸念でしょうから。(みずいろばーど)

14. 黒い雲をなめる月 5 1・3
作者:さはらこあめ
◎ニレ ○いつ藻、かもせり、玉虫
・この月は三日月でしょうか。なんかそんな気がします。今回の全ての句の中でこれがいちばん好きです。いさぎよくて、それでいて艶やかな触感まで伝わってきます。こんな一刀彫りのような句はすごく好きです。(ニレ)
・叢雲でしょうかね。黒い雲と相まって実際の光景が浮かぶようです。(いつ藻)
・満月の下部分だけ雲から顔を出してあたかも舌のように見える光景でしょうか。あいにくの天気でも少しでも月が顔を出してくれるとうれしいですね。(かもせり)
・お月様が舐められるんじゃなくて舐めるのがいいと思った。青白い美女としての月じゃなくて魔物みたいな月。いいいいです。大変好みです。(玉虫)

15. 声届かぬほど雨ずっと寄添う 3 0・3
作者:フロヤマ
○さはらこあめ、かもせり、橙
・「ほど」は無くても良い。伝わる。傘をささずにひとり雨の中に佇む絵が浮かぶ。雨が浄化してくれているようだ。(さはらこあめ)
・何もかも雨のせいにしていいと思います。(かもせり)
・土砂降りの雨が二人の会話の邪魔をするけれど、それでも寄り添っていればお互いの体温が伝わってくる。雨の冷たさ、寄り添うことの暖かさ、と温度の伝わる句でした。(橙)

16. さわらないでを醸しつつにじり寄り 1 0・1
作者:mekeke
○いつ藻
・これはにじり寄るしかないですよね。(笑)(いつ藻)

17. さよならも云わず独りで帰りきて葱を刻めりとりとめもなく 2 0・2
作者:みずいろばーど
○玉虫、ねぢこ
・短歌になっちゃってる気もしますがこの世界観が大好き。黙ってすっと帰って、帰宅後に繰り広げられるいつもの光景。こういうのに超弱いんだなぁオレっちは。(玉虫)
・辛い別れがあった。バックを置くと同時に包丁を握り、ただ葱を刻む。葱には平常があるから。けど後から後から溢れる涙が葱落ちる。(いつも某自由律会の代表に汚されている葱がこんなにも鮮やかに蘇りました。)(ねぢこ)

18. 父親のコスプレ写真が出てきた 6 0・6
作者:可児
○Umbert Dolby、こみおく、はたらきねこ、タケウマ、白川玄齋、ちよ
・父親も一個の人間であることに気づいている。悟りの一句。(Umbert Dolby
・出てきちゃったものはしかたない。(こみおく)
・故人となった父の遺品を整理していたら出てきたのですね。通夜を終え、改めてその死を受け容れようとしている家族のために、父が遺した粋なはからいだったのかもしれません。それにしてもあんなに厳格だった父がセーラーマーズだったとは。(はたらきねこ)
・それは、マズイ♪(タケウマ)
・こんな内容を投句してもよいのか…ひたすら爆笑です。(白川玄齋)
・面白いけど、いたたまれないこの感じが好きです。(ちよ)

19. きっと揺れている金木犀のした 11 1・9
作者:田中並
◎ちよ ○いつ藻、さはらこあめ、せば、もも、タケウマ、ニレ、白川玄齋、元気な人、橙
金木犀がうちの庭にあるんです。この時期溢れるこの香りから、オレンジ色の小さな花々が秋の風に揺さぶられている様子を想像して。その下で何があるのかをまた夢想する。素敵な句だなぁって。(ちよ)
金木犀の下に揺れているものとは下草でしょうか。それとも貴方の気持ちでしょうか。(いつ藻)
・匂いばかりに集中し金木犀そのものは見ず、といったところか。揺れているのはその人か金木犀か、想像をふくらませる。(さはらこあめ)
・きっと揺れているということは、そこに居ないのか?金木犀の下とは?揺れているのは作者かな。(せば)
・恋愛小説の一ページのような、とても綺麗な句ですね。(もも)
・「きっと」がうまいんだな、きっと♪(タケウマ)
・何かささやかな草花でしょうか。いせひでこさんが水彩画で描いたら素敵な一場面になるだろうなぁ、なんて感じながら句に浸らせていただきました。(ニレ)
・昔を思い出して懐かしい。(白川玄齋)
・「揺れている」が何に係るのか考えると楽しいですけど、「きっと」なので自分のことではないんでしょうね。選んでいる言葉のせいか、どこか切ないのがいいです。(元気な人)
・橙黄色の小さな花が甘い香りを漂わせている…金木犀が風と戯れているような、ふっと香って花の色がパッと映るいい句でした。(橙)

20. 母を母とは思わぬ息子でして 4 0・4
作者:せば
○畦道、こみおく、mojolovich、かもせり
・全く悪びれないのがいい。(畦道)
・そんな息子がかわいくてしょうがない母。(こみおく)
・刑事ドラマのワンシーンが出来そうで、面白いです。(mojolovich)
・一見ひどいことを言っているようですが、仲の良さが背景にあるような感じがします。(かもせり)

21. 研げば流れる米も留まる米も 3 0・3
作者:ねぢこ
○せば、ロケッ子、天坂寝覚
・何と無く比喩っぽい表現が気になった。(せば)
・流れる米と留まる米との違いは何なのだろう。ただ単に場所なのか、こちらの力の加減なのか。なんか奥深い意味が隠れているような気がして惹かれました。何も隠れていないとしても好き。(ロケッ子)
方丈記の一説がふと思い浮かんだ。無常はどこにでもあり、流し場にもあるのだなあ。(天坂寝覚)

22. 目印の鉄工所が消えた曲がれない 16 4・8
作者:ロケッ子
◎うらら花、かもせり、はたらきねこ、元気な人 ○こみおく、可児、mojolovich、せば、うぐいす、玉虫、フロヤマ、ねぢこ
・こんなことがよくありそうな感じで面白いです。目印がなくなり迷ってしまう。曲がるきっかけをなくして、遠くへそしてまた迷ってしまう。シーンが浮かびます。(うらら花)
海外移転でもしたのでしょうか。鉄工所という言葉にこれほどノスタルジーをかき立てられるとは思いませんでした。またひとつ昭和が遠くなっていく感じがします。(かもせり)
・方向音痴としてもかわいい。無くなった鉄工所に人生の悲哀もある。経験に照らせば、きっと目的地は愛する人の家なのでしょう。勇気を振り絞ってそこへ向かっている。しかしその勇気は些細なことで挫けてしまう。本当は道なんてわかっているのに。通い慣れた道なのに。目印が無くなったことを言い訳にして辿り着かないでいる。鉄工所があったころは付き合っていたのかもしれません。あれからどれだけの時が過ぎたのか。失われた鉄工所が彼女の愛を象徴しているように思えて、結局逢えずに帰るのです。(はたらきねこ)
・勝手に目印にしてたことなんてまるで意に介さずに消えてしまうのですよね。ただ消えたことに気づけるなら曲がれますよね、多分。そこが面白かった。あと鉄工所を目印にしていたのがどこか良かったです。(元気な人)
・鉄工所が閉鎖されたことにはやむをえない事情があったろう。でもがんばってほしかった。こんな理由で。(こみおく)
・昔住んでいた街を車で通りかかったら、すっかり様相が変わっていて道に迷ってしまった。ちょっと寂しいような、少し不安な光景を思い浮かべました。(可児)
・神経質か!っていう。目印の鉄工所ってなんか好きです。(mojolovich)
・時は流れて、色々変わっていくのだな。(せば)
・最近、うちの近くの病院が取り壊されて、まさにこの句の感覚です。(うぐいす)
・久しぶりで巡ってみた散歩道、いきなり更地が現れててビックリしたりしますよね。普通の場所にも刻一刻と時間は流れている。変化は止められない。いいいいです。(玉虫)
・いつも目印にしていた建物が急に消えてしまうこと。あります。行きなれた道なのに、急に知らない道のように思えたりも。町工場が次々と消えゆくこの時代。曲がれない角が増えるばかりです。哀愁の句ですね。(フロヤマ)
・当たり前にそこにあると思っていたものが、不意に無くなる虚しさ。思いがけず自分はそれに頼っていたのだと知る。(ねぢこ)

23. もう消えたアザの話まだ続くのか 6 0・6
作者:うぐいす
○畦道、木曜星の人、allex、うらら花、京介、はたらきねこ
・何度も聞いた、長い話。しかも「その話、前もしたよ」と言いづらい関係。そのもどかしさを一句に仕立てた。簡潔ながら味わい深い。(畦道)
・とくに子供のころのアザは成長につれて薄くなって、いつの間にか分からなくなってしまいますからね。体だけじゃなく。(木曜星の人)
・心の呟きですね。一旦解決したはずの話を蒸し返して、また話を始めている。「まだ...その話...」って心の中で呟いているのでしょうか、面白い句だと思います。(allex)
・くどく話をする人がいる。それを端的に表しているかなとおもいました。(うらら花)
・話に飽きたウンザリ感がわかる。(京介)
・うんざりした感じがよく出ています。結論を急ぐ男性脳と今この時を共有しようとする女性脳の違いとか言うと怒られるでしょうか。(はたらきねこ)(はたらきねこ)

24. 月は喰われたとこどもには教える 8 1・6
作者:天坂寝覚
◎田中並 ○allex、mojolovich、もも、京介、ロケッ子、はたらきねこ
・今日は名月だからと子供と外に出たら、曇り空であった。子供には月は食べられたんだよと伝えた。なんともロマンチックで、またストーリーのある句だと思いました。(田中並)
・まだ幼い子供から、月の満ち欠けについて尋ねられたのでしょうか。論理的に話してもまだ理解する筈もなく、あの漫画のように喰われたということで説明したのでしょう。懐かしく面白い句だと思います。(allex)
・見えなかったんでしょうか。月蝕でしょうか。ともかく、大人の汚い部分丸出しな感じが素敵。(mojolovich)
・今年の十五夜は、台風でした。きっと、月見団子やすすきを飾って、まあるいお月様を楽しみにしてたんでしょうね。(もも)
・こどもの「誰が食べたの?」ととんでもなく大きななにかが月を食べたことを想像するかも。こどもは恐怖を感じるのかワクワクするのか。(京介)
・面倒くさいから? それが一番わかりやすいから? 子どもをからかいたいから? 本当のところはどうでもいいと思っているから? 優しいような冷たいような、そんな句にはまってしまいました。(ロケッ子)
・親子関係かくあるべしですね。本当のことを知らせるよりも(それは科学の先生に任せて)、世界は不思議で溢れていることを教えてあげるのが子供の幸福につながるように思います。(はたらきねこ)

25. 宇宙と心中する
作者:京介

26. 部品を運ぶ私も部品となって 9 0・9
作者:畦道
○木曜星の人、可児、もも、うらら花、かもせり、ロケッ子、みずいろばーど、ニレ、ちよ
・うまいですね。(木曜星の人)
・アナタモ機械。ワタシモ機械。ようこそマシーンへ。(可児)
・あー、わかるわかる!部品という言葉が、無機質な感じがして好きです。(もも)
・人生の歯車となって働く縮図みたいなものを感じました。(うらら花)
・歯車の一でしかない自分に気づいたときの切なさ。ただ「となって」の部分が気になります。その次にある物語は何なのだろう。(かもせり)
・一瞬にして、人間が無機質化。でも、その方が仕事しやすいかもしれませんね。何も考えず、ただ淡々と部品を運ぶ。人間臭さを出すために、時々お昼ご飯のこととか考えたりもしてください。(ロケッ子)
・理屈ではなく、まず共感を覚えた作品でした。わたし達は常に、己がすべての世界と一部品に過ぎない世界とを行き来しているのだと思います。(みずいろばーど)
・けれど心の中までは部品になっちゃいない。それが大事ですよね。(ニレ)
・すべては歯車なんですよね。(ちよ)

27. 月がきれいだ土鍋に蓋がない 19 4・11
作者:こみおく
◎mekeke、mojolovich、みずいろばーど、フロヤマ ○いつ藻、さはらこあめ、田中並、うぐいす、かもせり、玉虫、京介、タケウマ、ニレ、元気な人、ねぢこ
漱石が記した愛の言葉を言う相手は私にはいない。「割れ鍋に綴じ蓋」というがそんな蓋が見当たらない。土鍋で炊いたごはんが食べたいです。ああ、でも蓋がなきゃ炊けない。アルミホイルで何とかならないものか。ああ、これも蓋か…。…蓋なくても炊けるかな。(mekeke)
・月が綺麗夜に、土鍋の蓋がなかったらどんなに絶望的だろう。耐えられない!日常の亀裂に耐えらないかもしれない!という飛躍が好きです。(mojolovich)
・粗野な感じの表現だけれど、きっと月は土鍋に張った水に映っているのだと思うのです。そうして月を愛でている心に、情をたしなむ雅を感じました。(みずいろばーど)
・月と土鍋の関連性について、想像を大いに働かせました。おそらく蓋は団子をのせるのに使っているのではないでしょうか。「アンタ! 土鍋の蓋、どこへやったのよ!」「ああ? ああ、今夜はお月見だから団子のせるのに使ったんだよ」「何、悠長なこと言ってんのよ! それじゃあ、お鍋ができないじゃないの!」「別にいいだろ? 蓋が無くたって鍋はできらあ。それより、お前もこっちきてみろよ。ホラ、きれいなお月さんだろ?」なんて、昭和の初め頃には、こんな夫婦もいたんじゃないかと思い巡らせてしましました。失礼しました。(フロヤマ)
・名月と土鍋の蓋との対比が面白いですね。土鍋に蓋をするのは素敵な伴侶といったところでしょうか。(いつ藻)
・花より団子だね。思わずくすっとする。蓋をするということは作っている段階かな?月が綺麗なのはわかるがそれより早く食べたいの、が伝わってくる。上手い表現だ。(さはらこあめ)
・欠落感が蓋と具体的に表現されている。欠落間と月はマッチングが良い。綺麗だと思いました。(田中並)
・まん丸お月様に、まん丸土鍋。蓋がないのもまた一興。何かが満たされれば何かが欠けるんだなあ。(うぐいす)
・蓋なんて何かを代用すれば良いじゃないですか。月がきれいなら。(かもせり)
・何かと足りないもののある日常でも、月はキレイだし鍋を一緒に食べる人もいる。大丈夫、やっていける。そんな気持ちになる名句。(玉虫)
・蓋がない土鍋の中には月が映っているのだろう。土鍋の中の月もきれいなのだろう。(京介)
・特選にしようか悩みました。きれいな月と蓋のない土鍋の取り合わせが秀逸。ただ、既視感がありました。どこかで拝見した気がするのですが…… 勘違いならば失礼。(タケウマ)
・これは満月でしょうか。鍋焼きうどんでも作ろうか、とふと顔を上げたら空に満月。それに対比される手元の土鍋。面白いですね。すごく好きです。(ニレ)
・月に見蕩れている場合じゃないですね。放哉の「素晴らしい乳房だ蚊がいる」を思い出しました。(元気な人)
・ジェットコースター並みの遠景から近景。女の古は三半規管が弱いので、かなりクラクラしました。ここまで飛ばされたの初めてです。(ねぢこ)

28. 何を食べても君はいない 14 4・6
作者:はたらきねこ
◎allex、こみおく、ロケッ子、橙 ○畦道、木曜星の人、うらら花、みずいろばーど、ニレ、天坂寝覚
・大切な人が本当にいないので美味しい筈の料理が美味しくないのか。それとも新しい彼女ができて作ってくれた料理に、忘れることのできない前の彼女の味を探しているのでしょうか。なんとも、その曖昧さが面白くて軽快で良い句だと思います。(allex)
・さみしい、さみしい、さみしい。大切な人がいなくなったことを受け入れられない空虚さが「何を食べても」という表現に集約されています。(こみおく)
・自分の過去の記憶がふっとよみがえって、じーんっときてしまいました。何を見ても君を思い出し、何をしていても君を思い出し。でも、いない。「食べても」をもってきたところがうまいですねぇ。(ロケッ子)
・大切な人を失くして、或いは二人は遠く離れていて、どんなに美味しいものを食べてもなんの味もしないただの変哲もない料理。大好きな人が傍に居てくれたらそれでいいのに、という気持ちが伝わってきました。(橙)
・孤独とは腹の減るものである。空しいなあ、味気ないなあと思いつつも、箸は進む。気がつくと二合は食べている。(畦道)
・そうなんです、そうなんですよね。(木曜星の人)
・せつなく、むなしい感じが伝わってきます。姿の見えない君のことを思い、砂をかむような味気ない世界観がよいです。(うらら花)
・当たり前のことだけれど、そこに疑問を抱くことにも納得してしまう不思議を感じました。同時に、共に食することが人間関係においてそれ以上の働きをする、その感覚に共感を覚えました。(みずいろばーど)
・美味しいか美味しくないか、ではなく、君が居るかどうか、ということなんですよね、家でのご飯の意味って。このことは私も今とても実感しています。(ニレ)
・「食べる」という行為は、生活に伴うあらゆる行為の中で何よりも感覚を使う。それだけ感覚をフルに使っている状態だから、『君』がいない、あるいは『君』との思い出がある食べ物を食べても何も思い出さなくなってしまったという事実を、他のいつにも増して強く感じるのだろう。そしてそれは食事の度に繰り返される。平易な言葉で簡潔に述べられているが故に、その喪失感の重さ大きさがより感じられる。(天坂寝覚)

29. 傘を差し出してくれる人の人生好きになる 6 1・4
作者:橙
◎白川玄齋 ○木曜星の人、mekeke、田中並、フロヤマ
・相手を好きになるきっかけですね。アピールの前の爽やかな一場面ですね。(白川玄齋)
・人生を好きになる。傘を差し出してくれるこの人って、どういう人生を送ってこうやさしさを私にくれているのだろう。こんな雨の中なのに。良いですね。(木曜星の人)
・単純なことで好きになってしまいます。とはいえなかなか周りで見かけることはないですが。(mekeke)
・甘い句ですが、人生そのものを好きになってくれることのきっかけが、一本の傘だったとは感慨深い。私も積極的に傘を貸したい。(田中並)
・折りたたみの傘を持ってくるのを忘れた時に限って、雨が降る。あります。そんな時に、傘を差し出してくれる人がいたら、その人はまさに救世主。心の底から感謝してしまうでしょう。もしも、それがタイプの女性なら、間違いなく恋に落ちてしまうに違いありません。胸キュンな句です。(フロヤマ)

30. くしゃみして酔い醒める 7 1・5
作者:allex
◎Umbert Dolby ○さはらこあめ、mekeke、こみおく、せば、ちよ
・大くしゃみ一発で現実に戻る。浮世の儚さよ。(Umbert Dolby
・外で寝ちゃったんだね。説明なしでも、酒呑んで悪酔いしたことが伝わる。上手い表現だが、「で?」というのが残る。(さはらこあめ)
・酔うのも一瞬、醒めるのも一瞬。さあ次ぎにいこう。(mekeke)
・朝と風邪と現実はいっぺんに訪れます。お大事に!(こみおく)
・そんなこともあろう。醒めた気分はどうだったのか気になる。(せば)
・これからの季節ありそうで。へーくしゅん…あー、ぶるぶるぶるwみたいな感じで、醒めちゃったけどしゃーないなぁて諦める。(ちよ)



(以下、元記事。)


ご参加いただきました皆様、どうもありがとうございました。1本目の句会に寄せられました全句を公開いたします。今回の参加人数は30人!! じっくり味わってじっくりお選びくださいませ。


選句・選評について

  • 選句場所

  ▼「生」→ http://ws.formzu.net/fgen/S98421567/
  ▼「旅」→ http://ws.formzu.net/fgen/S8249025/
  ▼「雑詠」→ http://ws.formzu.net/fgen/S80408589/

  • 期間

  10月3日(水)0:00〜10月7日(日)23:59

  • 選句内容

 ○それぞれのお題ごとに、「特選」1、「正選」5を選ぶ。
  (「自分の句以外」なので、各29句の中から選ぶことになります)
  選句方法の詳細は 「千本ノック」とは をご参照ください。


 ○選句の際に、選評を書き込む。
 (選句外評は、Twitter上でお願いしますー)

指定語「生」

1. 生死をぶつかけてゐる

2. 太陽に会えないまま生きる

3. とりあえず呼ばわりは罰ゲームだよラブ生中

4. 死んだ夜の生ビール美味しい

5. 生がいちばんとは言えない

6. 生乾きの匂いがしても好きだった

7. 先っちょに何か生えてきた

8. 生キャラメルの爪痕ある地下街

9. 晴天に体操服は生乾き

10. 親不孝も生きてる証と笑う人

11. 空に生ビールが浮かぶああ気持ちの良い朝だ

12. 早鐘のようにこころ打つ生

13. 台風耐えている木が生きている

14. 生まれてくる子よ腹を蹴りなさい

15. 生ひて道草の踏まれてばかり

16. 先生は知らない夢を見ている

17. 生簀の魚が会計を見ている

18. 死ぬまでもない一瞬一瞬を生きている

19. 女装趣味高じて生贄にされる

20. これで四度目の一生のお願い

21. 生がいいに決まってる

22. リアル人生ゲーム貧乏農場になまあたたかい風吹く

23. 生くか還るか夢のなか我を呼びたる声懐かしき

24. おまえのこと生ハムメロンくらい許せない

25. 赤く大きく生命と書いたビルが暮れる

26. たっぷんたっぷん生コンたっぷん

27. 知らず生えてきた親知らず生まれ生きる

28. 生々しさばかりが浮かぶ湯船だ

29. 転校生に逢いたくてセピア色の教室さがす

30. ひとりで生きてるわけじゃなかった窓の月


「旅」しばり

1. ひなびた宿のズッキーニの天ぷら

2. 新幹線に忘れたワインの見る夢

3. 湯けむり紅葉づくしの今しかない

4. よく居た広場に自機と僕の影ある

5. 思い出入れる隙間空けておく

6. フェルメールは紅葉も青だろうか

7. 遠く来た街を明日は出て行く

8. どこまでも追いかけてくる影ひとり連れて行く

9. 過ぎていくのは車窓の景色ばかり

10. あの街へは行くまい君を想い出す

11. 結局家でたべる駅弁

12. 瞼を合わせ祈る独りで旅立った臆病な君の

13. 旅立つ君の袖離せないでいる

14. 偶然を装ってふるさと

15. ただ在りし地平線と対峙して敗北を知るホモ・サピエンス

16. 落ちつきないおばあちゃんの冷凍みかん

17. 霧晴れて湖畔の傷ごころ

18. かき捨てた恥が写真で残る

19. 移動範囲方寸四方の大冒険

20. 誰が置きし自然薯やろか無人

21. 捨てる筈の思い出が鞄からはみ出している

22. 床の間を片づけてもう一人ねむる

23. かなかなを探してるんだ

24. 村ごと遠くへ転移する

25. 指令その4 新京極で木刀を買え

26. コロとふたり旅家出なんかじゃないのに

27. 子規の空はわたしの空にもある

28. 乗り物酔いの耳にバスガイドの唄

29. 国境を舐めながら来た

30. みんな疲れてバスは西行



雑詠

1. 富士額のわたしの富士を見にきて

2. 王子様さるすべりにのぼる

3. 洒落た料理褒める戸にカレーの匂いする

4. 台風予報と犬の寝言聞く日曜の午後だ

5. ビンゴだが黙っていよう

6. おなら我慢してないで結婚しよう

7. 眠る子の鼻先冷たい冬の入口

8. 衣替えしはって社会人のつもりどすか

9. 尻がデカすぎて迷う

10. 泣きべそかいて夕顔の花ざかり

11. 十月のあなたの描く放物線

12. 背中の糊は乾き私小説ようやく散りゆく

13. 何か良いことあるかと聞かれる恐怖

14. 黒い雲をなめる月

15. 声届かぬほど雨ずっと寄添う

16. さわらないでを醸しつつにじり寄り

17. さよならも云わず独りで帰りきて葱を刻めりとりとめもなく

18. 父親のコスプレ写真が出てきた

19. きっと揺れている金木犀のした

20. 母を母とは思わぬ息子でして

21. 研げば流れる米も留まる米も

22. 目印の鉄工所が消えた曲がれない

23. もう消えたアザの話まだ続くのか

24. 月は喰われたとこどもには教える

25. 宇宙と心中する

26. 部品を運ぶ私も部品となって

27. 月がきれいだ土鍋に蓋がない

28. 何を食べても君はいない

29. 傘を差し出してくれる人の人生好きになる

30. くしゃみして酔い醒める